八百九生目 蔓草
"見透す眼"でホルヴィロスの中を見ている。
断面……うわ毒沼!
毒沼が体内を!?
ということは吸い上げているのか!
あれが力の源……浮いているだけじゃなく吸ってもいるのか。
だが毒沼からどかすのは現実的じゃない。
頭の中……あった!
キセイジューオー戦がヒントになった。
こういうタイプはなんらかのコアがあるのだと。
見つけた。
頭のなかに鼻の奥から頭脳まで3つの異常な部分。
肉のような植物たちの間をかき分けて浮かぶ脈打つ内臓。
胴の中にもなかったものだ。
狼かなにかのような獣らしい見た目には騙された。
実体はあの3つの内臓に違いない!
毒沼を力にして行動力をどんどん生みだし身体を裂かれてもすぐに再生できるから外殻を破壊するのは得策ではないだろう。
「さあて、ママも言ってたけれど……ちゃんと受けたらお返ししないとね! それが異種格闘技戦だって! とりあえず……こんなものかな?」
ホルヴィロスは胞子降らしは止めずにツルを5本こちらへ向けだす。
だが先から多数に裂けだして先が鋭い剣先のように光が輝く!
完全に別れた数……だいたい100本!?
「な、なんだって!?」
「貴方に全力夢中アターーーーック!」
"蛇の構え"をしつつとにかく回避!
幸いツタそのものは大ぶりで迫ってくる。
ただ数が100本あるから……!
「それそれっ!! やっぱりローズがこんなにも必死になってくれる姿を見るのは、最高だよ!! 見られるのも良いけれど、やっぱりこうして生で戦う姿が見られるのは本当にカンゲキもの!! あ〜〜好き!!」
「うぐッ! ぐッ!?」
あらゆる方向から振られるツタたちを必死に避けてもその先のツタに毛皮が斬り裂かれる。
黄色い血が撫でられるたびに跳ねる。
全方位から迫られ"蛇の構え"のイバラで弾いてギリギリで切り抜けたところに複数のツタが突く。
空中に跳ね飛ばされなんとかイバラを毒沼に突っ込み体制を立て直して。
追撃を避けて一旦近くへと転がり込む。
これだけ大きいと離れるより近づかないと危険だ!
「これで最後っと! おお! 攻撃自体は全力だったのにすごいすごい! 流れる血すら愛おしい……尊い……」
「強い……!」
威力は全力でもそれ以外明らかに手を抜かれている。
防御能力はこちらの方が落ちているなあ……
"ヒーリング"さえ忘れなければいまのところ大きく減ることはない。
それにしてもあのツタ……もしかして私も真似できないかな?
"猫舌打ち"の時に勝手に分かれるが意識してやれば……
もっと攻撃回数を増やして対抗して……時間かせぎだ。
「今度こそ!」
「おお! まだやる気だね!! やっぱりそういうローズの方が見てて楽しいよおおーー!!」
やる気が削がれるからなるべく聞かない!
イバラ展開! 尾も含め5本全て!
さらに細分化! 1本を真ん中で割り……
その2本とも真ん中で割っていく。
自切の応用……できるものだ。
さらに……さらに!
「おお……おお! すごい! 私みたいなことが出来るんだね! お揃いでめっちゃ嬉しい!!」
「さあ、来い!」
「そんな、来いだなんてまだ心の準備ががががあああ、じゃじゃあ、全力でオネガイシマス!!」
何故か震えたと思ったらお願いしてツルをたくさん身体から生やす。
そしてそれらを細分化!
どんどん増えて……うわ。これは。
「よおおし! 万の蔓草!! 私の愛を届けて!!」
「何もかもがおかしい!!」
まさに空1面を……ホルヴィロスすら覆い尽くすツル。
その1本1本が別に動かせる…、!?
私の100イバラはさっき閃いたからそこまで……!
鋭い歯が生えたものや槍型のものやしなやかで危険な動きをするものらが……
一斉に来た!
「うおおおおおおおおおおおおおーーーー!!!!」
「ハアアーーーッ!」
連打連打連打連打!
私の身体そのものは万のツルが全て同時に襲えるほどに的が広くない!
それを利用して駆けて避けて足を止めずイバラを止めず!
当たり前だが相手は万の軍勢!
常に全方位隙間なく攻めまくってくる!
うわ脚に絡みつくな! 素早く払う!
うっ! 腹に刺さる!
顔を葉が斬っていく!
もっとイバラのコントロールを!
(100本あるんだ! 全部うまく操るぞ!)
(なおしてなおしてなおしぬけー!)
幾百かの光が瞬き。
幾千もの音が横切り。
万を越える切り裂きを越えて。
イバラの先がしびれ。
何度もちぎれては生やし直し。
10の振りを1のイバラで受け。
気づいた時には攻撃が止んでいた。
別に私の身体はちぎれ飛んでいるわけではない。
それでも止まったわけは。
「はぁ、ふぅ、ちょっと疲れたかな! ここまで本気でやるのだなんてそうないからさ! 私はちょっと休憩するよ!」
粘り勝ちだ!




