八百六生目 決裂
神はめちゃくちゃだった。
テンションも上下しほうだいで安定せず危ないものでもやっているのかと疑うほど。
「キュービィットちゃんたちが大事に運んできてくれたからこうして直接会えたわけで今なら感謝の念で死ねる墓を建てて自分から埋まってR.I.P. ここに尊死した者召される」
「キュービィットとは……?」
ゴウが専門用語っぽいものを聞き返す。
個人的には勝手に墓の下に埋まっていて欲しい。
「キュービィット……それは小さき我が信者たち。我々はともにこの世界に生き暮らす生命たち、その中でも動物として植物たちと共に暮らしつなげてくれる彼らこそ私達に欠かせない存在……こうして私とローズを結びつける手助けをしてくれたのも彼ら。彼らの厚い信仰に対して恩義をこめて、そう呼んでいるもの」
イロテナガやヒュードックたちに私を運ばせる役を任せていた……と。
今度は異様に深く落ち着いている……
「もうね!! 最初キュービットちゃんたちがローズを攻撃しだした時は間に割って入ろうかと悩んだんだけれど、ローズのあのカッコイイ!! あ、ダメ、思い出しただけで言葉で息が詰まって!!!! キュービットちゃんたちを無力化だけして!!!! ひええーーもう感動の洪水に飲み込まれて和解シーンが心の涙で溺死!!!! ちゃんとあそこに和解記念碑建てなきゃ!!」
そう思ったらさらに興奮しだした!?
なんなんなだこれは。
キャラが安定しなさすぎてついていけない。
「そ、その、神、俺達は……」
「おっと名乗りはまだたったね! 私はホルヴィロス! 私のユウズイが飛ばす花粉を貴方のシズイで受け取る受粉作業にいそしもうよ!」
「あー……だからなあ……」
名前はホルヴィロスだったか……どうだっていいね。
名乗ったホルヴィロスの毛皮から1つ細いツタが伸びてくる。
それは私の顔に伸びてきて。
「断る」
私は前足で強く弾いた。
ツタは驚いたかのように怯む。
「え? そういう? そういう方向でやる?」
「何がそういう方向かは知らないけれど……」
「ローズ……?」
「私は何も知らされていないし、そもそも今名前を知った相手とくっつく気もなければ……よく聞くとほとんどセクハラみたいな発言をする相手、嫌いだよ!」
そうだ。
この感情は。
嫌いだ。
「もう、素直じゃないねえ、そういうところも好きだよ! フフフ、その目、最高! ゾクゾクきちゃう! もっと罵って! なんなら踏んで!!」
カラリとした返事に異様に怒りがたまっていく。
ホルヴィロスはあまりにも……
相手への想いに欠けている。
「私は目的を果たしてみんなと帰る、それだけ。ホルヴィロス、この地の神様だからって、個人を自由にできると思わないで!」
「フフフ、本当に尊いなあ! そういうキリッとしたところも大好きだ!! けど外とか……他の誰かとか考えることがたくさんあるんだね。大丈夫」
ホルヴィロスは笑顔を崩さないまま。
「私の力で貴方を神に変えてしまえば、全部忘れられるよ!」
「……は?」
何もおかしくないと言った様子で言い切った。
「貴方にはまだ別の存在の気配がする! けれどそんなのは関係ない! 私が私色に染め上げれば良い、そのための力ならたくわえてあるからね!」
「じ、冗談じゃない!」
まずい……この感じ。
そうこの相手を根本的に個としてみていない感覚。
目がどこまでも純粋に無邪気に……恐ろしく。
まさに子どもがにんぎょうで遊ぶかのような……上位存在が下位存在を見る神の目そのものだ。
よりたちが悪いかもしれない。
「もっと私の事を知って! そしてふたりの種をつくり実らそうよ! 私のことしか考えられないほど、私の全てを貴方に上げる! きゃー! 言っちゃった! ああふたりの種から何が出来るのか今からもう楽しみすぎて花が咲いちゃう!!」
「私はホルヴィロスの物ではないしホルヴィロスのモノじゃない! 何を言われようが嫌なものは嫌だ!!」
「もっとホー君って感じで良いよ! フフ、こういうの知ってる、最初は口で嫌がってもってやつだよね! 壁にドンってすればいいって昔聞いたことあるよ! そう、貴方はこれから私の物になるんだよ!!」
もちろん違う。
私から抑えきれない気配が放出されイタ吉たちが背後に後ずさりしているがホルヴィロスはまるで気づいていない。
……"観察"!
[ホルヴィロス Lv.32 比較:かなり強い(特殊性あり) 異常化攻撃:腐食毒 危険行動:取り込み]
[ホルヴィロス ホルヴィロスとは親から貰った名前。本当はヒュードックとケルベロスの雑種だ。雌雄両性の植物ながら動物としての特性も同時獲得している小さき神だ]
レベルは低いが能力は高い……
生まれつきの神というやつかな。
ならば遠慮なく全力で戦おう。
こいつはそうしないと話が通じない!