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八百二十五生目 方針

 アノニマルースとして帝都奪還に軍を差し向けるかという議会議論。

 そもそもの始まりはジャグナーから、


「そんで、俺達軍はいつ帝都付近にワープして行けばいいんだ?」


 という話を振られたことだった。

 気づいたときにはすっかりアノニマルース各地で行く前提みたいに士気が高まっていて慌てて私が介入することとなった。

 議会も慌てて戦闘のために話を割り込むこととなった。


「反対派の意見はもっともだ。帝都奪還による利益と市民の理解双方がなければ軍は動かせない。これに関してローズ君、何かあるか?」

「あ、はい。では質問なんだけれど、軍隊自体は使わず眠らせておいた方がいいという考えで?」

「それはそうだ。彼らの待機による業務で使う費用はけして安くはないが、待ち、構えて戦いを予防(・・)する。それ以上に大事なことなど、ありはしないからの」

「なるほど、ありがとうございます」


 みんなの表情はとても真面目……

 今の意見も一蹴するつもりは誰もなさそうだ。


「では、次は賛成派からも賛成の意見を。さっきの反対派の意見はその後に反論の機会を設けるんで」

「では、私だな」

「どうぞ」


 今度はメスの猫魔物だ。

 不敵な笑みが瞳に浮かぶ。


「まあ、最初の札を見るにあまりアレコレ言う必要もないかもしれないけれど……普段いないコもいるしちゃんと言うネ。

 私は今回のことはチャンスだと捉えているの。今の所、私達はニンゲンたちからの評価が低い以前に、知名度が低いネ。ここいらで本格的に、世界にしられておこうじゃないか。しかも立ち位置は対魔王……絶好の機会。基本的には仲良くやれるやつとは仲良くなるって、まずはみせるものみせないとネ。

 それがひとつめで、ふたつめは市民の士気さ。軍も含めてだけれど、市民の気はかなり熱いネ。ここで一発打ち上げればかなり高い経済効果も生めそうでネ、試算もあげているヨ。今の所皮算用だけれど、かなり分はいいさ。まあ詳しくはまた後でだネ」

「ふむふむ、ではローズ君、何か?」


 なんかものすごい話し方が気になるな……

 いやおそらくあの種族はあれで真面目なのは伝わるんだけれど。


「はい、では……軍隊のほう自体も動かしたほうがより効果的という考えで?」

「というより、イザという時にいつでも動かせて力もあるというのを見せつけられなければ、軍がいても脅しにもなんないヨ。相手の手元の武器威力が分かってこそ、警戒するし味方なら安心するってもんヨ」

「なるほど、わかりました」

「では、双方の意見を交え互いに反論へと移る。資料を見通して次の意見をまとめなさい」


 その後互いに他の魔物たちも交えて議論が重ねられていく。

 互いの意見を踏まえ意外なほどに冷静にそして熱く交わされる。

 相手の意見を否定せずそれを判断材料として自身の意見を深めるのは基本とは言えだからこそ難しい。


 相手を言い負かしたくなってしまうからね……

 ただ彼らは素質と勉学により獲得した力を周囲から評価されてここまで来ている。

 私があまり心配する必要はなさそうだ。


 ただそれはそれとして。

 きっちり疑問点や細かな言葉のニュアンスに私はしっかり反応していく。

 こまやかな動きを含む言語をきっちり理解できているのは私でないと駄目だからおそらく言いたいであろうことを引き出していく。


 そうして議論はヒートアップしてゆき……

 賛成派が攻撃に対して慎重的な運用の歩み寄りをみせたり。

 反対派が対魔王への姿勢はしっかりしておいた方が確かに良いと歩み寄り。

 野生で生き抜いてきた魔物たちみんなのどこか血気盛んな部分を私が抑えたり。


 思ったより議論はスムーズに事が運んだ。






「――だ。ということで、細かな方針や予算は今話したことと資料でさらに詰めるが、大まかな方針として、我々アノニマルースは軍を派遣することに決定となった」

「うむうむ、妥当だな」

「なかなか、見直しが必要な点がたくさん出てきて頭が痛いネ」

「かなり初期の案から変わったなあ……」


 私も手元の資料への書き込みがかなりある……

 初期提案からだいぶ変わったなあ。

 なんだか私も安心出来た。


 もっと力とノリでガンガンいって名誉の勝利と戦利品ガッポガッポ!

 みたいなノリだったようなのに。

 議会で詰められると現実レベルの話にしっかり落とせられるとは。


「ローズ君、何か最後にひとことはあるか?」 

「ええ。魔王に関してなんですが、最終的に魔王とその復活秘密結社の方針(・・)に反対するというところに落とし込んだことがとても興味深かったですね」

「おお、それはそれは。ワシらの言葉が参考になって何より。なにせ、ワシら自体魔物だから、というニンゲンや……そもそもその魔物自体との偏見に立ち向かってきたモノ。自身の変化があれば相手の変化もある。なのにワシらがまっさきに捨ててかかるのも、違うと思いましての」


 亀の議員はほがらかに笑っていた。

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