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七十六生目 父母

「さあ主、どうぞお食べください」

(なんか悪いね……)


 現在アヅキの膝と腕にかかえられ介護生活なうです。

 もちろん変なプレイではない。

 まだ動けないだけだ。


 朝になってもまだダメだとは……

 生まれてこの方最大の無防備を晒している。

 そんな私にめちゃくちゃ優しいアヅキ。

 今まで疑っていてごめんね。


 魂の疲労というのは厄介だ。

 なにせ普段なら『なにくそ』の心で動くんだが……

 そういう意志がちっともわきあがらない。

 気をつけないと食事すら取る気が起きない。


 もちろん学ぶ過程では聞いていたから、理解しているんだけれど。

 想像以上に厄介だね。

 これを利用して攻撃してくる死霊系の魔物もいるとか。

 魂にダイレクトアタックとかずるい。


 ちなみにあの体験でレベルが1増えた。

 新しいことに対する経験値獲得率は毎回良い。

 コレで大台の30だ。


 今回は……とらざるをえないスキルを取ることにした。

[活魂 宿る意志の力が戦闘時以外常に回復し続ける]

 怨嗟喰らいの隣にあったけど良くわからないからスルーしていた。

 幸楽の魂バージョンだ。


 レヴァナント(ユウレン)によると魂は特にダメージが取れにくいそうだ。

 そして私はもう極めつけに悪い。

 最悪中の最悪だそうだ。


 なので彼女の見立てに寄ると様々な補強して私がこの常時スキルを取って丸1日回復に要するらしい。

 ちなみに回復するというのは動ける程度になるというだけ。

 全治はもう少し遠い。


 とは言ってもそもそも私がこれほどのダメージを負うのは想定外だったのとのこと。

 襲われた時に逃げるさいに浪費したのもあるが動くだけならここまではならない。

 私の魂が特殊すぎたが故に衰弱するほどのダメージを負ったのだという。


「あまりにも繊細すぎるから逃走時に急がせただけでひどく消耗してたのよ」


 そう言っていた。

 私の魂はまさに触れれば壊れる脆さのようだ。

 その他の話は今日聴くことになっている。

 アヅキに御世話になろう。


 結局後で来いという親の話をすっぽかしたカタチになるが、理由は既に知っている。

 今日の朝食時もニコニコしていた。

 いや……みんなニコニコしてこっち見ているか。


 珍しい私が介護される状態。

 めっちゃみんな物珍しさに見てくる。

 やめて!

 思ったよりも恥ずかしい!




