八百一生目 白胞
ゴウが倒した寄生ゾンビを治療。
やはり寄生を治しても意識は戻らない。
あとでまとめて治さねば。
「では、改めて」
ゴウがナイフを持ち直しキセイジューに近づく。
するとキセイジューの美しい枝がしなってゴウに向かいきた!
ゴウは跳んでナイフがきらめく。
ナイフは正確に枝を受け止める。
キセイジューはあくまで木材だからナイフでは深く切れないのだ。
「では、イタ吉さん……!」
「おうよ!」
ゴウが踏ん張って耐えているところにイタ吉が跳ぶ。
尾の刃を持ち一振。
重い一撃により枝が根本からざっくりと斬り裂かれた!
悲鳴をあげるかのように木が鳴って元の姿勢に戻る。
もう攻撃してこないようだ。
ゴウが切り落とされた枝を拾う。
「目的のものも手に入りましたし、あとはほうっておきましょう」
「んあ? ぶっ倒さねえのかこれ」
「キセイジューもこの世界では立派な自然のひとつです。なんだか恐ろしいのは確かなのですが……もうあの粘液の塊もいませんからね。どのような形であれ、それも重要な命の循環です。それに……絶滅させたら、僕たち毒沼渡れませんから」
「なーるほど、単に悪いってわけでもないんだな、使えるし」
イタ吉はゴウの言ったことの半分も理解できているかは怪しいが……
とにかく今は。
「それで、どう使うんだそれ?」
「使い方は簡単なんですが、これだと少し長いので人数分にわけましょう」
「ほいほい」
イタ吉がサクッと4等分にした。
手で持ちやすいサイズになった枝をゴウが持ち上げればそれだけでベットリした粘液が溢れ出す。
「ま、まさかそれを身体に!?」
「いえ、これだとねばつき過ぎてなおかつ効果がそんなに持ちません。化合します」
「ほっ……」
ダカシが引くのもわかる。
さっき散々気持ち悪がったものだからね……
まああれよりも色合いが透明に近くてモノが違うんだろうけれど。
「化合するまで少しかかりますし、今のうちに寄生されていた魔物の治療と、ヒュードックたちとの合流をしましょう」
「ああ」
私は反対側の岸に移動して積まれている意識不明体たちの治療を試みる。
寄生は脳を巣食うものだったため脳がボロボロ。
当然"ヒーリング"では再生しない。
やるのは聖魔法"トリートメント"。
場所を特定して集中し同時に10体ほどまとめてかける。
光がキラキラと頭にかかり頭が光ってゆく……
やがて傷が拒否され頭の穴から奥の方まできれいにふさがって行った。
まずは1体意識がもどったのかうなって顔をしかめる。
薄く目を開いた。
「あ、目が覚めた!」
「う……ここ……は……?」
「キミ、寄生されていたんだよ、大丈夫?」
「寄生……? 誰……? あ、あれ……? 私……誰……?」
かすれた声で私を見てくる動物魔物。
ううむショック性かはたまた傷を治したものの記憶されていた媒体が壊されていたのか。
少なくとも記憶が飛んでいるらしい。
「私はローズ。安心して、もう大丈夫だから」
「はぁ……? ローズ……」
現状を把握できていないらしくまた魔物は目を閉じる。
他の魔物たちも次々と起きだした。
「おーい! ローズ!」
「わあっ!?」「船が……」「勝ってる!」
「すごい……本当にここまで! しかもあの寄生された者たちを治しているのか!? 本当に!?」
イタ吉たちがヒュードックを連れて戻ってきた。
どうやらみんな無事なようだ。
私の周りに集まってきてわいわいと喜びの声をあげている。
「すごいすごい!」「さすが!」
「おしろいさま大喜び!」「わーい!」
「ローズばんざーい!!」
「わ、私だけじゃなくみんなでやったからね……」
「「ローズばんざーい!!」」
ううっ……また私だけ異常な持ち上げである。
さらにヒュードックたちが小袋から何やら取り出す。
葉っぱの袋はイロテナガ製だろう。
中から出てきのは……キノコ?
小さめのキノコをくわえてそそくさと私の周囲に集まってくる。
「これ使うなら、今だよね!」
「え?」
「よーし、いくよ!」
「え? え?」
ヒュードックたちが一斉にキノコを噛みしめるとキノコから大量の白い胞子が飛び出してきた!
「うわっ!」
「わーい! めでたい!」
「ほひほひほー」「ほへへほー!」
「祝福ー!!」
なんだからしらないが白い胞子をやたらめったらかけられてしまった。
おしろいさまという言葉と何か関係が……?
多分神のことだとは思うんだけれど……
すぐに胞子は落下したもののなんか身体がやたら白くなってしまった。
「おうおう、ローズばっかりいいなあ!」
「他人事だと思って……大変なんだよ? 耳にも入ったし、うーん!」
フルフルッと身体を振れば耳に入ったゴミは取れた。




