七百四十七生目 灼熱
剣ゼロエネミーを大盾にしてダイヤモンドストームを防ぐ!
ただこれだけだと攻め手はないし……
あのダイヤモンドを砲撃してくる攻撃を防ぐには心もとない。
とにかく立ち回りは遮蔽物から出ないようにしなくては。
それでも遮蔽物貫通して撃ち抜く可能性からして足を止めるわけにも行かない。
とにかく今度は魔法を唱える!
『逃げ回るだけか?』
「挑発には乗らないよ!」
油断するとすぐそばにドゴン! とあたりが吹き飛ぶような砲丸が打ち込まれる。
圧倒的な力だ……
まさに神の力。
だけれども無敵ではない!
確かさっき熱さに弱いと言いかけていた。
魔法は効きにくいらしいが……全力を込めて!
でもこの『グラハリー』の姿だと時間がかかるな!
『ホリハリー』のように3つ同時進行ができないとどうしてもペースが落ちる。
ないものねだりはやっても仕方ない。
頭の前に砂山を突っ切ってダイヤモンドが飛び出てきた!
慌てて首を引っ込め直ぐに足の駆ける向きを変える。
そのまま足は止めないように立体的に動いて次弾に備える置き回避。
飛んできた! ちょうど私がさっきまでいたところへ飛んでいった。
"見透す眼"で砂山越しに見ているが本当に一瞬で作り出して放ってくるから危険。
さっきのは誘導弾で今のが本命弾。
ブレーキをかけていたら位置的にクリーンヒットするハメになるところだ。
どちらにせよ当たれば私の大鎧を砕く威力。
死にかねない!
当然だが私本体の硬さは鎧に劣るから貫かれたらひどいことになる!
砂山から登ったり降りたりしてフェイントをかける。
そのたびに素早い砲撃が飛んでくるのでシャレにならない……
射撃と違って着弾したところが地面でも結構痛い衝撃が来るのだ。
よし。
準備が出来た。
火魔法!
[レイズフレイム 灼熱の光線を放つ。任意のタイミングで爆発させられる]
スキルレベル10で覚えたうちのひとつ!
まさに最高威力を誇るが燃費は悪いようなのと他の接近攻撃との相性が悪い!
燃費に関しては"無尽蔵の活力"のおかげであまり気にならない。
発射位置を私の頭上へ大きめにずらして……
わっ! 魔法光に対して砲撃が飛んできた!
"レイズフレイム"を射つ発射口だが射つ前は当たることはないから安全だけれど。
『ちぃっ、デコイか?』
そうではないんだけどね!
ということで発射!
光線が放たれ灼熱が空気ごとナブシウを焼く!
『どうした! その程度か!』
ナブシウの前で熱線が何かに遮られている!
薄い膜のような光……
魔法を防ぐ結界だ!
あれに防がれてしまっている……
もうひと押し!
「せいやあっ!」
光線着弾部が閃光きらめいて――
爆炎!!
光線が止むのと同時に大量の爆発が炎と共に舞い上がる!
まさに爆弾でも落とされたかのような火炎と衝撃。
あまりの力にダイヤモンドストームが押された。
吹き止むわけではないけれど空気が粒子によって円に形つくる。
炎と煙がまだ立ち込めている……
ナブシウは足が遅すぎるから直撃した感触はあった。
どうだ!?
『それが……全力か?』
「なっ!? まさか……傷ひとつついていない!」
炎が渦巻くなか悠々と歩いて出てきたのはナブシウ。
聞いていた話と違う!
また結晶が飛んできたので慌てて回避。
「炎に弱いんじゃ!?」
『ふむ……まあ確かに、侵入者の全力は私の結界を上回ったようだが……それだけだな。神に賜ったこの身体! この身体に傷なぞ通らんわ!』
ま……まずい!
ダメージを与える手がない!?
『落ち着いて』
ささやくような念話。
おそらく私にしか聞こえていないような……
その声はテテフフのものだ!
『よく見て。ただしっかりと見て考えて』
テテフフはそれだけ言うと黙ってしまった。
見て……? "鷹目"や"見透す眼"で見てもなんら変なところはない。
相変わらずの鈍足で鎖を鳴らしながら必死に動いてもゆっくりなナブシウがいるだけで。
……?
そういえばなぜ彼は炎から出てきたのだ?
…………光神術"インファレッド"。
赤外線視界確保……あれっ?
ナブシウが歩む方向。
常に……熱が少ない方向に歩いている?
ううん……まさか……まさかとは思うが。
「熱いのが……ダメ?」
『さあ、出てこい侵入者! 風穴をあけてやる!!』
私の小声は嵐に乗って消える。
もし私の想像通りならば。
つまり……要塞に火炎瓶を投げ込んだところで岩壁に傷もつけられない。
だがもし周囲をごうごうと燃える炎で包み気温をあげ続けたなら?
確かに岩壁は傷が入らないかもしれない。
でも中の砲手たちは?
それが個人で行えるとしたら……
もしかしたらやれるかもしれない。




