八百二十四生目 議論
こんばんは私です。
ホルヴィロスの秘書事務がやたらうまく行き時間が出来たけれどそれはそれとして。
出向く必要のある仕事というものがある。
「じゃ、時間になったら迎えに来るね!」
「別に送迎までしてくれなくていいのに……」
「そりゃあ貴方をギリギリまで見ていたゲフンゲフンちゃんと見届けるのが仕事だからね!」
本音ダダ漏れだ……
ホルヴィロスはメガネを思い出したかのようにクイッとするのはなんだか笑いそうになるからやめてほしい、
さて本日のお仕事は。
他の家よりも立派で明らかに多くの人数を収容できそうな建物。
1階部分は一般の魔物も使う役所となっていて……
私が行くのは2階以上。
議会だ。
「――で――だから――」
「ということは――の――ふむ――」
「ここまでの――騒音問題は――予算を――」
いわゆる町議会。
ニンゲンの議会雰囲気を考えるとかなり変則的。
確かに選ばれた者たちが話し合い様々なことに議決をくだして予算を編成していくのだが。
魔物同士なのも含めて敬語は基本ないし机の大きさもバラバラだし飛んだり跳ねたりしている。
かなり雰囲気が混沌としている。
それでもみんな真面目に議会しているのだがニンゲンからしたらふざけているようにしか思えないだろう。
なにせ私から見てもそう見えるもの!
魔物の感覚で見れば何もおかしくないんだけれどね。
とまり木の上にいる鳥型議員とかも普通だからね。
そして私は議員ではない。
ではなぜ呼ばれて隅に座らされているのかと言えば。
このあとのためだ……
「――だね。さて、じゃあそろそろ……ローズ君の意見も取り入れる話をしようか」
議長がついに宣言をした。
初期のころは勝手がわからず私が口をだしたり書類を送られてきたものが変だった場合は書類で意見したりはした。
なにせトイレひとつとっても最終的にあちこちでしていいみたいな雰囲気にまとめあげていたこともあったから……
鳥類なんかは気持ちはわかるし魔物の中でトイレをちゃんとまとめるのはそんなにいないが集団で暮らす以上はバラバラなだけでは困るのだ……
だが今回はトイレの話じゃない。
「我々アノニマルースが、帝都奪還に協力するかどうか、だ。ここからはローズ君も発言をするように」
「はい」
そう。
我々として帝国に肩入れするかどうかの話だ。
いままでは私が帝国に冒険者として帝都の様子を見つつ手伝いをした。
しかし帝国自体からすでに私達は控えるように言われた身。
皇国からも十分な調査だったとしてかなり大きな報酬は受けている。
もちろん継続調査は頼まれているが……
それはそれとしてアノニマルース軍を動かしアノニマルースとしても参戦するかどうかの話し合いだ。
「では、まず全員の立ち位置を表明してもらいたい」
議員たちが自身の仮の立場を明らかにするために黒やら白やらの札を立てる。
反対と賛成だ。
立てない議員はまだ中立。
私は札を持たない。
そのかわり好きな時に質問をしたり回答をしたりできる。
さてまずは賛成と反対の票の割合だが……
「ってほとんど賛成!?」
黒票上がってない!
有るのは無と白のみ。
極端すぎる!
「おや、これでは議論にならないな」
「分かれようか」
こういう場合議論のために己の票を変えたりもする。
最終的に半々程度にわかれた。
こうしてやっと議論開始だ。
「では、概要読み上げから。今回、帝国にある帝都が奪還され、今回来てもらったローズ君が代表としてその探索をしている。それで――だから――で、最終的に帝都奪還に動くと思われる。
そのさいに皇国と別に我々としては軍を派遣するか、またその内容はどうするかという議題になる。先程の結果を受け、まずは反対派から意見をお願いする」
「では、まず元々消極的だったワシからいくかな」
中間から黒札に変えた亀の魔物議員だ。
ゆったりとした口調で始まる。
「ではどうぞ」
「まあ、まずは1つめとして……それが我が街に利益をもたらすのかが、疑問ということだな。ワシらは魔物、帝国から危険視される可能性は高くとも、帝国が感謝し何らかの報酬を受け取れる可能性は少ない。
なにせ皇国とも連携をとらない別働隊だからのう。皇国からも切られる可能性は、ある。
第2に、それが市民の了承をえられるか、ということだの。この街の防備を薄め、今日の友が傷つき明日には帰ってこないかもしれない。行けば街の金を食う、置いておくことこそが本来の業務でそこを低減させる。とりあえずこんなところかの」
うわ。思ったよりガッツリと反対側の意見を述べた。
ゆったりと半分水につかっているだけではなかった。
私も気を引き締めよう。




