七百八十三生目 短刀
イバラをのばし木上で撃ってくるイロテナガたちを撃退中。
「撃て! 撃て! 斬り落とせ!!」
砲撃を撃ってくるところを優先撃破!
自身に飛んでくる砲撃は走り回ってよけつつイバラに向かってくる砲撃はしっきのとおり。
伸ばす! 自切! 着弾後突っ込む!
「「うわああああっ!!」」
いい感じに吹き飛ばせた!
山積みにちゃんとしておく。
とにかく他の弾をイバラで防ぐことを意識しないと大量に生命力を削られるだろうからわりとチマチマとした戦いになる。
「「ぬわあああぁ!!」」
「「ぎゃああああー!!」」
「お、長ぁ!」
「ムウ!? 削られる! ナゼ!?」
はっきり言ってもうこっちがポカしない限り向こうはジリ貧だ。
順調に山の積みは増えてゆき……
下の魔物がプレスされないようにうまく横に広げ投げておいて……
「さあ、あとはキミたちだけだ!」
「ムウ!?」
「長ー!!」
長イロテナガと周囲のえらそうなイロテナガたちだけが残った。
えらそうなイロテナガたちは明らかにビビりひるんでいるが長はそうでもない。
この状況で闘志を燃やす炎が瞳の奥に見える。
「あの方、ために……逃げない! 一騎打ち、勝負!」
長が長い腕を差し出すと偉そうなイロテナガが何かを手渡した。
長の手に握られるものは小さな植物。
植物モンスターが操る触手の先にある刃みたいだ。
硬質なトゲがナイフのようになっていて立派な武器に。
それにしてもあの方って……?
全ての疑問は勝ってからだろう。
基本的に戦いはつらく苦しいものだからこそ……
脳内の興奮物質が分泌され緩和し。
今こうして奮い立つ。
だから……笑顔で終わりたい。
互いに太いヌマグローブの枝に並びたち。
いざ。
「やああーっ!!」
「ハァーッ!!」
光が硬質なトゲに集って行きそのまま長い腕を利用した突き!
腕の長さも含めて槍のようだ!
私は踏み込み素早く前足を振るう!
イバラは目立つ性能があるけれど目立たないながらケンハリマ時よりも変化するところ。
それは筋肉だ。
イバラ振り回しに耐えうるだけのしなかやで強靭な肉体が備わっている。
グラハリー時と違うのは圧倒的に攻勢に向いているということ。
瞬発的に素早くなめらかに動かせるこの力。
そしてイバラのトゲよりも強靭な爪を合わせて……
爪が相手の刃を跳ね砕く!
相手が動くその前に前足で大きく斬り上げ!
光が深く入り肉を裂く!
"峰打ち"はついているから死にはしないが今の急所斬りは生命力を大きく削る。
背後へと転がり吹き飛んでピクピクとしか動かなくなった。
「お、長!? な、何が!?」
"連重撃"で近接攻撃は全て倍になるうえ本当に物理戦が強い。
周囲から見たら私と長が近寄った瞬間に私の前足がちょっと振られた後なぜか長が吹き飛んだ感じだろうか。
短剣も破壊されているし。
よく猫パンチは速すぎて見えないと言うがそれをさらに速く厄介にしたものである。
本気の連続斬撃ならもっといけるけどそこまではいらないので2発にパワーを込めさせてもらった。
ロゼハリー時はイバラがメインで使うからなかなか戦いそのものの工夫が楽しかったかも。
さあ治療と"無敵"だ。
私は戦闘時出来うる限り真面目に楽しむようにしている。
ヘラヘラしていたり大声で笑っていたりするわけじゃないから周囲からはあまりわからないだろうけれど。
理由は単に戦闘をつらく苦しいものとばかり捉えるのが大変というのと……緊張である。
ドライはまさに戦闘を楽しんでいるが私はそこまではいけない。
そしてもともと戦闘が苦手ですぐに緊張してしまうのだ。
適度をこえた緊張は身体をガチガチに心をゴチゴチに固める。
はっきり言って何もできない。
ちゃんと脳から興奮物質を分泌して適度に楽しまないと戦闘なんてとてもじゃないができない。
不謹慎にならなきゃバトルもいいものだ。
「治療終わり!」
「おつかれさまです」
ゴウたちもこっちの戦闘が終わったのを見計らって戻ってきてくれた。
イロテナガたちは全員"無敵""ヒーリング"をかけておいた。
側で震えていた偉そうなイロテナガ含め。
「ふう、ふう、やっと、少し、落ちついた……お前たち、強い……けれど、誰も殺していない。なぜ?」
「彼らが起きるまで少し時間はあるでしょうし、経緯を説明します。今度こそ、聞いてください」
「う、ウンウン!」
ものすごい勢いで全身使って肯定している……
まだこっちが怖いのがメインだろう。
けれど"無敵"と"ヒーリング"合わせの効果かやっと話を聞いてくれるらしいから話しておこう。
少なくとも前よりは心近くで聞いてくれるはずだ。




