七十四生目 乖離
その日の夜の食事時。
全員がしっかり集まる時はこの時しかない。
アヅキやイタ吉たぬ吉それにレヴァナントすらいる。
ドラゴンもいるが……まあ彼は付き合い最近だし。
ええい、もう腹はくくった!
「実は!」「私は!」「元人間の」「生まれ変わり」「だったんです!」
私やればできる。
ド緊張の中5種族語使っての告白!
もう半分ヤケである!
反応は、あった。
「つまりどういうこと?」
イタ吉ィィィ!!
前提だった、前提が足りなかった!
「詳しくは分からないですけど、ローズさんがローズさんなら大した問題ではないのでは?」
たぬ吉はなんか達観しすぎだ!
ご飯食べ始めているし!
「ああ、やはりな」
だからこそこの声が聴こえた相手には驚いた。
父だ。
「一体、どういう……」
「後で我の元へ来い」
そうだった、父はめちゃくちゃ会話に時間かかるから、こういうのは後回しか。
次に話したのは……
「ほほう、やはり主は流石であらせられる、もはや種族という枠にすらとらわれぬ。あらゆる苦難すら乗り越え命の枠すらも越えるとは……」
なんかアヅキはぶつくさ言っているがいつもと変わらない!
他のみんなもだいたい『何が問題なのかわからない』感じだった。
ご飯食べだしちゃってるし。
「え、えええええぇ!!?」
だからこのリアクションが2箇所で同時に上がってビックリした。
ハックと……ドラゴンだ。
インカは、
「よくわからないけれど、ローズはローズなら良いや」
とのこと。
ハックとドラゴンは興奮した様子。
「すごい!
お姉ちゃんは特別なんだね!」
「に、ニンゲンって、大丈夫なの!?
ドラゴンを一番殺すのがニンゲンって聴いてて……」
「ローズお姉ちゃんなら大丈夫!」
「あ、でもそうかあ、ローズ様だから大丈夫かなあ……」
2極端の騒ぎ方だ。
ええと、これでみんな納得したのかな……?
「それだけじゃあ、ないですよね?」
だから優しく言われたその言葉には驚いた。
母だ。
ニコニコとして、何かを待っている。
「もう1つ、あると?」
「あるじゃあないですか、いつかこの群れを出るのでしょう?」
『ええええぇ!!??』
これには母と父以外のホエハリ全員が驚いた。
もちろん私も驚いた。
いつバレていたのだ。
「いつバレたのかという顔ですね、見ていればわかりますよ、母ですから」
そんなに顔にでやすいタイプだったかな!?
思わず触ってしまうよ。
「あの子はこの群れに収まる存在ではないのは、みんなわかっているでしょう?
いい加減あの子をこの群れに押し込めるワケにはいかないのですよ。
その話を含めて、後で私たちの所に来なさい」
みんな、何か思うところがあるのかざわつきが収まる。
そしてまた食事の音のみが響くようになって……
「ちょっと! 来て!」
あれ?
ユウレンにひょいっと担ぎ上げられる。
一体そのやせぎすの身体のどこに筋力が……
「ちょっとお借りします!」
「ちょっと持っていかれるみたいなのでお構いなく」
適当にニンゲン語を翻訳。
そしてそのまま軽々と持ち運ばれた。
あれ、あれ?
冷静に考えたら、なんで私抱っこして運ばれてるの?
「なんでプロに真っ先に言わないの!!」
何故かめちゃくちゃ怒られた。
いやー、よくよく考えたらそうだよね。
死霊使いにまず話を通すのが筋だよね……
「はい、大変反省しております……
けど、これなんですか」
「もちろん、死霊魔術の1つよ」
なんか急速で描かれた魔法陣やらハックの土器やら本やらと。
そして中央には私。
「ねえ先生?
これ私が習った中でヤバイって聴いてたものなんですが?」
「そうよ、ヤバイのよ。
ワタシ以外が使ったらね」
「先生!?」
いやこれ絶対ヤバイやつだって!
だって確か中央にいる生者に対して……
「はいこれ、奥歯を噛み割らないように」
「センセイ!?」
奥歯に突っ込まれたのは噛み耐えるための木。
しかもホエハリ用に頑強にしてあるやつだ……
これはダメなやつだ!
「はいスタート!」
ぎゃああああぁ!!
一瞬にして私の意識は遥か遠くへと吹き飛ぶことになった。