七百五十七生目 炎上
『こちらローズ、ピラミッド落としによる無事閉じ込めに成功。作戦の最終段階に突入するよ』
『おう、こちら本部! こっちは全員無事だ。そこまでいけば勝ったもどうぜん。ぶちかませ!』
ジャグナーと"以心伝心"の念話で会話をしつつ。
まさに驚愕と言った表情で固まるナブシウを見上げる。
「ねえ、キミはこの建物を傷つけることは、やりたくないんだよね? その槍や杖は効果範囲が長すぎるから振れないはず。降参をしてよ」
『…………な』
「な?」
ブルブルガタガタとナブシウの身体が震えだす。
あ。情報処理が追いついてきたのかな。
『な……な……なんだこれはああああああああっ!!!』
「キミが意図的にピラミッドの真下にい続けていることはわかったからね。確か私達が眠ってるときも延々と垂れ流していた話に、そのようなことがあったし」
アレはなかなかクるものがあったが有益情報もなくはなかった。
神に捧げる戦いだから神のために神の寝床の真下戦うとか。
神の寝床は傷つけるわけにはいかないとか。
『こ……こんな! ゆ、ぬるさ、ウグガゴギグガ……!!』
「念話がめちゃくちゃになってて何を言っているかわからない……」
思わず自らの槍を投げ捨て自分で自分の首を締めている。
ただまったくしまってないが。
『…………ええい! 賊にここまでここまでの狼藉を許すとは、私は私が許せん! がっ、それ以上にお前らは、絶対に許さん!! 降伏ぅ? 誰がするか!! 私は小さくなってからここから歩いて出れば、まだ戦えるからな!!』
「そう……なら……」
切り出さなくてはならない。
あのことを。
「それならば……これは脅迫なんだけれど、降参しなければキミを殺すことになる。それはやりたくないんだけど、どう?」
『何を言う、そんな傷しか無いような身体で、私に勝つだと? 舐めるな!』
槍たちを手放し杖を光を使わず単純に振る。
おっと!
周りを気にするせいで遅さに拍車がかかっている攻撃に当たる気はしない。
うまくスルリと下をくぐって避ける。
ナブシウが苦い顔をした。
『ちぃっ! ちょこまかと!』
「では、どうしても降参いただけないと?」
『当たり前だ! 私は、我が神の誇り高き守り手! どれだけ卑劣な手に汚されようと、屈するつもりなど毛頭ない!!』
本当にこれはやりたくないんだけど!
仕方ない……
私はナブシウの動きに警戒しつつとある隅を見つめる。
「だったら……これが、ゼロエネミーのカタキだ!」
火魔法"フレイムボール"!
小さな赤い火種は即放たれ隅にあった何かへと地味な着弾をする。
……そこまでは。
一瞬だった。
業火が導かれるように空間の壁面一帯へとあちこち広がり走っていく。
中央にある謎の光源だけではなくなったおかげでピラミッド内がついに明るく照らされた。
おそらくナブシウならすぐに気付けたはずだ。
なのにあんなことを言ったのは相当血が登っていたのか……
今ナブシウの顔色が見えたのならまさに真っ青だろう。
『あ……? こ、これは!? これはぁ!?!?』
辺り一面に油や木片などの資材。
さらには炎に反応して炎を撒き散らしていく設置魔力罠たち。
計算してしっかり火がこの広間全面に広がって燃えつくしダイヤモンドすらも燃やすようにした。
ダイヤモンドは他の宝石と違って炭素だ。
つまり火力が足りていれば燃える。
『う、うおおおおっ! 神の、神の寝床があああっ!!』
あまりに遅い歩み。
必死に足を動かし更には這って腕を使ってでも炎へと向かっていく。
ナブシウ自身の命を削るとしても。
『やめろ!! 盗掘者ども!!』「あああああっ!!」
悲鳴とも怒声ともつかないナブシウの生の叫び声。
炎に向かって結界をはって炎を押し込め消し始めた!
あれは放置しておくとまずいか。
それにいくつもの設置してあるまだ引火していないものもある。
それらも破壊されるわけには。
「させない!」
『お前えええぇぇ!! 離れろおぉぉぉ!! 消せえぇぇ!!』
泣くように頼むようにだがそれを上回る殺意が叩きつけられるかのような念話は強すぎて酔いそうだ。
ナブシウのふさふさなしっぽに絡みつく。
他の部位だとろくに掴むこともできないがここなら!
そして"無敵"!
私だけに火魔法"クールダウン"でこの中がどんどん暑くなっても平気な様にしておく。
空気供給魔法はこの戦いの直前にやっておいた。
徐々に大きな燃料に引火をしていく。
そろそろダイヤモンドも影響を受けだすだろう。
ここからが私たちとナブシウの最終局面だ!
『神よ! おお、神よぉ!!』
「この力……キミの心まで届け!」
ナブシウが私に気をとられ炎がどんどん対処不可能なほどに回っていっている。
すんごい身体やしっぽを振り回すものの遅いからだいぶ楽だ。
この戦いの後……こんなことをした後だからこそ"無敵"でナブシウとも仲良くなれるきっかけを作る……!