七百五十九生目 決着
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ナブシウはもう立ち上がる余力がないのに気力だけで動いている。
わずかでも火を消そうと腕を炎で押し当てていた。
鉱物が熱せられる反応は見てくれは地味だが……ナブシウは腕の中身はきっとひどいことになっているだろう。
そんなナブシウがついに私と対等な瞳を向けた。
神というバックボーンが崩れ去った今初めての対話だ。
「キミは、キミという古代神の大事な存在なのに……そのことを忘れていやしないかい」
「おごるな、盗掘者! お前たちの言うことなど!!」
「しかもその神の財産に関することを、おごって勝敗の賭け品目にしてしまっていた。キミはだから遥かに劣った相手に負けたんだ」
『何、何を言って……我が神……我が神は……! ああ……!!』
初めて……そうナブシウが初めて見せた震え。
念話の声がしっかりと怯えていて……
その怯えているものは当然私に対してではない。
「改めていうけど、キミは……その古代神じゃない。キミはキミなんだ」
『なっ!? いや、それは……あれは……! 私は、う……うぐ……神……我が神……! 申し訳、ございません……!!』
ナブシウの家そのものや中の充実具合。
それにおそらく気候も考えるとナブシウ用。
この世界はナブシウのためにあるといって過言ではない。
もっとも神の大事な資産の1つがナブシウなのだ。
ナブシウは愛されていた。
そして長年の時がそうさせたのかはわからないが……彼はいつしかそんな自分を見失っていたのだろう。
彼はナブシウ。
眠る古代神ではない。
彼自身が自分を見つめ直すのに1度死ぬのもきっと良いのだろう。
不老不死だし。
だがまあソレはともかくとしてナブシウの念話がついに途絶えた。
おそらく生命力もゼロ。
こんなところでお見通しくんは出せないのでそこはわからないが。
見届けた。
私も火の後始末をしてから出よう。
……ちょっと待った。
ナブシウの身体……さすがに本当に焼いてしまうのはこの後ナブシウと出会うとしたら色々気まずくなる。
さっきも言ったがナブシウは神に愛され全身のいたるところにある宝石は輝いている。
あまりにもこれそのものが希少価値の塊でありそもそもこのあと会う相手の身体。
生死の確認をして……
空魔法"ストレージ"!
この魔法は生きていると弾くとされているけれど判定がちょっと曖昧。
そもそも死んでいるってどこからを示すのかという話になるわけで。
摘んだ花はしまえたが土ごと花を入れようとすると否定されたりする。
ただ生き物は死後でも蘇生手術で、蘇ることもままあるわけで……
ちなみにいじれば生者でも入れられるが……
あんまり生きて暴れるような何かを入れたくはないかな……
亜空間どうなっているかよくわからないし。
取り敢えず"ストレージ"の中はたっくさん出してしまったためわりとスッカラカン。
ナブシウを亜空間への穴に押し込むとうまく入ってくれた。
一時的にここへ移動だ。
そして……あとは消化作業である。
水魔法やら氷魔法やらを"率いる者"でスキル借りして対処しよう。
アインスもよろしく!
(もうやってる〜、ええと……)
「「イエーイ!!」」
作戦大成功! ということで全員でハイタッチ!
私は尾でハイタッチした。
こうして改めて"鷹目"で自分を見てみたら鎧がボロボロの炭だらけだ。
ナブシウの家の前。
既に嵐には凶悪なダイヤモンドが含まれず普通に嵐としてダイヤモンドが飛んでくる。
……それだけでもだいぶおかしいのだが。
だが光景は細かいダイヤモンドが美しくジャグナーたちでも耐えるのは楽な方。
上のジュエルストームなども含め攻撃性がだいぶ薄れたからだ。
嵐とはいえ自然に近くなり吹く威力の上下も大きくなったため身体が楽。
『では。入ろう』
テテフフに促されるまま全員がナブシウの豪邸へと入る。
中は相変わらず愛に溢れていた。
なんだか申し訳ないし安全なので"進化"を解く。
ふうぅ……
ちょっとクラクラと来たがまだ終わっていないから深呼吸して体調を整える。
奥へと歩みを進めればナブシウの寝室にたどり着く。
そこは他の部屋に比べてずいぶんこぢんまりとしている。
丸まって眠れるベッドにナブシウの背でまあまあ狭い天井。
ちょうど小さい状態のナブシウが回転出来るくらいの広さのみしかないという部屋で扉付き。
今は誰もいないからひらっきぱなしだ。
『多分。ここにくる』
「ナブシウが?」
「じゃ、待つしか……お?」
ジャグナーが何か気づいた。
私もよく見ているとベッドに輝きが集っていることがわかった。
そうして。
やがて光が小さい状態のナブシウとなる。
丸まって眠っているようだ。
光が収まるとさっきまでのナブシウにほんの少しだけ透過がかったような見た目。
その金色の瞼を重たそうにわずかに開いて細目をこちらに向けてきた。