七百七十九生目 消防
カエリラスが放った炎!
ヌマグローブの大橋を焼き払う1撃に急いでヌマグローブの森まで引き返さねばならない。
もっと弱かったり範囲が狭ければ鎮火も考えるが鎮火を考えるが……
「ゲッ! いきなりだったせいで魔物たちが!」
「逃げ遅れ!? ……そうだ!」
さすがに彼らは巻き込まれただけだ。
木の上で不安そうに見ている魔物たちが巻き込まれない方法は……
あそこだ!
「みんな、橋の連結部を破壊しながら逃げよう!」
「なるほど、延焼を防ぐわけです、ね!」
"同調化"で全員に意識を共有。
燃え広がりそうな橋のヌマグローブ連結部分を先に破壊。
ヌマグローブまで燃え広がらないようにする。
最初の魔法火力はないから繋がりさえ断てば火炙り程度耐えるだろうし魔物たちが最悪避難する時間を稼げる。
とにかく今はこれに賭けるしかない。
ゴウが早速1矢放って根の繋がりを切り放った。
1つや2つでは当然無いためどんどんと切り落とす必要がある。
私もイバラで応戦だ!
「「逃げて!」」
「「危ない!」」
「「燃え移らないようにする!」」
ひたすらここらへんの魔物に通じるであろう覚えた言語で"サウンドウェーブ"をかき鳴らす。
いくつもの言語を同時処理しつつ発声するのはやはり難しい。
けれど今は昔よりだいぶマシだ。
(落とす位置はガンガン把握している、集中しろ!)
(むこうがわのまものにもつうじるように、おおごえで!)
幸いこの橋の位置は南の森にかなり寄ったところだった。
逆に言えば私達が逃げ切るまでの距離が長いのだが。
反対側はどうやっても落とせないため全焼する。
なんとか自力で逃げ切ってもらうしか無い。
すくなくともこちら側だけでも!
自分たちがやった火攻めをされるとは笑うこともできない。
"同調化"で言葉伝えずとも互いの狙う位置や見つけた連結ポイントが共有化され最短で切り離し作業が出来る。
空魔法"ディメーションスラッシュ"などで大胆に斬ったり……
イバラで丁寧に壊し払う。
「魔法の壁が消える!」
「急ごう!」
だんだんと意味を理解しだした木の上の魔物たちが協力をしてくれている!
呼びかけ続けたかいがあった。
枝や根を破壊しているみたいだ。
「ローズ!」
「あ、うん!」
イタ吉の意思が流れてきた。
まだ炎は森まで到達していない。
今なら炎との切り離しが間に合う。
こっちはみんなの協力でなんとかなりそうだから先周りして止める。
タイミングを考えねば橋の上に乗っている魔物たちとみんなが落下してしまうからその周りも含めてだ。
とにかく急ごう!
「うわっとっと!」
燃えていることと切り離していることが合わさって橋が不安定になってきた!
さすがに歩みを止めるほどではないが波をうまく予想して駆けねば。
……よし端が見えた!
そのまま走り抜けて!
炎の手前まで行き土魔法"アースレイン"!
土砂が炎たちに降り注ぐ!
手前の部分……一気に鎮火!
だけれども少し奥はもう橋の内側に延焼している。
下から酸素供給出来る以上下側を防ぐ手立てがないと。
"率いるもの"で水魔法を借りて放水。
幸い毒沼は水や火で反応するタイプではなかったはずだ。
とにかく向こう側の作業が終わるまで繰り返し鎮火し続ける。
それにしてもとにかく熱い!
集中していてさっきまではそんなに感じていなかった熱がかなり今キテいる。
地味ながら重要な作業を繰り返す今この熱が身に迫る危機。
別にこの身を焼いたりはしない距離まで離れているのに炎の熱は私の身体をあぶるのだ。
独特の荒々しい熱が突き刺さる。
目に厳しくイバラがしなびてしまう。
足裏から流れる汗。
舌を出してか身体を少しでも冷やし。
水を撒き。喉が渇く。
刺さる熱が体力を奪い。
気候は蒸し暑く逃げはなくて。
さらに炎は悪化していく。
少なくとも道は少しでも残さないとみんなが戻ってこれない!
それだけは最優先で確保するために水撒き水撒き!
イタ吉たちがきたら近くの枝や根も切り離さねば。
……。
……あっ!
向こうから飛び跳ねるようにきている!
ヌマグローブをあっちこっち切り離しているからだろう。
手前のヌマグローブに棲む魔物たちも察してさっきから切断作業はしているがそんなに強くないせいで遅れている。
近くにイタ吉たちが来たので再度"同調化"!
これまでの部分はかなりの破壊が出来たらしい。
こっちの状況も伝わっただろう。
「最後だ、やるぞ!」
「おう!」「ええ!」
イタ吉とダカシが空に舞いゴウが弓をつがえる。
光がまたたくとあっという間にのこりのつながりが断ち切れた!
だがそれは足場がほぼなくなるということで。




