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八百二十七生目 青空

 弟ハックを先生とした青空教室。

 妖精はもうひとりの先生として立ち回り教室で物事を教えることに慣れていないハックのサポートをする。

 普段仕事ではフィーリングや火の話ができるだろうが今並んでいる大小様々な生徒たちはきほんのきを知らない。


 だからこの体制がいるのだが……まあハック先生というのを見る分にはめちゃくちゃおもしろい。


「あー……緊張する……スー、フー……よし。ええとでは、じゅ、授業をはじめたいと思います」

「「はーい!」」


 ちなみに私はどこにいるかというと。

 きっちり生徒側に紛れ込んでいるのだ。

 "変装"によってヒュードック風にかわりにおいも工夫して変えてある。


 声も光神術"サウンドウェーブ"でやや男性よりの違う質声にセットしたから何か話してもバレはしない。

 "観察"もうまくやるとごまかせるのですごい力なのだ。


「いきなり作ってと言われても、わからないですよね。とりあえず僕が普段どおり成形するので、ちょっと見ていてくださいね」

「「はい」」


 妖精先生が持ってきた粘土をハックがみんなの前でこねだす。

 (エフェクト)が集まって輝きだし……

 きれいな大きい皿になった。


「「えっ!?」」


 そうはならないでしょ!?

 いや理屈はわかっている。

 こういう力を出せるのがクラフト系スキルの持ち主なのだ。


 ただこれ参考にならない!


「せ、先生!?」

「もちろんこれは、いずれはこういう風に出来るよ! ってだけで、今日やれってことじゃないからね! とりあえずこれが完成形。次は1からゆっくりとみんなでやっていこうね」

「「はーい!」」


 よかった。あれで作れと言われたらどうしようかと思った。

 改めてみんなに粘土が配られ準備完了。

 乗っている台はもちろんろくろ。


「まずはろくろ……この台の動かし方からだね! これはエネルギーを込めて動かせるんだけれど、コツがあって……まずはろくろが乗っている台の方を触ると良いかな。ちょっとやってみてね!」

「「はい!」」


 試しに前足をろくろ台につけてエネルギーを流し込む。

 軽くやるだけで軽快にろくろが回りだした。

 パワーは結構あるようだ。


「おお! 既に何匹か回せてるね! すごいすごい!」

「せんせー! ここからどう動かせるんですか?」

「動力へエネルギーを送り込むにコツがあるんだ。その場所に力をギュッとするというのかなぁ。コツがあるからひとりひとり見ていくねぇ」

「私達と一緒に頑張りましょうねー」


 それからハックや妖精先生みんなを順に見て回った。

 私達回せている組は水をかけて変形させる段階へ。


「ろくろを回すことに慣れたら、触れないでもその感覚を維持してねぇ!」

「最初は難しいと思いますが、このろくろはかなり低めにセーフティが設けられていて、うっかりエネルギーを送りすぎてしまっても吸い取らないようになっていますから、エネルギーが無くなりづらく安全ですよ!」


 ハックも自身の土を最初の土塊から少し伸ばした形に変形させ見せる。


 それを参考に私達もやって……

 というのを繰り返していればあっという間に時間がたった。

 わりとハックは緊張がとけだすとスムーズに教えられていてみんなに笑顔を振りまいていた。


 ひとなつっこい笑顔は魔物たちにも好評だからなんやかんやハックは好かれるのだ。

 ちなみにニンゲンの言う笑顔とは違うので注意。


「どうお? おお、なんだかすごいことになってるね!」

「ご、ごめんなさい、一応皿にするつもりなんだけれど……」


 ハックがキラキラとした笑顔で私を見てくるのがちょっと笑いが出そうなのも含めつらい。

 もちろん向こうは気づいてないから余所行き雰囲気だからね。

 そして辛い最大の原因は……私の粘土。


 この姿に慣れていないとかろくろそのものは初めてだからとかそもそも土いじりは久々だからと言い訳は可能だが……

 皿だって言ってるのにどんぶり化しているし波うっているし丸くない。

 がんばってくれ土の加護!


「ああ、違うんだよ! 間違っているって言いたいわけじゃなくてえ……ああ、うん、なるほど! わかったぁ、キミはきっととても型にはまって基本を押さえたがるタイプなんだね。確かに僕が用意したのは基礎なんだけれど、作品として面白いのはキミの方なんだぁ。キミは確実に基礎を踏襲しようとして、結果として大きくはみ出ているだけ。つまりそれは1つの発展形なんだよぉ!」

「ええと、先生つまり?」

「とても良い! もっと良くしていくには――」


 すごい。

 ハックが私に熱心に教えている。

 3つ目を大きく開いて熱い語り。

 実はこういうことはとても少ない。


 ハックは私をすごいすごいといつも言ってくれるものの対して私に教えることは控えめ。

 どこか遠慮がちというか自由にやらせようとしていた。

 うーん……新鮮!


 ハックに指摘され褒められさらに伸ばそうとされる。

 これは逃したら次が無い機会かもしれない。

 ちゃんと味わっておかないと。


 兄インカも修行を休ませて呼べばよかった。

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