七百四十九生目 仇討
「よくもゼロエネミーを! もう許さないよ!」
剣ゼロエネミーは相手の最大砲撃を大盾化して防いださいに破壊されてしまった。
付き合いが長く生死をともにし今も私を守る大盾として砕けた。
修理は可能だと信じたい。
言葉は自然に口からついて出た。
私は自分が思っている以上に壊してしまったことを悔やんでいるらしい。
けれど今はそれを燃料に変えてナブシウに向き直るしかない。
嵐で視界不良の向こう側。
"見透す眼"で透視し"鷹目"で遠隔をよく見る。
それで初めてナブシウの姿を捉えれた。
『ハァ……ハァ……侵入者め……まだ生きていたか! だが、我が神に賜った力の方が上のようだな! 賊の防壁……確かに打ち破ったり! 無名の侵入者にしては、ずいぶんと手こずらせたな…………1撃を受けその命あったこと、一族永久の宝として、誇るが良い』
ナブシウまでの直線は全て砲撃でかき消され地面はえぐれる。
そして肝心のナブシウがいた場所は大きく膨れるようにえぐれていた。
そのまま背後へと何かが……ナブシウが足をつきながら押しこまれた跡。
あの砲撃……本来はすごい反動があるのか。
あまりに重く頑丈すぎたせいで今までナブシウは無反動のように見えていただけで。
それを今回ありったけためて撃ち込んだからナブシウが遠くまで押し込まれたのだ。
傷はないが流石に疲労したらしく肩で息をしている……
あと別にこのことは宝にしたりはしない。
『さらに、我が神の黄金を……盗掘したな! 盗掘者め、お前だけは生きて返しはしない!! 我が神の名誉にかけて!!』
「散々その黄金を吹き飛ばしておいて、よく言うよ!」
『黙れ下女!!』
怒りの念話は飛んでくるが砲撃は飛んで来ない。
そのかわりダイヤモンドの小さな竜巻が近づいてくる。
もう防ぎ方は無いから素直に駆けるしかない!
それとは別にダイヤモンドストームは相変わらず吹き荒れる。
大盾の傘がなくなってイテテテテ!
"ヒーリング"! でも"ヒーリング"を使うと他の魔法が出せない!
"ヒーリング"は性質上唱え続けると治り続ける。
それか変質させて1回で大きめに生命力を癒やす。
どちらにせよ唱えるということが大事。
剣ゼロエネミーをもつ空魔法"フィクゼイジョン"なんかは唱えたあとしばらくは効果を意識的に消すまで発生させられるから唱えた跡なら併用は可能なんだけれど……
後は火魔法の継続回復は手放しでしばらく治してくれる。
[ホットスプリングキュア 対象の生命力をある程度の時間治し続ける]
これがあるからダイヤモンドストームの中でもあっという間に力尽きずに済んでいる……
あとついでになんとなくポカポカする効果がつく。
戦闘中は良し悪しだが。
向こうが疲れている今攻め時だからそうなりそうな組み合わせを考えねば!
ええと……
とにかく足は止めないで竜巻からは逃げてナブシウの様子は窺いつつ距離は維持して……
やはりダイヤモンドの小さな竜巻は行動が制限される。
いきなり目の前に現れたり事前に漂っていたり選択肢が絞られるのだ。
今もできる限りナブシウと近距離に来ることを迫られている。
どれだけ砂山を駆使してかいくぐるかが腕の見せどころ。
(うーん、たんにまほうをくみあわせてもダメだから……すこしかえたりしてー……)
(だいたいどれで行くかは決まったがちゃんと決まるかの調整が難しいな。できる限り悟られたくない)
幸いまだダイヤモンド砲撃はしてこない。
ナブシウは肩で息をしてこちらの様子を窺ったり罵声を飛ばすのみだ。
あれで近づいて殴り飛ばせればどれだけ楽か。
『そこを動くな! 我が神に変わって、貴様を風に乗る砂にしてやる!』
こんなところで砂に還るつもりはない!
竜巻がいろんな方位からやってくる!
直線じゃなくナブシウを中心とした円運動か!
右向きと左向き。
合わさって目の前の竜巻たちが隙間を埋めようとする。
今だ大きく駆けジャンプ!
私の重量級全身鎧ごと空を舞う。
竜巻の間に飛び込み耳のそばで轟音が鳴り響く。
すり抜けようとする横腹にダイヤモンドが擦れ光により火花が散った。
……着地!
こういう時後ろ足よりさらに背後のしっぽには気をつけておく。
問題なく尾の安全もしっかり確保して駆けた。
(良し!)
(アレンジできたー!)
これならいけそう!
ここまで凶悪なのらなかなか普段やらないから考えるのに時間がかかった。
燃えるごみ焼却処分での魔法のやり方から構想をなんとか得れた。
ズザリとブレーキをかけナブシウへと向き合う。
かける言葉はひとつ!
「今度こそ倒す!!」