七百八十生目 石投
延焼しているギリギリのところまで切り離した!
しかし切り離せば当然足場は落下しだす。
すでに向こう側はだいぶ落下している。
「はあっ!」
まずはダカシが巨体を打ち鳴らして跳んだ!
私の背後に着地。そのまま急いで奥へと駆ける。
これで少しは橋の落下に余裕が出来る。
「はやく!」
「ま、まだ切れて無いところが!」
うわ本当だ!
イタ吉が向かった先に隠れていた接続部分が!
ゴウが手早く紐付き矢をつがえ落ちていく足場からこっちを狙う。
「まだ届く!」
きれいに矢は放たれ私の背後の方に刺さる。
ピンと張られ無事ゴウが支えられたようだ。
ダカシが追加で押さえこむことで安定。
一方イタ吉は最後の繋がり部分に私の水魔法をあえて浴びたあと突っ込む。
燃えているからだ。
斬るのは一瞬。
「らっ! うおっ!」
ヌマグローブ側に立って一撃で切り裂く!
これでなんとかなった……と思うのもつかの間。
イタ吉がバランスを崩した!
「イタ吉!」
「ぬわあああー!!」
落ちた!
イバラからトゲを引っ込めて落下地点に先回り!
間に合え!
「「ああああっ!!」」
イタ吉が腕を伸ばす!
私がイバラを伸ばす!
ギリギリとどい……た!
イタ吉が毒沼をカスる前に急いで引き上げ!
「うわおわあああっ!?」
なんとか遠心力に耐えてもらって……
こっちはこっちで持っていかれないように別のイバラをヌマグローブに巻きつける!
そのまま勢いよく揺れてイタ吉がこちらに大きく振れ……
「――ぁああああっしょーい!」
大きく跳んだ!
遥か遠くにクルクルと高く飛び……
そして着地!
イタ吉の後方で橋が大きく毒沼に着水する。
水のように激しい音だ。
もっとべっちゃりしているかと。
「よし、最後の!」
空魔法"ディメーションスラッシュ"!
光刃が橋を切り裂く!
空間ごと断裂! そして収縮。
橋が沈む。
あれほど丁寧に自然をそのまま練り合わせた生きた橋が。
鎮火はするが失ったものは大きい。
幸いヌマグローブたちはほとんど無事だ。
そこだけが救いか……
「むっ」
背後に殺気!
投げつけられた物をイバラで弾く。
この感触は小石か。
「なんだぁ? 誰だ!」
威勢よくイタ吉が啖呵を切る先はヌマグローブの森方面。
私達も向き直る。
森の中から植物ではない強い殺意……
その瞳が多数覗いていた。
「たくさんいるぞ! 敵か!?」
「いや、待って!」
ダカシが唸るが少し静止。
今みんな疲労と肉体の焦げにすす汚れとかなり心に余裕がない。
さらに追撃はやめてほしいが……
森の中から響く鳴き声は……知らない。
見たことのない魔物ということだ。
声からして猿系。
より強そうな1頭が森の影から出てきた。
"観察"!
[イロテナガ 木の上に住み非常に長い腕で移動する。足ははやく歩けないが掴む事で木の上ではとんでもないスピードで動き回れるのだ]
全身をまるで戦化粧で彩るようなカラフルな猿だ。
腕が身体の倍くらいありそう……
足が手のようになっているのが典型的な猿っぽい。
けれど彼らもこの猛毒な空気の中平然としているんだよなあ……
「キーッ!!」
ボス猿っぽいイロテナガが私達を指差し叫ぶ!
その途端多くの殺意の目から山程光のこもった石が投げられてきた!
全部投擲スキルのこもった攻撃だ!
「ヤバイ!」
「たぶん橋壊したと思われている!」
「逃げましょう、戦っても良いことがない」
「ぎゃー! 今身体中いてえのに!」
橋を壊したから怒っているのかどうかは正確にはわからないがとにかくめちゃくちゃ怒っているのは間違いない。
こっちは負傷と疲労4名で向こうは元気多数。
しかも橋を壊した事自体は嘘じゃないから困る!
走る走る!
イバラで弾くのは限度があるから道を西の森方面へ逃げつづける!
当然森沿いの道だからどんどんイロテナガが追加されていく!
あ。声がわかるようになったかな。
「殺せー!」
「橋を燃やして壊した!」
「あれ作るの俺こだわったんだぞ!」
やはり橋壊したの怒ってるー!
「やっぱり橋壊したの怒ってる!」
「なんとか誤解解けませんかね!?」
「話している場合じゃねぇー!!」
受信機持ちの味方たちも翻訳が出来たらしく罵倒を理解したらしい。
とにかく石が頭に襲いかかって来ながら走るしか無いのが困る!
いだだだ! 今頭に綺麗に入った!
「みなさん! 私達は別に橋を燃やしたわけじゃなく!」
「死ねーー!!」
「口を塞げ!!」
「だめだこれ!!」
ハチャメチャに石が飛んできた!
早く逃げないとだめだこれ!橋壊したの怒ってる!
早く逃げないとだめだこれ!