八百二生目 白衣
とにかく治療し寄生されていた魔物たちはみんな治した。
ただしだいたいの魔物は記憶がない。
事情を話して一旦イロテナガたちの元に送ることに。
空魔法"ファストトラベル"でイロテナガの元に戻るのは楽に出来る。
……身体がなんか軽いと思ったら。
そう言えば一連の騒動で身体の花はすっかり取れてしまったなあ。
「ようし! この機会に!」
「うん、飾りのチェンジだね!」
「呼んでこよう!」
「……え?」
ヒュードックたちが騒いでいると私達が来た方角から追加の船とイロテナガたちが。
うわっ。ついてきた。
「事情は、聞いた。引き受けよう。それで……」
「うん」
「とても、よく似合ってる」
「……うん」
イロテナガたちがした2度目の飾り付け。
イバラを含めて今度は全て白で統一された花々。
雨がふってても元気な足元の白い胞子も合わさってまさにここだけ世界から切り離されたかのよう。
みな喜んでいるが……
白とはよくこう使われる。
死装束と。
コレはいよいよ隠す気がないほど危ないのではないか。
神に対峙する時は近いのだろう。
身を引き締めないと……心がしぬ。
真っ白な姿をして軽く掃除された船へと乗り込む。
粘液は時間がたつと粘力がなくなりまとまりやすくなるらしい。
自然だとそのまま分解される。
なので片付けはまとめて毒沼に放り込めばなんとかなったようだ。
完全にきれいなわけではないが仕方ないね。
それよりも私が一層この世から離れたように感じられて早く終わらせたい。
「ローズ、また白いな、なんかキラキラしているし……俺と逆だな」
「代わってくれても良いんだよ?」
「まさか! 周りが納得しないだろ」
「だよねえ……」
ダカシと冗談めかして話しながら改めて船で運ばれる。
ゴウは小舟で化合中だ。
あれさえできれば白い雪調査のために毒沼を自由に渡れるはずだ。
神をなんとか説得し人身御供から解き放たれ毒沼の白雪を集めなければ……
船は雨の中ひたすらヒュードックたちに牽引されてゆく。
私の後ろの方にある小船たちにイタ吉たちやイロテナガも乗っていた。
やがて船がどこかについたらしく止まる。
「さあ降りて!」
「花は崩さないでね!」
「う、うん」
正直花を崩さないように歩くにはイバラすら動かせない。
慎重に歩むしか無い……
死装束だから崩しちゃいけないのわかるけれど。
船から降りればゴウたちが近くへと寄ってきた。
ゴウの手元に容器。
中にはおそらく……
「ローズさん、できましたよ!」
「中身をぐいっと飲むんだぜ!」
「なんか……よくわからない味だった」
さっそく1つもらってぐいっとひとのみ。
……う。うん?
確かに液体なんだけれどどこか引っかかる……
なんだか通ったあとに膜をはっているかのようだ。
味がないというのが合わさって奇妙。
水の味ではなく味がないという味がする。
うへぇ。
確かにヘンな味だこれは……
「これで少ししたら毒沼の上でも歩けます。身体がなんとなくうるおいだしたらその証拠です」
「おーい! なにしてるのー?」
「ああ、いくよいくよー」
ヒュードックたちに呼ばれてしまった。
キキノコはカラフルな樹林の奥へと向かうらしい。
私達はついていくことにした。
しばらく歩けば何やら建造物じみたものが見えてきた。
人工物のようにみえるが大きな木が長年で腐り落ちたあと斜めに落ちそこへイロテナガたちが加工し着色したみたいだ。
それはまるで祭壇。
1番上にあるものは台と……その上に草で出来た輪っか?
根を切り離されているのに妙に生き生きしている。
「では、これ」
イロテナガの長から同じような毒々しく邪悪に生き生きとした奇妙な草の輪を渡される。
これくわえるの抵抗あるなあ……
まあ押し付けられたのでいやいやくわえる。
「上の、モノ、それと、交換」
「身体の花は崩さないでね!」
「きれいに盛り付けたからねー」
「あ、は、はい」
どんどんと怪しい儀式めいてきた……
意味があるのかないのか。
きっとそれ以上に神が厳格に守らせる手順なのだろう。
さっきの戦いもあったしこれ以上機嫌を刺激しかねない動きは避けたい。
周囲に見守られる中1歩1歩あゆみ――
「カアケエマァーシモ! カシーケエーシキ!」
「えっ!?」
「あ、イロテナガ長さんの言ってるのは気にしないでゆっくり登っていってね!」
いきなり大声で翻訳が正確にはななまりで何かを話し出す長。
めちゃくちゃびっくりした……
「タェーマァー! ウマァータル! スァアー! おおおぉ……しーいろぉいおぉぅきみぃ…!」
あ。おしろいという単語は聞き取れたぞ。
とりあえず前みたいにゆっくり歩もう。




