七百五十一生目 威圧
ナブシウを閉じ込めた炉の中から光が!
彼の足輪が外れたことに関係が!?
そうこう考えている間に――
「わあああっ!?」
炉が爆発した!?
もちろん私の魔法効果ではない!
だとしたらナブシウ!
その予想は当たりだとすぐに気づいた。
光が収まったところに存在したもの。
それはどこか面影のある巨大な化け物だった。
ケンハリマの私よりもさらに小さかったそのナブシウはいなくなり。
かわりにグラハリー時ですら見上げるような巨大な犬のケンタウロス。
尾はさらに巨大に毛量が増しダイヤモンドたちも大きく。
背にはトゲのようなダイヤモンドで出来た槍がたくさん生えている。
そしてケンタウロス。
つまり上半身がさらに増えてニンゲンのような向きになりつつも下半身は獣のまま。
いや……あれはもっと変じゃないか?
何もかもが異常過ぎて何が異常かを指摘できない。
足が4つ手が2つ。
スフィンクスの謎掛けもびっくりなケンタウロス姿。
足かせはやはり外れていて首輪だけが残る拘束として目立つ。
細い目がついには見開かれ細くきれた目が並ぶ。
4つ……5つ? いや額のは模様か。
とにもかくにも全体からの印象がとんでもなくおぞましいものへと化けた。
今私は大鎧を着てずいぶんかさ増ししているからやや今のナブシウサイズとも並べるが……
それでも相手の方が大きい。
とんでもない威圧感だ。
『ここに、我が神へ誓う聖戦を宣言する!!』
光が静かに周囲からナブシウへ集い一瞬輝く。
何が変わったのかはパッと見わからない。
ただ前と比べてより威圧が強くなった……
まさに強者の気配。
変身しただけで既におぞましいものを見てしまった気分なのに!
"影の瞼"がおりるほどではないが視界をこえて脳に直接訴えかけるような気味の悪さ。
姿そのものが気持ち悪いわけではないのにまさに対峙してはいけない何からしい。
危険の塊……
『盗掘者……お前は私にここまでの力を引き出したことを悔いたまま死ぬこととなるだろう』
『おや。全力には。ならないんだね』
『叔母上! あの力は上の我が神の偉大なる寝床を破壊してしまう! そこまではしない!』
うえっ!? これでもまだ中間形態!?
ただどうやら上の神様の寝床を破壊して……
寝床? 上?
「えっ、あれって……!?」
『はは、今更気づいたか!! 天にあるものこそ我が神の寝床! 黄金と金剛の聖なる三角! とは言ってもあれは象徴のようなもの。我々のような低次元な肉体などなくこの世界そのものを枕にして寝ておられる。だが! ソレとは別にあれは我が神のものだ! 盗掘者以上に守り手の私が傷をつけるなどありえん!!』
「な、なるほど……?」
やはりあればピラミッド……!
ということはここは……宝石砂漠と別世界に見せかけて同じ世界!
ここはただっぴろすぎる地下空間なのか!?
あんまりにも作る規模が違いすぎてめまいがする。
まあ今はともかく戦いに身を構えないと。
『我が神は、仰っしゃられた。愛しきナブシウよ、我が代わりにこの地を見守って欲しいと。それから私は戦いの日々に身を投じた。ある日は毛の少ない猿もどきが下賤な鉄の馬にまたがり、大声と騒音を撒き散らしながら強奪。ある時はよくわからん身分を名乗る高慢ちきが部下をはびこらせ。そしてまたある時は我が神に畏れ多くも戦いを挑もうとする神を名乗る者もいた』
「そ、それが一体……?」
ちょっと今かなり気になるワードがたくさんあったけれど。
この世界の過去ってどうなっているの?
テテフフがここを封印するまでに至るまでどんなことが……?
『だが! 私はその全てに打ち勝ってきた! 叔母上が私の方針に反して入口を封印するまで全てだ!』
『ナブシウは。余りあるこの世界のものを少し持っていっただけで。みんな殺した。正直古代神の方針ともだいぶ違う』
「それは……良くないのでは?」
『何を言う! 我が神は私に! 任されたのだ!! 完璧にやり通さずして何が守り手か!』
番犬としてもなんとなくすごく迷惑な気がしてきた。
ナブシウは背中から1つダイヤモンドの槍を引き抜いて……
1本を右手に構えた。
『盗掘者、お前はこれまでも、そしてこれからも特別な敵ではない。私がこの姿を見せたのも初ではないとも。だが例外なくこの姿と対峙したものは消してきた! お前もそうなるのだ!!』
「ぐっ……すごいプレッシャー!」
槍を構えた事で凶悪な気配が一気に増した。
先程の宣言はきっとこの槍の能力を高めるもの。
小さかった時は槍がないから使う必要がなかったのだろう。
『我が神から授かった神業……古式猛牙流槍術、見せてやろう。いざ!!』
第2ラウンド開始だ!