 そんな困難を乗り越えて朝食を終える。

 まずは改めて両親の元へ……


「止まれ、大烏の進入は許可されていない」


 ジャック隊のふたりが私を抱えたアヅキを止めた。


「私が動けないから変わりだよ、ダメかな?」

「しかし、通す許可があるのは子どもたちのみだ」


 うーん仕事となるとこのふたりはかたい。

 まあ少し前までは敵同士でそもそもがジャック隊以外は会えない。

 規則はわかるんだけどねぇ。


 アヅキに翻訳するとすこし考えてから、こう伝えてくださいと頼まれた。


「ええと『私は今は主の手足。もし怪しい動きがあれば私を殺してもらって構わない』だそうです」

「うーむ……」


 もちろんこんなの建前同士の話だ。

 ジャックペアの兄が姉に頷く。

 そしてキングとクイーンの元へと向かっていった。


 すぐに姉は戻ってきた。


「特別に許可しよう。

 なお今回はクイーンの指示により我々も同伴しない」


 よし、なんとか大丈夫か。

 それにしてもジャックペアすら話に混ぜないのか。

 アヅキは元々ホエハリ語がわからないから問題は無いけどね。




 私達がキングとクイーン、つまり両親の元に来ると挨拶もそこそこに話が始まった。


「まずは我からだな」


 キングは私が特別であることを見抜いていた。

 それをキングは少しずつ言葉にする。


「我のスキル(ちから)だ」


 本質の見極め。

 それがスキルの効果らしい。

 その目で見た魂がなんなのかを理解するそうだ。


「ホエハリはホエハリに、カラスはカラス」


 魂は父から見れば種族毎におおまかな違いがあり理解できるそうだ。

 なので擬態や変装は一切通じない。

 さらには隠した敵意なんかも見抜く。


「だから分かった」


 私の魂が異常な事を理解した。

 呪われているとスキルにより理解出来たという。

 もちろん状態異常の呪いではない。


「歪かつ脆弱それに……不明」


 何の種族すら分からない混沌とした私の魂。

 それに父のスキルを組み合わせればおおよその対象の未来を知る事が出来る。

 もちろん常に変わっていく未来だが……


 私の場合は一切が不明。

 今日死ぬかもしれないし永遠に生き続けるかもしれない。

 道から外れた存在。


「だが分かった事もある」


 それが転生したものという事。

 私のスキル観察みたいに、それ自体知らなくても理解が出来るようなスキルみたいだ。


 ちなみに今はそれらも分からないらしい。

 ユウレンの隠匿の力だ。


「まあ、我からは以上だ」

「父さん、ありがとうございます」

「じゃあ次は(わたくし)ですね」


 母からの話はなぜ私が群れを出ようとしているか分かったのかだ。


「母になってからの力で、相手の強い意思が読み取れるようになったのです」


 母のスキルで範囲内の相手の強い想いを受け取る力。

 どうやら結構前から私のその考えはだだ漏れだったらしい。

 ちょっと恥ずかしい。


「良いのですよ、おとなになって、ぜひ広い世界を見てきてください」

「なぜ母さんは、そんな勝手を私に許してくれるのですか?」

「それはね、あなたが好きだからよ」


 ちょっとドキッとした。


 もちろん他に理由らしい理由もあった。

 母が言うには私は既に十分過ぎるほど群れに貢献したこと。

 それに私が転生者という事に関しても。


「あなたにはわざわざ別の世界から生まれ変わってまでなすべき事が、きっと待っているはずですよ」


 そう言って微笑む。

 ちょっとロマンチストかもしれない。

 けれど私もそれに同意せざるをえない。


 なぜだかは知らないけれど、いつからか私は『何かをやらなければ』という思いが強くなっている。

 まるで眠っている時に少しずつ刷り込まれているような意識。

 いや、むしろ忘れていたそれが少しずつ引き出されているのか。


「けれど、まだもうちょっとはゆっくりしていきない。

 そして出ていったとしても、いつでも帰ってきて良いのですよ」

「はい!」


 アヅキに話が終わったことを伝え群れへと戻る。

 そのさいにチラリと見た両親はこちらを信頼した目を向けてくれていた。


 何もかもお見通しでなおかつ赦してくれていたなんて。

 敵わないなあ。




「あっ、ああああーっ!! っ〜〜〜〜〜〜!!!」


 ドラゴンがズシーンと倒れ込む。

 うん、また無敵プラスヒーリングしたのだが……


 今度は気を失ってはいない。

 ただもう顔が正気じゃないしケイレンしているから色々と大丈夫かなとは思うが。


「話に聞く通り派手ですね、まあ気持ちはわかりますが、それにしてもかと」


 アヅキも若干引いてる。

 てか気持ちが分かるってなんなんだ。


「私の能力(スキル)、そんな力は無いと思うのだけれど……」

「ああ、ならば私の体をお貸ししますか?」


 で。

 なぜか私が無敵とヒーリングをアヅキにかけながら身体リンクすることに。

 うーん、ヒーリングの光はあったかい。


「おお、主の御恩が全身を満たします……!」

「え?」


 確かに、無敵は効いた感触がある。

 だが無敵を喰らった感覚はまるでない。

 もしやこれは……


「ごめん、多分身体リンクのレベルが低すぎてそこまでわかんないや」

「いえいえ、その分私が主に奉公致します故、なにとぞこの身を十分ご利用ください」


 まあスキルレベル低いから仕方ないね。

 その後はドラゴンに今日の基礎体力訓練を言い渡して次へ向かった。

 しばらくたったはずなのにドラゴンはまだ落ち着いていなかったが……まあ多分大丈夫。




 小話。

 ローズのあずかり知らぬ所で。

 ジャックペアの会話だ。


「なあ……みんなあの場ではあんまり驚いてなかったからそれっぽくしていたけれど」

「うん?」

「よくよく考えたら元は人間の姿で記憶も大半無くしているらしいって……大変なことじゃね?」


「まあ、それは私も思っていた。

 けれど私の場合は出ていくつもりだって言う方が驚いた」

「あーそれな、この群れはもはや彼女がいないと成り立たない程になってる気がするんだけれど……」


「そんなの私達が火を受け継げば良いだけ、それよりも!

 彼女が出ていくって事は、また私はクイーン候補!

 これを見逃すわけには行かない!」


「お前……ブレないなー。

 なんだかんだ言ってお前クイーンの素質あるわ」

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