七百九十一生目 橋渡
イタ吉たちと秘密会議をしたものの特に解決策も見つからず橋を渡りきる。
けっきょくやはり彼らヒュードックの協力は必須だとして変な部分を我慢するしかないと判断せざるおえなかった。
なんというか……
私も簡単だからヨイショにはなんやかんや楽しくなってしまうのだが。
彼らのはただただ奇妙さと不思議さとそして怖さを感じる。
ヨイショするときの彼らの目が単なる喜びだけではない色がとても多く見えるからだ。
イロテナガの里までそのまま歩んでゆき……
長のところまで合流した。
「……おお、帰ったか、連れてきたか」
「あ、何かお話中でしたか?」
「いや、さっき、終わった」
長が周囲のイロテナガと何か話していたけどあんまり注視してなかったせいで何かはわからなかった。
まああまり関係はない。
背後のヒュードックたちに比べたら……
「会いに来たよ、イロテナガたち」
「ムウ。宣託、受けた。身受け、よい」
「やったあ! じゃあ今日は豊穣来華の宴だね!」
一番白っぽいヒュードックが前に出て長とよくわからない話をしている。
ヒュードック側の長かな。
というか受信機があるから勝手に翻訳されているが普段どうやってやり取りしているんだろう。
「というかそういう風に話すんだ、なんか変だね」
「ムウ。こちらの、セリフ」
あ。やはり普段は互いの言葉がわからずにやりとりしているだけなのか……
イロテナガたちがどうやら私たちを運ぶ船を作っていてくれているらしい。
その代わり完成は明日。
船を作るという点では速いもののいわゆるニンゲンの思うソレとは違うかららしい。
まあ進むのは毒沼で動力はヒュードックの牽引だからね。
おそらくは浮かせるための板貼り合わせみたいになるだろう。
もちろん普通だとしずむからなんらかの特殊な。
というわけで。
私達は今日もここに泊まることに。
カエリラスは仕掛けてこないしこの世界から出るための解析はぜんっぜんすすまないし……
想像よりずっと高度な解析プロテクトだ。
やるなら『ホリハリー』でやりたいけど当然姿を変えられるわけもなく。
ぐぬぬ……
本日はまた厄介になるということで日暮れまでイロテナガたちの橋修復を手伝った。
さっき会話に出ていた豊穣来華の宴というものをやるらしく忙しそうだったしね。
本格的な橋渡しは後になるため仮の蔦渡しをしていく。
私のイバラを何本か絡めながら伸ばし……
次のヌマグローブまでつなぐ。
そのあとに距離を多めに伸ばしてから……
根本で自切してイロテナガたちが手早くヌマグローブに結ぶ。
ピンと張るように調整すれば小柄な魔物たちの移動手段完成だ。
このイバラどうやって自分の中からドンドン出るのかはよくわかっていない……
感覚的にはすごい勢いで生成しているっぽい。
何かを収納してあったところからズルズル抜く感じはないからね。
しまう時も勢いよく分解しているようだ。
イバラを利用してヌマグローブまで高速移動。
伸ばして掴んで縮める!
ヌマグローブがしっかりしているからできる技だ。
これで向こう側まで繋げ……
焼け落ちた南側のヌマグローブのところまでつなげる。
コレでイロテナガたちがヌマグローブの回復作業が出来る。
植物が完全に焼けてしまったのではと思ったがイロテナガたちによると違うらしい。
中の部分はまだ保水しており行きているんだとか。
それをどうこうして助け出すらしいので私も見せてもらった。
魔法の研究にもなるからね。
「いやあ、あっという間に、細い道、出来た」
「さすが、我ら、倒す、だけある」
「それじゃあ反対側も結びますねー!」
私単独なら南の森まで行けそうだが残念ながらそうはいかない。
焼け落ちている方は不安定さがかなり増していてとてもじゃないがイロテナガより重い相手は危険。
そもそもうっかり落ちたくない。
明日まで待てば行けるのだから待とう。
「やはり、選ばれるだけ、ある」
「楽しみ、明日」
「……?」
ちょくちょくイロテナガたちがそういう話を聞く。
今日の夜の宴が楽しみなんじゃあ……?
選ばれたって……?
神のことも含めてなんだが雲行きが怪しくなってきたなあ。
夜。
呼ばれて来てみたら豪華な宴会場かそこに出来上がっていた!
昨日のそれとは比較にならない。
なにせ今回はやたらかざりつけにこだわりが見られる。
天然塗料を用いた着色までして……
結構驚きだ。
「さあ、ローズ、あちら、ほかは、こちら」
「え? 私だけ?」
「よーし飯だー!!」
「何かあったら呼んでください」
「ここの何食べても辛いんだよなあ……」
うむむ……みんな自分のことじゃないからほとんど興味なしで通り過ぎていった。
仕方ない……とりあえず私だけ行こう。