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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂おしき恋をあなたに捧ぐ
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七百九十三生目 冥越

 ううむ。

 やはりしっかり眠れない。

 どこまでも眠りが浅い。


 身体は休めても心が落ち着かない……

 身体中の血が騒ぐようだ。

 それとは別に身体中にめぐるアルコール。


 あっっつい!!

 熱帯雨林なのも合わせて身体から熱が出ない!

 仕方ないので起きて外の風にあたりにいく。


 ……やはり私のベッドだけ違うじゃないか。

 今気づいたがはるかにフカフカである。

 明らかな高級品……なぜ私に。


 起こさないように慎重に出て……

 この広いイロテナガの里内を歩み……

 上の方途中で枝分かれしている道を行……


 しばらく歩いて外に到着。

 ここは見張り台的な意味合いがあるらしくどこかにつながっているわけではないがとにかく見晴らしが良い。

 高いから良い風もよく吹き抜けていく。


「……」

「……」


 おや?

 遠くから声が聴こえる。

 ふらつく聴覚をなんとかシャッキリさせて近づく。


 というかやろうと思えば出来るんだな自分……

 こういうのは自分での調整次第か。


「……なんだけど、メイゴシの酒、よく飲んでた、良いこと」

「ウム、明日、彼女、生まれ変わる、常世と、未練、断つ、良い機会」


 どうやら声は少し離れたところにある別の見張り台から聴こえるらしい。

 私の位置や相手の位置からは互いが見えない。

 それよりメイゴシって? 生まれ変わる……?


「ふふ、明日、儀式、楽しみ」

「我ら、永劫の、豊穣、やってきて、終わらぬ春、やってくる」

「「ハハハ!」」


 声が静かになった……

 会話が終わり帰っていく足音が響く。

 ううむ……


 メイゴシ……専門的な言語は翻訳にかなり気を使う時がある。

 なんとなく当てはまる単語を入れてはいるが。

 うーん雰囲気に近いもの……これまでの経緯……時……文脈……


 ……冥越し?

 なんだろう。何ら確証はないのに。

 背筋がぞわりとした。


 途端に酔っていた頭が完全にクリアとなる。

 一連の行動。

 接待的態度の変化。


 異常なヨイショ……

 送り……選ばれ……神……

 …………ダメだ!


 浮かぶ言葉はある。

 けれどもそれらを紡ぎ合わせると好意が一転して恐ろしいものが見えだす。

 それに私が? しかもロゼハリー状態を見て……?


 ちょっとそんな自信はない。

 明日ゴウたちに相談しよう。

 ……この空気感。


 明日は雨が降る。






「……人身御供(ひとみごくう)ですね」

「やっぱり!?」

「ん? なんだその、ひとみ……うん?」

「うーん……大変そうだなあ」


 ゴウの判断に私は朝から涙が飛び出る勢いだ。

 出ないけど。

 イタ吉はわかっていない。ダカシは分かっているフリをしてわかっていない。


「人身御供です。今回の場合は魔物ですが……ようは神に生き物を捧げるということですね」

「なっ!? ローズが!?」

「うんうん、そうだな」

「確定ではないんだけどね……さすがに怪しむ材料が増えすぎていると言うか」


 実際人柱やら人身御供の見返りは長きに渡る繁栄やら危険からの守りである。

 昔からニンゲンたちも田舎ではやってきた旅人を捧げたりまたは村娘を捧げるそうだが……

 まさか魔物たちもそれを?


「ただ、魔物がそこまで熱心な信仰体制を整えているのか? そこが不可思議なんですよね」

「うーん……神は神でも、まさしく砂漠のときのように、いるんじゃないかな、しっかりと、すぐそこに」

「なるほど、神というか、実際にここの場所ヌシなら、話は別ってこったな」


 そう。神だの何だの難しく考えるのではなく……

 子分猿が親分猿に奉納するようなものだと考えれば?

 余計に怪しい……


「とりあえず様子を――」

「おはよう」

「「お、おはよう!!」ございます……」


 びっくりした。

 イロテナガがこちらの部屋を覗いていた。

 ……こうなったらこの状況を利用するしか無い。


「では、下で、待つ。朝食」

「はーい!」


 イロテナガが顔をひっこめ……

 全員で顔を中央に近づけ小声で話す。


「……こうなったら、うまく彼らを利用して沼を渡り、南の森の道具を手に入れたら大沼渡りして逃げ切ろう」

「ですね。同じこと考えていました」

「ああ、わかった」

「うし、いくぜ!」


 覚悟が決まって全員寝床から出る。

 さあ……どうにかこうにか切り抜けるしか無い!

 出来なかったらこの世界内にうまく逃げる!


 世界の外に行けなくともそれは出来るからね!


 パパッと朝食を済まし出来ている船へ!





 船へ……

 ええとこれは?

 外はやはり毒の雨が熱帯雨林らしく降っているが大事なのはそこじゃない。


 なぜか私達はガッチリと誘導され出入り口付近に。

 そこには先日とは様変わりした会場。

 ただの空間だったのに今ではまるで……儀式。


「をみちびの儀、始める」


 まだここからが本番なことを私達は思い知らされるハメになった。


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