七百八十五生目 辺境
ループしてしまっていた部分を修正しました!
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イロテナガという猿魔物たちの里にまねいてもらえた。
そこで安全な寝床を確保してもらい……
おいしい食事ももらえた。
いやまあヘンに料理加工せずに素材を活かしたかざりつけがメインだが。
そして当然どの食べ物も毒があるわけで。
どういうわけか毒の方向性が殆ど辛みなためヒィヒィ言いながらみんなで食べるハメになった。
しかも食事は半ば宴会じみてイロテナガたちと共に大きな食事場を囲んだものに。
歓待と……改めて謝礼の意思がこめられているらしい。
ありがたかったがなんだか申し訳ないような居心地悪いような。
イタ吉やダカシは楽しんでいたのでよしとしよう。
そして夜。
各々の武具や道具の手入れをする時。
特にゴウは全身に仕込んでいるらしくなかなか大変そうだ。
「ほおおー、随分慣れた手付きなもんだなあ」
毛づくろいしていたイタ吉が興味をもったらしくゴウに絡む。
確かに手付きが明らかに素早く正確。
早そうな擬音がついてそうだ。
「こういうものは、いざという時に私達の命を守ってくれますからね。さっきもそれで助かったでしょう?」
「ああ、あの隠密の合わせ技は凄かったな」
会話にダカシも加わる。
ダカシは自身のメンテナンスというよりも最近は特に悪魔との会話に重きを置いているらしい。
ダカシがこの毒々しい環境で普通に生活出来ている影響は悪魔の力。
ダガシの中に憑いている悪魔……初期には乗っ取ったり乗っ取られたりという関係でその後もこじれていたとは思えないほど。
ずいぶん悪魔の力を引き出すことに成功している。
同時になんとなくダカシが異常にささくれていた部分が削れているような……
意外なことに互いへ良影響与えているみたいだ。
「葉の隠れ布、静音のベル、弱者の豆粒……1つ1つは大きな効果がなくても、合わせる事でとてつもない効果があるんです」
「透明化するってスキルもすごいが、密着しなくちゃ効果ががなかったもんなあ」
「それで今俺達は無事なんだから、まさにゴウ様々だな」
ゴウの基本行動は生存第一。
あの状況をゴウに一任したからこそ私は自由に動けたわけだ。
「いえ、そもそもローズさんが引き付けてくれる前提でしたから」
「それはそれとしてという話だな」
「ああ! ローズは良いんだよ、アイツはアイツだ」
「ふふ、まあ……悪い気はしませんね」
私もここにいるんだけどね!?
別に会話に加わらなくてもいいかなーって思っていただけで!
「……それにしても、こうして魔物たちと組んで冒険をしているだなんて、過去の私に言ったらなんという顔をされるでしょうかと、たまに思ってしまうんです」
「ん? どういうことだ?」
そういえばゴウの過去はそんなに聞いたことがなかった。
ちょっと私もイバラの調子を確かめつつ耳を傾ける。
「いえ、なんというか僕が昔は魔物が嫌いだったんです。だから冒険者になったんですから」
「え!?」
「そんなイメージ、全然ないぞ!?」
イタ吉が驚きダカシも声を荒らげる。
私もびっくりした……
「うーんまあ、あなたたちと組んでいる今では違いますからね。ただ、昔は……いや、きっと今も、田舎では魔物の扱いはそんなものです。魔物とは折角育てた食料たちがみな食い荒らされる、生きる上での敵でしかないのですよ。僕も、そんな中で生きるひとりでした」
「そういうもんなのか?」
「ああ、まあ俺も覚えがあるな。ぶっちゃけアノニマルースが特殊すぎるだけで、辺境は魔物という名の害獣と生存競争をするハメになる。罠にはめて殺したくても殺すのは違法で、なおかつ強いからそもそも罠がダメになるだけ。相手としては最悪だ」
外界の魔物生息数は迷宮と比較してかなり少ない。
だがそれでもまともな環境なら魔物はその生息帯の頂点に立つ。
私は迷宮生まれだからあまりその感覚はわからないがほぼ倒れないクマと同類の扱いらしい。
「ええ。今ダカシ君が言ってくれたように、合法的に魔物へ勝つには苦労したものです。そしてその中でもっとも合理的に魔物を排除できるのが……」
「なーるほど、冒険者ってわけか」
「よく依頼して助けてもらい、非常にうれしかったものです。冒険者やそれよりもすごいと聴く勇者に憧れるのは、正直珍しくはないかと」
「気持ちはわかるな、本気で目指すかは別として」
そういやあダカシも復讐に走る前はただの村民だっけか。
おそらくは将来設計として描くのは冒険者よりも農家か……
実際に冒険者たちを見るということは敵と味方の血に濡れた姿を見るということ。
憧れもあるが……同時にたいていのニンゲンは気後れしてもおかしくない。
自分にムリなことをやってのけているのだからそこのラインは子供心ながらになんとなくついてしまう。
ぶっちゃけ武具だなんて身にまとわずに済めばそれではが1番なのだ。




