七百七十一生目 追掛
こんばんは私です。
勇者の剣素材にたいしてついに情報が入ってきた。
螺旋軍に関する話のあとさらに勇者グレンくん1行が調べてソレらしき情報を掴んだらしい。
毒沼の白雪。
それだと特定するのは灯台下暗し。
なんと帝国の冒険者ギルドが情報を知っていたそうだ。
帝国の冒険者ギルドははっきり言ってどこも廃れている。
衛兵があまり行き届かない辺境でギリギリ生き延びているような状況で……
しかもソレは自警とか日々の暮らしとかそちらのほうに変質しているものなのだが。
それでもやはり迷宮に関してはしっかりと情報を得ているようだった。
各地の冒険者情報を伝ってグレン君が発見したその情報。
毒沼の迷宮。
とある辺境にあるその迷宮にとある伝説がある。
それが高い確率で求めるものだろうから探しに行くのだ。
今夜は我が家で支度中。
前回"ストレージ"内のものをアレコレ使用したあげく今度は毒沼とどう見ても危険だ。
メンバー編成も済んでいるが現地でどう動くか今のうちにある程度組んでおかないと……
『またどこかへ行くのか』
「わっ!?」
びっくりした!
念話発せられる方を見るとナブシウだ。
分神はこうやっていきなり現れるので心臓に悪い。
「よ、よくわかったね」
『いや、さっきここへと来たら旅支度しているようだったからな。忙しいものだ。もっと我が神のように大きく構えておくことも時には重要だぞ』
「うん、まあ……参考にするね」
さすがに長年眠り続けるのは真似できないかな……
それはともかく何しに来たんだろう。
『して、お前はどこへ行くんだ?』
「毒沼の迷宮というところ。白い雪のようなものが積もるんだってさ」
『む……』
ナブシウの顔が曇る。
何か知っている……?
「どうしたの?」
『少し、思い出したことがあってな。昔、我が神は私に対してひとつ例え話をしてくださったことがある。私にあらゆる攻撃は通らない。それでも、我が神に賜ったこの肉体を打ち通す力もあるとな。それの例えとして、毒沼の小さき神を指したことがある。同じ場所かどうかは知らないが、その事を思い出してな……』
「なるほど……ナブシウは自分よりもその毒沼の小さな神様を褒めているようで嫌だったと」
『そうではない! ただ……我が神から賜った肉体を凌駕するなど、考えたくなかっただけだ!』
ナブシウは焦って否定したあたりなんとなくその節はありそうだ。
ただ……毒沼の神かあ。
もしいるとしたら……そして今回行くところがそうならば……
きっとそれは勇者の剣素材に関するものへとつながる。
「うんうん、話ありがとう、ナブシウ。ところで何をしにきたの」
『それは……』
「どこー!」
「ナブシウちゃーん!!」
「色々撫でさせてー!!」
『ひいっ!!』
おや。外から複数の足音と共にナブシウを呼ぶ声が。
基本的にいわゆる黄色い声な気がする。
ただし種族が入り混じっているせいで実際は音程としては低かったりもする。
「彼女らは……?」
『わ、わからん! 私をひたすら追いかけ回すのだ! 宿にいても気が休まらなくて……!』
うーむ。
もしやおっかけか。
神様だしそれ的に言えば信者。
まさかのナブシウ人気。
ただまあナブシウは自身が誇るように全身美しい宝石だしわからんでもない……のかな。
「うーん……分神を一旦解いたら良いのでは?」
『あっ、そ、それだ! でかした!』
ナブシウの姿が消える。
……慌てすぎてそんなことも気づかなかったのか。
なんというか。強く生きてほしい。
こんにちは私です。
準備して移動してを繰り返してとある日のお昼に目的地付近へと到着。
今回のメンバーは……
「では、この階段を降りた先です。十分天然の罠に気を付けてください」
ニンゲンからはゴウ。
鼻から口にかけて特殊なスカーフをまいた。
毒の無効化ができるのだとか。
「ここからか……頼んだぞ、悪魔」
ダカシも参加。
黒いたてがみがない巨大な姿のライオン元ニンゲン。
悪魔と協力しあうことで毒を越えるらしい。
「よし、いっちょ行くか!」
尾に巨大な刃を持つイタチの魔物であるイタ吉。
肉体の一部が鋼の影響で全身に鋼の特性が現れ毒に対してはひときわ強いらしい。
ぜんっぜん知らなかった。
そして私は……"進化"!
『ロゼハリー』の姿だ!
4足かつイバラ持ちで尾もイバラ。
ひと回り以上に大きくなり身体がしっかりする姿だ。
そして赤い花のようなトゲに代表される毒持ち。
毒への耐性も『グラハリー』より遥かに高まる。
それにしてもこの姿だとなんだか植物との距離が近く感じる。
物理的な物ではなく心理的なもので……
イバラの影響かな。




