八百三十八生目 山羊
おはようございます私です。
昨日はなんだか大変な目にあった……
ネズミの死もえげつない。
すぐに避難できるようにエアハリーを維持したままだが"四無効"の睡眠操作のおかげでバッチリ眠れた!
反動がのちのちこわいがまあもはや慣れの領域に入っている。
"進化"解除後の筋肉痛やけだるさとは友達。
みんなで探索して使えそうなものや峡国跡を探して高速で飛び回る。
昨日のを見たらあんまり長居する場所ではなさそうだ。
戦ったあとの魔物なんかにも聞いてみるがなかなか良い返事はなく。
やはり人工物ぽいものと言っても大昔からあるものを彼らが見分けるすべはないしなあ……
よほど特徴的でないと。
光っているとか。動いているとか。
相変わらず崖は動き続けるが脳内マッピングのおかげでどのような位置を通っているかは把握できる。
道情報は役にたたないが既に通った場所の把握はとても大事。
その成果としてまたあらたな景色が見えだした。
崖と崖の間はそこそこ広かったり狭かったり間に低い崖があったり。
地形にバリエーションがあるがまったく新しいタイプが出てきた。
崖と崖の間は広くその間に立ち並ぶのはまるで棒みたいな崖。
いわゆる石柱がたちならんでいるわけだ。
人工物ではなく天然もの。
仙人でも暮らしていそうだ。
石柱崖にもたくましく生え暮らす植物たちのたくましさは見習いたい。
「ココらへんは魔物も少ねえな」
「済むのに便利な地形が近くにあるからな。わざわざここを選ぶ利点が無い」
「それもそうですねえ……おや?」
ダンやアヅキが雑談していたらドラーグが遠くに何かを見つける。
あれは……ヤギ?
「あれって、魔物ですよね? 翼もないけれど、石柱の上にいて……降りられないのかな? おーい!」
「うん? あれは……あ、待て! そいつはまずいぞ!」
ダンが止めるまもなくドラーグがヤギに近づき……
ドラーグの動きが止まった。
コロロも詰まったような声をもらす。
私も近づいて良く見たら……それはヤギと呼ぶにはおぞましすぎた。
頭のツノはひどく捻じれ太く大きい。
毛皮の向こうに見える筋肉がニンゲンでいうボディビルダー真っ青なソレであり呼ばれて開いた瞳は死の警告を訴えかける。
絵に描かれるような前世の悪魔がここに立っていると言われてもなにも違和感がなかった。
もはや発せられるオーラで姿が歪み気配が膨れ上がっていく。
「ウ゛ッ」
「……パパ! しっかり!」
「ハッ、し、失礼しました!!」
気だけでドラーグを落としかける。
コロロのカバーで即逃げ出せれたようだが……
"観察"!
[ガラガゴートLv.42 比較:とても強い 異常化攻撃:ひるみ 危険行動:絶・解体突き]
[ガラガゴート 非常に弱いトランス前を生き抜いた個体がたどり着く1つの先。どのような環境でも生き抜きその身ひとつであらゆる肉食魔物をちぎる。それなのに群れを持つので少しでも知識がある魔物は決して近寄らない]
そこらの神より強い!!
えっなにこの存在。
純粋な強さの塊なんだが。
こういう相手に出会った時は……
「ガラガゴートは、幼少のころからきっちり育て上げないととんでもなく危ない存在なんだ……辺境に出た時に1番厄介な魔物の1体で……群れに出会ったら、村を畳むしかねえ……ゴート乳から作るチーズはすごいうまいんだが……」
「何、本当か、どうやったら捕まえられる!?」
「アヅキ、話聞いてたか!?」
ダンやアヅキは遠いから安全圏としてもドラーグと私が結構危ない。
相手の姿を視認しつつ背中を見せずゆっくりと高度を下げて走らずに逃げる……
「ぎぇー!!」
「パパ……しずかに……」
……というのを完全に無視してドラーグが突っ走って飛んでいる。
高く背中見せて叫びながら全力逃走。
ガラガゴートは大きく息を吸い込み……
「メエエエエエエエェェ!!」
「「うわっ!?」」
空気が光と共に揺れる。
思わずみんな身体がすくみ騒音に耳をふさぐ。
これがひるみ化か!
消えるような速度で跳び別の岩柱に移動した。
どこからともなく跳んできたガラガゴートたちがそれそれの石柱てっぺんに捕まる。
翼もなくただ己の足のみで。
こちらの総数より多いガガラガゴートたちは私達を一瞥してにらむ。
なにか……言うべきだろう。
「えっと……私達は……」
「次はない。害意がない限り、だ。……腹を減らさせるな……」
その言葉と共に消えた。
いや確かに私の目は捉えた。
とんでもない速度でこの場を離れていくのを……
こ……怖かった……なんというか迫力が凄まじかった……
「ふ、ふぁー……助かったぁー……僕たちみんな無事〜……?」
「パパ、コロロ、きずなし」
「みんな無事……みたいだね。良かった」
「どんでもない気迫でしたね……」
何か最後に彼は言葉をこぼしたようだが一体なんだったんだ……?




