七百七十三生目 歩道
暑いムシムシする毒沼の迷宮へとやってきた!
まるで逆の存在である白い雪を得にきたのだが……
実はその存在は既に見られている。
まず大前提としてこの毒沼の価値だ。
特産品そのものは多数あるがやはりこの迷宮は毒である。
猛毒は薬にもなるし化粧品にもなるため意外に使いみちは豊富だ。
だが……
毒としての価値はやはり何物にも代えがたい。
毒沼から多量の摂取し身を守ったり魔王軍と戦ったり……
ニンゲン同士で争ったり。
またその間も迷宮に棲む魔物たちが抵抗をしたようだが……
ニンゲンたちの採取は意外なカタチで止まった。
「そこの沼、抵抗のないニンゲン相手なら1滴100人を殺せますし、そうでなくとも腐食、酸化させ溶解し、しかも底なし沼になっています。できるだけ近寄らないようにしてください」
「うへぇ」「足場が狭いな……」
熱帯雨林をあれこれ見たり良さげなものを手癖で採取しつつ歩んでゆく。
こんな凶悪な毒すら無視されるようになったのは。
この毒すら弱いものになってしまったからだ。
毒とは……特にこの魔法と剣がある世界ではかなり研究と攻撃そして対策が豊富だ。
その結果ただ採ってくる毒はあまりに弱く実戦では防がれることが多々。
なので発展と飛躍を繰り返し扱いにくく取りにくいこの毒沼の毒は価値がなくなった。
さらに時代が流れ現代に近づくと平和な時も含めてこの沼地毒の利用は法的に禁じられた。
この毒を使った通り魔が起こったりしたそうだ。
当たり前だがえげつないことになる……
なので私達もここを出たら持ち出し検査を受けることになる。
細々と地元民が毒沼以外の必要品を取りにくるならともかくイチイチ大変な手間を踏んで外部から冒険者が来るかといえば……
そうしてこの毒沼は平穏を手に入れたのだ。
そして毒沼摂取が禁じられた理由。
もうひとつあるのだ。
なぜか異常に妨害され命の危険が多いということ。
理由はわからないが見えないところから蔦がとんできたりいきなり周囲の魔物が活性化したりと不可思議なほどに妨害されるようになったのだ。
金は命あってのものだねである。
安全のためにも禁じられた。
そうしてここからが大事だが。
毒沼を進み奥地へと行くと白い雪が見られることがあるそうだ。
ただし劇毒の。
その雪は詳細をまるで調べられていない。
なぜならその雪を見たものはすぐに引き返さないと死ぬと言われている。
毒の耐性を完備したはずの冒険者たちがだ。
法律で禁じられてもおらず異常に強い毒を求め何度も探索されたそうだが……
命からがら帰ってきた数少ない冒険者はみなこううわ言のように繰り返すそうだ。
『アレが来る、アレが来る!』
と。
まともな思考能力がなくなり異常に白い物を恐怖し憔悴して長くない間に死ぬ。
その様子はまるで呪い殺されたかのようだと。
法で禁ずる前にまともなニンゲンなら近づかなくなったからそのままなのだ。
ぶっちゃけ事前情報だけですでに関わりたくない……
ただその異常性と言いやはり怪しいのはここというのも事実。
嫌でも探索の必要があった。
歩いていて気づいたことがある。
なんだかやたらと地面がしっかりした場所がある。
具体的に言うと獣道以上舗道道路以下。
ニンゲンたちが村で車輪が跳ねないようにとてもしっかり踏み固めたかのように安全なルートが続いてる。
一瞬地元のニンゲンが作ったのかと思ったが違う。
においを嗅げばわかる。
「これ……魔物が作った道だ。たくさん歩いて作られている」
「これがですか? それにしてはしっかりしすぎていますが……」
「うん。けれど魔物たちだけがわざわざ踏み固めているのがにおいでわかるよ。コレは魔物たちがわざわざ作っているんだ」
「なんてそんな面倒なことをしてんだ…?」
ゴウやイタ吉の疑問もわかる。
何というか不自然なような。
「うおっ!? アレ見てみろ!」
「えっ、毒沼の上に道!?」
イタ吉が指したのは毒沼。
マングローブ林の上にわざわざ枝を折り曲げてまで道が作られていた。
つまりは橋!
ちなみにヌマグローブと言うらしく葉っぱがきついピンクでなんとなく恐ろしい。
「お、おお、これ俺が乗ってもびくともしないぞ……」
ダカシが絡み合った枝を渡りやすいように頑丈な橋のごとく作ってある場所に足を踏み入れる。
この天然なのにあまりに足を踏み入れやすいものを見て確信する。
コレはニンゲンの芸当ではない!
「魔物……植物を操る類のものが作ったのかな。ニンゲンが作るなら、切り出すもんね」
「ですね。今の道といい、この毒沼渡りの道といい、魔物が本当に……一体何が行われているのか」
文化圏の何かか……
それとも神技か。
白い雪の情報に目を奪われていたがこっちもかなり謎が多いじゃないか!




