八百十生目 再生
ホルヴィロスの万の蔓草に粘り勝ちした。
いや勝ったとはいえ単に相手がイバラを引っ込め休憩しただけで1ミリも痛みを与えられていない。
かわりに私は"ヒーリング"の上塗りをしつづけるのみのボロ雑巾。
「いやー本当にすごいねローズは!! 私の万回攻撃を受けても生き生きと生きている! 私より断然生きそう!!」
「ぐふッカフッ」
あっちこっち切れたらしく口の中の血を吐き捨てる。
だがこれで……準備完了!
もう私を飾っていた白い衣はどこにもない。
「ああー、ローズの血が私のツルにかかって私の中で生きる……尊すぎて心で泣く……全身触っちゃったし…、これは貴重なグッズ……もうツル洗わない……!」
馬鹿なこと言っているホルヴィロスの前へ再び躍り出て……
イバラを伸ばす!
「……やあッ!」
「おやっ?」
ホルヴィロスではなく……のばすのは近くのキキノコたち!
しっかり頑丈なものに結びつけ……
私の両横2箇所!
そして全力で溜めていたパワー!
私の目の前に濃縮したエネルギーの塊を生み出して結晶化!
"ダイヤモンドブラスト"ー!!
「はあぁーッ!!」
「おお、それは? な――」
頭を貫くように飛ぶ砲撃!
強烈な1撃は神の1撃!
内臓を吹きとばせ!
「「うわっ!!」」
私は反動で吹き飛ばされる!
けれどイバラで……耐える!
毒沼から外れたところに着地。
かなりふっとばされたからホルヴィロスより結構距離がある。
けれど手応えがあった。
ホルヴィロスは……
「ウッ〜〜〜!! いったあ! 内臓が1つ潰れたよう!! もう治したけど……」
「なっ!?」
ホルヴィロスの顔に空いた大穴。
私の方を向いたホルヴィロスはその穴を見事ナニもなかったかのように修復した。
内臓もそんな速度で再生を!?
"観察"! うっ、たしかに生命力が減ったはずなのにぐんぐん凄まじい速度で戻っている!
全部いっぺんに潰さなきゃだめのか!?
「ああ……でもわかるよ今なら。この痛み、この苦しみ、しんどくて倒れそうでクラクラして酸素足りなくてボーッとしちゃって身体の中がとても苦しくなって立っていられない、そんなものすらも、尊さによる愛……! 感じられたよ、みんな!!」
「う、うへぇ……」
1ミリも怒ってないどころから喜んですらいる……
なんなんだこいつは!?
こういうときは……!
「いやあ、びっくりしたけれどそれも私をちゃんと理解してくれているからなんだよね!! すごい、私相互理解ってこんなにうれしいものなんだって知ったよ!! だからもっと……あれ?」
脱兎の如く逃げるべし!
ホルヴィロスはほとんど毒沼の上から動かない大きさだからキキノコたちの森方面へ逃げる!
みんなと落ち合う先へ!
「――ということだったよ」
「強すぎますね……」
なんとか無事に合流できた。
妨害があるかと思ったけれど無かったな……
「にしても最初見た時はびっくりしたぜ! 何の獣かと思ったぜ」
「うーいてて、ソレだけ大変だったんだって」
イタ吉が驚いていた顔がまだ脳裏に浮かぶ。
白い胞子に全身溶かされツルに切り刻まれているのに"ヒーリング"でごまかしごまかしだったからなあ。
"鷹目"でみる私は動く腐蝕死体のようだった。
その姿を見てすらホルヴィロスは喜んでいたのだからサディストだとしか思えない。
聖魔法"トリートメント"でしっかり傷を治さないと――
「あれ、今私のこと考えた?」
「えっ」「はっ?」
声がしたほうを見ると。
まるで気づかなかった場所に。
小さなホルヴィロスがいた。
「うわああああ!?」「わああああ!!」
「ぎゃああああ!?」
私がびっくりして叫んでいる間にイタ吉とダカシがびっくひして叫びながらホルヴィロスへ飛びかかり蹴り飛ばし。
簡単に吹っ飛んでいった……
私よりも大きいぐらいでしかなかったものなあ。
「なんだったんだ、今の……」
「分神、だと思う……」
そりゃ出せることは知っていたが……
こんなあっさりと場所がバレるとは。
道を完全に外れているのに。
弱かったのだけは助かるが……
「もう! ひどいよー!」
「うわまた来た!」
森の奥からふっ飛ばされたホルヴィロスの分神がやってきた!
自由すぎる!
「どうしてここが分かったのですか!?」
「いや、植物たちに聞けばすぐわかるから……」
「ええ、なんだよソレズルい」
ダカシが言うのも納得の強力な力だ……
まさに植物たちに見られているわけか。
「ちょっと距離を取られちゃったけど、またすぐに会いに来てくれるんだよね! なにせもうこの世界の外に行かなくても良いんだから!」
「絶対出ていくからね……!」
「フフフ、素直じゃないなあ!」
話はやはり通じない。




