七百九十九生目 粘王
人間大粘液の塊が毒沼を駆けてくる!
気持ち悪い!
[キセイジューオー Lv.35 比較:弱い(特殊性あり) 危険異常攻撃:寄生 危険攻撃:粘液の沼]
[キセイジューオー キセイジューが最初に寄生するために生み出す寄生種が取り付いた魔物がトランスした姿。キセイジューオーが出来たキセイジューは周囲の魔物を食い尽くす驚異となる。元の魔物は完全にそこになく、キセイジューが食べきれなかった魔物をも取り込み全てを飲み込み尽くすまで成長し続ける]
「うげえええっ!?」
「気持ち悪っ」
「うぐっ、こんな時に……」
見た目や音やにおいを差し置いてもマズイ。
イタ吉たちの疲労と生命力消費それに行動力の欠如がマズイ。
さすがに100体相手に出し惜しまなかったからリソースを使い切っていた。
キセイジューの寄生体を抜いた魔物たちの山をちらりと見る。
みんな生命力があり息はしている……
意識が戻らないが今はむしろ都合が良いかも。
おそらく今戻ったら頭の穴で悶絶する……
だがすぐ死にそうではない。
だったら。
(じゅんびおーけー!)
(アイツをぶっ飛ばすぞ!!)
空魔法"ミニワープ"!
一瞬で船の上に出る。
"同調化"の影響でいきなり現れた私にみんなが驚くこともないし……
「んじゃ、頼んだ!」
「回復したら手伝います」
「ゾンビだったやつらは見ておくよ」
「うん!」
既に動きも決まっている。
私以外を対象に"ミニワープ"!
3者とも認証! 向こう岸まで一気に飛んだ。
認証がいるため敵には使えないが味方にはこういうことも出来る。
さて……あっという間に詰めてきてすでに粘液の塊ことキセイジューオーは目の前。
このまま走り潰してくるつもりか!
船上に乗った瞬間に"止眼"!
引き伸ばされた時間間隔は時が止まったように見える。
相手の追尾性能はあまり無さそうだがすごい粘液を撒き散らしている。
あれに当たると身動き封じられるから……
"止眼"解除!
イバラを船につけて……
脚のようにしてジャンプ!
イバラを伸ばしハイジャンプ!!
眼下で粘液の塊が通り過ぎていく。
着地も気をつけて……
イバラを伸ばして粘液がないところに脚をつく。
よしよし曲芸じみているが意外にできるね!
「ウボオア……? バオア!!」
先程飛ぶ際に使ったイバラは先を自切。
粘液に飲まれていたからね。
キセイジューオーはこちらを振り返りまた駆けだしてくる。
単純だけど絶対触りたくないなアレ……
うっかり爪でやるわけにもいかない。
火魔法"フレイムボール"!
青白い火球が4つ飛んでゆく!
火球はキセイジューオーの顔面に直撃!
火柱が立って粘液を包み込み……
これで決まった……いや!?
「うぉゴゴゴ!!」
「わあっ!?」
火柱食らっているのにそのまま突っ込んできた!?
意味がわからないぞ!?
慌てて横にハイジャンプ。
粘液がまるで破れておらず平然と突撃してくるとは。
おかしい……そこまで強い相手ではないはずなのに。
"二重詠唱"でちゃんと倍にしたのに……
そういえばさっきの"観察"で特殊性ありとかかれていたな。
ああいう時はたいていその特殊性で生き残っているため単なるパワーはアテにならない。
実際に私が粘液に囚われ組み敷かれたら寄生されてしまい負けるだろう。
ちなみにその場合ゴウが枯れ葉の苦薬というものを飲ませるみたいだ。
死ぬほど苦いらしく遠慮したいが肉体から力を吸い上げるように接触する植物たちを撃退する。
寄生体だなんて当然負けるだろう。
もしキセイジューオーがそのたぐいなら試しても良かったのだが残念ながら先程の"観察"でできる可能性は否定されている。
もう元の魔物はなく新たなキセイジューの手先として生まれ変わった存在。
粘液の塊で吠えてこうしている間にも先程から何度も走り込んでくる相手だ。
そう。何回も避けている。
これはかなり困った。
船がどれだけ大きくても粘液を撒き散らされすぎている。
……そういえばあの粘液減らないな。
粘液の塊そのものなら減少してもおかしくないはずなんだけれど。
まさか。"見透す眼"!
……いた!
粘液の塊のなかに『キセイジューオー』が!
火では粘液の塊に阻まれるだけでキセイジューオー自体にダメージが入ってなかったんだ。
キセイジューオーの正体。
それはニンゲンの背骨よりも大きな幹と伸びる枝。
そして頭蓋骨のように丸い木が玉のようなものを掴んでいる。
美しいキセイジューが小型化したかのようなものが恐ろしい速度で粘液を分泌していた。
あれがコア。キセイジューオーそのものだ!
あの枝がどれだけ弱かろうと粘液を突破出来なければ意味がないということか……どうするか。




