七百八十七生目 摩天
南の森へ抜けられなさそうだった。
橋の修復は1月後……
「長さん、南の森……つまりこの先に行ける道って、他にはありますか?」
「ムウ。危険な森、他には、毒沼渡る、それだけ」
「そ、その方法を手に入れようと思って南に行くのに……」
ゴウの質問の期待は見事に外された。
つまりこのままでは八方塞がりである。
「おいおい、毒沼は渡ろうにも沈むし溶かしてくるんだろ? どうしろって言うんだ!」
「方法、ある。毒沼、泳ぐ、食事、毒のヤツ。頼む」
「えっ、あの下を泳いでいるカバとかにか?」
イタ吉が赤いカバを指したが長は否定する。
どうやら違ったらしい。
「アイツ、狂暴。あの方、繋がり、高き森、棲む、オヌシの、親戚、そう見える、ヤツ」
「えっ!? 私!?」
まさかここで長に私を指されるとは思っていなかった。
私の親戚って……どういうことだ?
「近種……ですかね?」
「そう、見える。彼ら、高き森、道なき場に、悠々と、棲む。行けば、きっと、わかる」
「あちらは……北の森方面ですね」
長が指したのは北の方向。
今南よりなのでここからでは北側が見えないや。
行けばわかるらしいが……道のないところにいるとはよほど好戦的な魔物なのかな?
今までの場所でも私のホエハリ系統と思われる魔物はいるにはいた。
だからここにもいてもおかしくない。
なんだかちょっと楽しみになってきた!
「ようし! じゃあさっそく行こうぜ!」
「ええ」「ああ」「うん!」
イタ吉の元気のいい掛け声とともに私達は今度北を目指す……
ヌマグローブの森外周は問題なく回れた。
植物たちの襲撃も常識的な範囲でしか無い。
植物の襲撃が常識的というのもなかなか感覚がおかしくなりそうだが。
今私達はカエリラスに警戒しつつ北行きの橋を進んでいる……
のだが……
「なあ……」
「うん?」
「やっぱ気のせいじゃないよな、最初見たときから、遠近感狂うんだが……」
「……うん」
「ああ、確かに。あれ、俺よりかなりでかくないか?」
イタ吉が聞くのもダカシが疑問形なのも納得せざるをえない。
そこそこ遠くに見えるはずのキキノコたち。
まるですぐ近くにあるかのような見た目している……
つまりはだ。
西の森よりもずっとずっと大きい……
縦に。
近づけば近づくほどそのデカさを実感する。
これまだつかないの!?
どこまでもどこまでも大きくなっていく。
けっきょく。
たどり着いた北の森は……摩天楼。
キキノコたちが競って天界へと繋げようとしているかのよう。
完全にビル街である。
大怪獣をもってこなくてはこのスケールには勝てない。
しかもキキノコだから広げた傘もまた大きい!
割と1本1本の間にスキマがあるから陽射しも降り注ぐし歩くには問題が少ない。
ただやはり熱帯雨林なので暑いけどね。
どちらかといえば傘の下を歩きたい。
「む、敵……ん!? 敵……!?」
「でかっ!?」
どうやら大きなキキノコたちだけではないらしい。
西の森で見たような植物含め植物魔物やらキノコ魔物たちが恐ろしく大きい。
わらわらと出てきたので相手しよう。
[アカツタケ 突進能力に優れているキノコ魔物。頭に刺激を受けるとそれで胞子を撒き散らす仕組みになっているのだ]
アカツタケは小ぶりで身体の殆どが丸く赤に白の斑点色がある傘に包まれている……本来は。
なんか2mくらいあるんですが。
[エノナゾキ エノキアシたちに紛れ獲物を狙う。見ためと違って凶悪な牙を持ち非常にタフ]
ヒョロヒョロしてもともと大きなエノキアシに擬態している植物魔物。
しかし食肉植物らしく擬態している頭のてっぺんが大きく裂けて牙を剥く。
たださすがに10mはなかった気がする。
[チャバガラシ じっとしていると小さな木にそっくり。周りの植物を毒で弱らせ栄養をすべて吸い取ろうとする]
抹茶色で全身を葉で覆った広葉樹魔物だ。
なんだか大きさがまさに樹木のごとく5mは越えているんだけも。
それでも周りのキキノコが100mは余裕で突破し300mとか400mとか多分あるからなんだか普通に見えてくる。
私達が小さくなって迷い込んでしまったかのようだ!
しかもそういう植物の魔物たちが3体ばかしじゃなくどんどん増える!
「大歓迎だな、いくぜ!」
イタ吉の突撃に合わせ"同調化"!
また味方全員に繋げて連携をはかる。
とにかく大きいし数も多いし私は強化を味方にまかねば!
イタ吉が前線に飛び込んで引きつける!
スキルでイタ吉がどんどんと見た目増えていく。
各々バラバラに動いてかく乱しだした!




