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八百二十六生目 穀物

 議会での私の役割は無事果たせた。


「亀のじいさんたちの意見には、なかなか参らされネ。確かに私達は対立する意思とは戦わなきゃいけないけれど、本人にあったわけでもなし、わかりあう機会もあるかもしれないからネエ。なにせ、ここに集まる私達や市民たちも……そういうところはあったからネ」


 少なくともこのアノニマルースにいる魔物たちは戦闘があったり交渉があったりしてアノニマルースにスカウトされてやってきたものが多い。

 自ら来ることもあるがそれはそれで一大決心だろう。

 アノニマルースが生まれ故郷の魔物はまだほとんどいないのだ。


 野生で生きるよりもこちらで生きることを選んだ魔物たち。

 そういう心の移り変わりを誰も否定できない。

 魔王だってなんとかできるかも……という視線が一堂にこちらへ寄せられた気がするが気づかないフリをしておこう。


 いくらみんなの役にたちにきているとは言えできないこととできることがある……!


「本当に、私も勉強となりました。ありがとうございます」

「では、休憩!」


 私はこのまま帰還だ。

 時間通り。

 外へいけばきっとホルヴィロスが待っているだろう。







「私の方がローズのことを想ってるよ!!」

「俺の方が主の事を想っている!!」

「なにやってるの……」

「「あっ」」


 外に出たらホルヴィロスとアヅキが口論していた。

 真っ白獣と真っ黒天狗カラスの対立……

 中身は聞かないことにしよう。


「いえ、私は主への忠義心を示していただけです」

「私の愛心こそ他の何よりも強くローズに注がれているから、安心していいよ!」

「なにも安心できる要素がない……」


 結局そのあとにらみ合いが再開したふたりをつれて帰るハメとなった。






 こんばんは私です。

 病院にやってきたけれど私の調子は悪くない。

 前回から数日たってコロロにまた会いにきたのだ。


 退院する予定ではあるが私が今夜来たのは医者コボルトのコルに呼ばれたからで。

 見せられた診断書は。


「穀物アレルギーかあ……」

「はい。最近魔物たちにも広がっているようですが、彼女もその傾向があります」


 アレルギー。

 それは特定の物に身体の免疫力が過剰反応して起こされる症状の総称。

 花粉症もこれのひとつ。


 現在アノニマルースでは今まで食べてこなかった調理品を食べることにより予想外のダメージを負う魔物たちがちょくちょくいる。

 この病院待合室にいる魔物も穀物アレルギー持ちが多かったりするそうだ。

 肉しか食べてこなかったりすると気づかないからね。


 コロロの症状は……摂食後に粘膜部分いくつかにかゆみをもたらすか。

 軽いものではあるがだからこそ今までは気づかなかった。

 かゆみを訴える気力すら禁断症状にもっていかれていたからね。


 それで最近やっと気づけたと。


「それ以外の症状は?」

「いまのところありません。もちろん禁断症状は残っていますが、常識的な生活を送れるレベルに回復しています。すごいですね、トランス!」

「そういえばコルさんはしてないんだっけね、まだ」

「ええ、私の村でもみんなしていなかったので、コボルトはトランスできるのかしら……?」


 まあきっとそのうちいけるだろう。

 とりあえず問題は食べさせるものか……

 ドラーグに伝え特定穀物を避けさせて……と。


 他の魔物たちも各々アレルギーをちゃんと避けるようになってきた。

 食べる場所も食堂以外も増えてきて選べるからいい傾向だ。

 さてコロロにあって話してこようっと。





「え!? 毒を食べていれば平気!?」

「……うん。おいしいから。もぐ」

「偏食はダメだよー! あ、でもアレルギーがあるしそれを避けるとなると……ううーん!?」






 こんにちは私です。

 今日も今日とてお仕事お仕事。

 スケジュール管理されているから普段はやらない仕事に携われるのが良いね。


「はーい! 今日の青空教室はじめまーす! 職業訓練を受ける人はこちらへどうぞー!」


 晴れた空にボードと妖精先生。

 いわゆる屋外の教室だ。

 ここでは様々な職業訓練を行える。


 魔物たちはこのアノニマルースに来てしばらくすれば経済活動を行わないとたちゆかないことに気づく。

 けれど学校で習えることは基本的に職からは遠いいわゆる基礎部分。

 大半の魔物は狩りや逃走などはできるものの技術的にはそれだけ。


 なのでここからどのような職に興味があってどのような職が自身に向いているかをココで見極めるわけだ。

 私はもう少し後にやることがある。

 だが見たいものもあって……


「ココでは今回、陶芸関係のお仕事をお教えします。基本の土から皿を作ることから初めた方が、感覚がわかりやすいと思います」

「「はーい」」

「では、陶芸の先生です、どうぞ!」


 妖精に裏の待機所から呼ばれオドオドと出てきた姿。

 とても良くみたことがある。

 なにせ彼を見に来たのだから。


「ぼ、僕はケンハリマのハックと言います。ヨロシクオネガイシマス!」


 弟ハックだ。

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