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八百二十二生目 仔鬼

 ドラーグの背に乗せている女の子のために特訓中!

 互いに足や拳が飛び交い火花が散る。

 私は地面に降り立ちドラーグは翼を広げて高所を取る。


「……うん」

「そこだあっ!」


 女の子がうなずくとドラーグの口に暗い黒の(エフェクト)がたまる。

 ダークボールブレスだ!

 発射されると6つのボール状にわかれこちらへと飛散してくる!


「これは、受ける!」


 "防御"!

 暗いくぐもった爆音と共に私の周囲とともに私をえぐってくる。

 響く……!


「……ッ! 良い一撃!」

「なんだか、この子を守らなきゃって思うとちゃんと戦えるんです!」


 あの子はドラーグに対しても良い影響を確実に与えている。

 ドラーグは前まで戦うのがかなり大変そうだった。

 ドラゴンなのに戦闘嫌いで競技的なバトルも怯むほどに。


 それでも今黒い鱗で明るい笑顔を見せているのは確かで。


「さあ行くよ!」

「守ります!」

「……待って……」


 ヒートアップしそうな戦いを止めたのはドラーグの背中から聴こえる消えそうなか細い声だった。


「どうしたの? ちょっと大変だったかな、もう帰る?」

「……ん」

「違う?」


 ドラーグが降りて翼をたたむ。

 背中から降ろそうと腕を伸ばし……

 弾かれて驚く。


「えっ!?」

「あの光は!?」

「えっ、何!? えっ?」


 トランスしだしている!?

 誰かの上でするだなんて初めて聞いたぞ!

 さすがに足元は弾かれないのかそのまま。


 ドラーグが困惑するな彼女は光に包まれ……

 瞬く!


「ひゃっ!?」


 ドラーグの背から空に飛びゆっくりと地面へ落ちる。

 そして光が一気に収まる。

 トランス完了だ。


 その姿はニンゲン最初のトランスだから変化は少ない。

 全体の姿は前の乱れた生活によるみずぼらしさからだいぶ健康的になった。

 髪がかなり長く伸びたがニンゲンのトランスにはよくあるらしく後で切れば良い。


 そして肌がやや白くなった。

 ユウレンのような青白さではなく白色をそのまま加味したかのごとく。

 なんだか1本ズレた雰囲気が異様。


 そして頭にかわいらしい角が2本。

 変化としてはこれで全部かな。

 ニンゲンの1段階目の変化はそこまで違いがないからね。


「おお、おお! ついにやったんだね! どう!? 気分は!」


 ドラーグが周囲を慌ただしく見て触ろうかどうか迷う手付き。

 一方女の子は自身の変化をひとつひとつ確かめるように腕を見て手をにぎにぎ。

 "観察"!


[コオニ Lv.1]

[コオニ 個体名:コロロ

 ニンゲンがトランスした姿のひとつ。まだ道半ばであるが見た目と違う怪力と特殊な毒への適性を持つ]


 うん? なんだろうこの名前……


「おめでとう!」

「やった! できたんだね! 勇ましき子(クワァコロロ)!」

「……うっ」


 私達が喜びのさなか女の子は逆に泣き出してしまう。

 ただ顔を覆うのではなく涙が大きく溢れ出す。


「ど、どうしたの!? どこか痛い!? 大丈夫!?」

「……うん。違う。これはね、やっと今……喜べた! それがうれしくてね……涙が止まらないの」


 おお……女の子がまともに話した!?

 顔を下げるのではなく座り込むのではなく力強く立ち見上げる。

 素足なので草がクッションの場所でよかった。


 見上げた先にはドラーグ。

 心配そうな顔がおかしかったのか泣きながらクスリと笑う。

 初めての笑顔。


「コロロ、嬉しいから……笑って、パパ」

「「パパ!?」」

「それにコロロって、名前……?」


 突然の宣言に驚いた。

 ドラーグの方に視線をやると当然のように否定される。

 そりゃああくまで仔どものドラゴンだものね。


 産んだ覚えなどないはずだ。


「……パパは、コロロのパパだから。コロロは……パパの言葉、翻訳する前の聞いていた。でも、コロロはパパのことば、ちゃんと話せない。だからコロロ。まだ勇ましくないけど……コロロ、立てた」


 涙をさっと拭いてか細い声で伝えてくれた。

 もともとそんなに声を張るタイプではないのだろう。

 それなのに禁断症状が起きた時は強くクスリを求めるのだから恐ろしい。


「ええっと、彼女はドラーグを血はつながらないけど家族だと思って、しかも自分の名前を普段読んでくれる声と同じものにしたい、と……?」

「ええ!? ほ、ほんとうの家族は!? それに本当の名前は……?」

「……! 嫌!」


 少しムッとした表情でか細いのにどこか迫力ある声。

 そうとう嫌らしい。


「えええ!?」

「……パパとコロロが、ほんとうの家族。コロロが、本当のなまえ」

「うーん……だそうだよ。良かったね? パパさん」

「ええ!? ローズ様も!? うーん、嬉しいような恥ずかしいような!」


 かわった家族がひとつできたようだ。

 50歳のドラゴン少年パパと幼い少女のコンビだ。

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