七百五十五生目 傷身
天のピラミッドから飛び降りて自由落下。
まさに天空からの落下。
ギリギリでなんとか光魔法"フォールイース"を発動!
私の周りにやんわりとした光が広がり地面スレスレで急減速。
一度軽く浮いてからそのまま着地した。
1日ぶりの……はてなき黄金の砂漠だ。
『待ちくたびれたぞ……ようやく観念したか』
ナブシウは再び4つ地面につけて2つ上半身の手としていた。
一応これがフリーの姿らしい。
そして私を捉えたことで戦闘モードに移る。
まず直立をして自由になった4つの腕。
上2本は背中のダイヤモンドの槍を引き抜き。
下2本は角を引き抜いて杖とした。
『利き腕である最後の手を使わされるとはな。無駄に長く生きているのだけは認めてやろう。だが、我が神から授かったこの杖は断絶の概念を秘めている! 』
「概念……! だからあの時……」
『相手を斬る。盗掘者が神使であろうとその力が削れきるまで斬れば私の勝ちだ!』
そして杖を前とは違って下右手でのみ構える。
背中から3本目の下左手で構え。
これでついに……
『古式猛牙流槍術……完成の肆式』
3つの槍と1つの杖を構えたその姿。
完成された型は異様なほどに圧力を放っていた。
もはや立っているだけで吹き飛ばされそうだ!
『我が神の宝具ヴァス・カルンと3つの槍により生み出される奥義で……お前は死ね』
「それはどうかなッ!」
『何っ!?』
ログを通し文字でたぬ吉に合図を出す!
"以心伝心"で一部感覚共有!
同時に目の前のナブシウを見据える。
こういう処理が行えるようになったのも影との戦いを乗り越えたからこそ。
脳内マルチタスク3つくらいなら同時進行は余裕がある。
「わっかりました、やりまーす!」
たぬ吉の視点だから自分から声が響いているような感覚。
近くにテテフフの姿も見える。
『ナブシウの慌てる姿。ちゃんと見てきて』
テテフフの無機質に軽く笑う声が脳内に響く。
なんだかゾクッとする……
今回テテフフは危険なためたぬ吉の草ゴーレム内だ。
もうたぬ吉もゴーレム内らしく目から見る視界とは別の視界が同時に視える。
これがたぬ吉から見たゴーレム視点か。
視界が多数ある状況だからゴチャゴチャにならないようにしないと。
『お前が何を企もうと我が神の力で潰し斬ってくれる! 古式猛牙流槍術肆式、奥義!』
ナブシウが今までの中で1番長いタメ。
槍先たちが震えるほど力をこめゆっくりと大きく振りかぶる。
防御系の魔法はしておいたからあとは私の回避技術だ……
槍たちが一斉に輝きだし光が長く伸びていく。
利き手に握られた杖は頭部に輝きをましていって今にも爆発しそうだ。
そして限界まで張り詰めた弓の弦みたいに引き絞られたあと……
『大嵐牙!!』
杖の光が拡散したあとにまず――
遥か遠くナブシウの背後数キロメートルにある砂山が切り吹き飛ばされた。
なっ……!
そのまま光が刃のようにナブシウを中心に渦を巻き始める。
当然私も範囲内!
というより数キロ範囲内だから避けようがない!
とにかく砂山とジャンプを駆使して刃を上下にかわし……
そうだまだ3つの槍が!
唸るように猛るかの如く牙が重く広く連撃で振り払われる!
「うわあああっ!!」
『はあああぁっ!!』
光の刃が竜巻のようにナブシウ中心に激しく回転!
そしてその間を縫うようにダイヤモンドの槍たちが光で切り刻んでくる!
オマケに後スキの多さを埋めるかのごとくダイヤモンドの砲撃が飛んでくる!
もはや鎧にあちこち当たりまくって痛いのかどうかすらよくわからない!
大丈夫身体は動く!
ほかは"防御"やら"すり抜け回避"やらしつつ……絶対杖の光の『断絶』だけは食らってはいけない!
こっちは必死に避けつづけるとして……
一方たぬ吉は。
「さあ! 今こそ植物の力を見せる時です! みんな!」
たぬ吉が地面に草ゴーレムの拳を叩きつけた!
私の方もナブシウの槍を鎧の上から叩きつけられる。
たぬ吉の拳付近からあの双葉が大量に出始め……
それがすぐにジュエルストームに引き裂かれようとどんどん広がり水晶の木や透明サンゴの樹さらには潜り草たちまで乱雑にしかし連続して生え続ける。
傷つき破れ穴が開こうとそれすら飲み込む勢いで次が生える。
「カハッ!」
私の方は鎧に穴があいて即埋め直すもののスキにダイヤモンドの砲撃を撃ち込まれる。
だが直ぐに立ち上がり本命の杖による『断絶概念』の光を跳んで避ける。
鎧の中も外も傷だらけでもそれを超過する回復で耐える!




