八百三十四生目 空草
崖が壁となり道が作られているこの迷宮。
脳内マッピングしながら進んではいるがどうも効率は悪いな……
「うーん……おんなじ景色ばかりですね。ちょっと高いところから見てきますね」
「高いところは気をつけてねー」
「はーい」
ドラーグが崖の上へ行こうと飛んでいく。
雲を突き抜けさらに高く移動し……
「パパ、はやい!」
「全力の姿だからね! そりゃあもうはやウッ!?」
今にぶい音が響いたな……
何かに頭をぶつけたかのような。
なんなのだろう。
「どーしたのー?」
「ローズ様ー! 見えない天井がありますー!」
ドラーグが試しに軽く殴って見るがブワブワと不思議な跳ね返し。
結界……みたいなものなのかな。
"魔感"で調べてみようとしたが引っかからない。
この感じはまるで自然のよう。
これはこういう世界だとして創られている……ということかな。
天から行くのは諦めるしか無いか。
「仕方ないから、現状続行で」
「はーい」
ドラーグも戻ってきて探索続行。
分かれ道もちょくちょくあるものの進んでいるのかどうか。
白砂の手がかりはあの豪華絢爛に描かれていた神に道なき峡国の跡だ。
道なき峡国自体は迷宮のそこそこ奥らしくだいたいの方角は記されていたのでそれを頼りに。
崖に阻まれてまるでそちらにはいけないが。
たまにある分かれ道を進んで……と。
「おおー」「……かわいい」
「いいですね!」「チチッ」
「ふむ、炒めればうまいか……?」「壮観だな!」
曲がり角の向こう。
空を草花が舞っている。
目を奪われるには十分幻想的な姿だった。
崖に生えるカゼコンブやガケウミブドウのほかにこんなファンタジーチックな光景をつくりだすものがいたのか。
"観察"!
[オオオニウキバス ウカビクサの1種で普通のハスのような見た目と花を咲かせるが空を舞う。風に乗ることで水も地面も少ない土地でも自由に生き抜く力を持つ]
[ウカビクサ 崖の迷宮などで自生する空を飛ぶ植物たちの総称。直接飛ぶものや浮かぶものなどさまざま]
これは良いなあ。
見飽きないから景色に変化が生まれる。
このまま進んでいきたいが……
ハスの葉上に乗る魔物の姿。
鳥型の魔物たちだ。
そこまで強く無さそうだがいろんな種類の鳥魔物がこちらをギロリと見る。
「みんな、やろう!」
「「ああ!」」
"言読解明"を使ってそれぞれの言葉を覚えていく。
みんなが構えている間に覚えた先から言葉を飛ばす!
「私達は縄張りを荒らす意思はない!」
「知らねえ!」
「飯だ!」
「つつきたい!」
言った先からどんどん否定の言葉やら無言の突撃やら。
「来るなら撃退する!」
警告はするがまあ聞いてくれるわけがない。
翼を広ければ私を包み込むぐらい大きな魔物だらけ。
ここからは気を引き締めての戦いだ。
「俺の獲物だ!」
「どけどけ!」
正面から2羽突っ込んでくる!
アヅキが私の前に立ち錫杖を鳴らす。
「主! とその他、私の前に出ないように!」
何をするのかと思ったらアヅキが錫杖を回転させ……
そのまま下に!
すると一気に光が空中集まってゆき。
「「餌ー!! ――ぁああわぁあ!?」」
目の前まで迫っていた鳥たちに大きな竜巻!
突然の突風になすすべなく鳥たちが落下していく!
「ふう、今です!」
「「!!」」
竜巻は一瞬だったが効果範囲は広くて鳥たちの数が一気に減った。
それぞれ返事して突撃!
各々技を披露していく。
ダンは素早くかがんで空中を踏み込み地面なんて関係ない接地的強さで殴り込む。
3連打すれば1羽がたやすく落ちるので早く強く正確。
筋肉だるまみたいな見た目と性格と拳なせいで勘違いされがちだが割としっかり打ち抜くのがすごいと思う。
「だらららら! そうらっ!」
さらに手袋が輝いたと思えば空を掴み圧縮する。
そしてそれを遠くにいる鳥魔物にぶん投げる。
鳥魔物は気にせず突っ込むが……
炸裂はまるで突風が突然巻き起こったこのようだった。
実際は違う。
投げた空気が破裂したのだ。
行動力もこめた1撃は重く鳥魔物が吹き飛ばされ蓮の上に落ち目を回す。
ダンのガッツポーズが光って見える。
ドラーグとコロロは飛翔する。
「……暗く、そして直接すばやくたいあたり」
「うん!」
コロロの指示によりドラーグの色が暗黒に変化。
光を一切通さないまるで穴のような色。
遠近感も輪郭もつかめず鳥たちが驚き慌てふためく。
そのまま黒い光を翼や頭に纏いつつ突き抜ける!
鳥魔物たちがどんどん何も出来ずに吹き飛んでいった。
質量の勝利。
飛行操作はアインスに針発射はドライに任せつつ高速で飛び回る。
とにかく撃ちまくる!