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七十生目 緑竜

「魔法陣を教えて欲しい?」


 レヴァナント(ユウレン)に私が頼み事をしていた。

 彼女も慣れたもので針のある部分を避けてハックを撫でている。


 何回も戦って分かったのはニンゲンたちはスキル外でも、道具を駆使し色々やれるようだ。

 彼女も強力な防御結界を作っていたし……


「いい加減スキル以外での魔法の使い方を覚えたいなと思って」

「まあ良いけれど……数学はできるのかしら?」

「う、うーん、まあ少しならば……」

「ならそこからね、数学と魔法技術学がなければ無理だもの」


 まほうぎじゅつがくなるものも知りません。

 感覚で色々と使っていました、ごめんなさい。

 というわけでその日から私は魔法を『学ぶ』ことにした。




 雪もすっかり降らなくなり、獣道なら地面が見えだすこの頃。

 いやまあ吹き付ける風は寒波そのものなんだけれどね。


 私の体にもだいぶ変化があるように思えてきた。

 まずかなり身体が大きくなってきている。

 おとな……ではないな、これは第二次成長期真っ只中なのか。

 身体のラインが出てきて母似な気がする。

 ちょっとうれしい。


 インカは父似でゴリゴリと筋肉がついている。

 ただ……普通に私に押し負ける当たりハッタリ筋肉だけど。

 ハックは母似の影響で美少年化だ。


 それとともに毛皮に特徴が出てきた。

 黄色で模様がつきだしたのだ。

 インカは肩に力強い爪跡にも見える模様だ。


「お、成体の証が出始めたんだね」


 ハート姉が言うにはこうやって模様が浮き出せばおとなへの第一歩だそうだ。

 ハート姉も不可思議な模様があるし兄も優しげな模様が浮かんでいる。

 父は顔の爪跡に見えるのがそうなのだとか。

 母はハートに見える模様もあった。


「ボクのはどうお?」

「ハックくんは……うん、なんだろうこれ」


 表現の難しい模様だ……

 そう、言うならば……


「ミステリアスな模様って感じ」

「なにそれー」

  そう言ってけらけらと笑い、どこにあるか聞いて自分で見てまたけらけらとしていた。


 問題は私だが……


「まだローズお姉ちゃんは模様でてないねー」

「それっぽくはなってるんだけどねえ」


 横腹に薄くあるがまだ模様と言える段階ではない。

 おそらく毛が生え変わってる途中なのだろう。

 戦いの影響で成長が遅れていたりは……しないよね?

 じゃないよね? じゃないよね!




 今日もまた1人で森の探索中。

 前みたマップを頭の中で浮かべ行ったことがない場所を見て回っているわけだ。

 クローバー隊の真似事だね。


 強化ディテクションでのアレンジで見た地図とレーダー内の地図を照らし合わせている。

 そうすることでまったく迷わずに歩けているのだ!


 カエルとか虫とかいればまだ楽しいが、さすがにいる時期じゃない。

 まあだいたいは雪の中を進化した姿で駆け抜けるだけだ。

 さすがにそんな目立つ相手はいないだろうからね……


 いた。

 えっと……でかいドラゴンが。

 うわ、初めてみたぞドラゴン。


 ファンタジー界の王様。

 前世ではほぼ最高クラスの扱いだ。

 ただ、いま目の前にいるのは……

 亀に囲まれてへたり込み震えてなきゃ絵になったんだけども。


 亀の方は雪が積もりまくっていた時期はいなかったな。

 冬眠から目覚めるには早い気がするが……なんでドラゴン囲っているんだろう。

 めっちゃ丸いのが特徴的な亀だ。


[タマガメLv.18]

[タマガメ 回転しながら突進して横腹についたギザギザで敵を倒す。甲羅の硬さはふつうの岩石より硬い。]


 どこから見ても丸い。

 ボールみたいだがギザギザは危険だ。


 この亀は4匹で人より大きなドラゴンを囲ってぐるぐるしている。

 この亀もまあそこそこ大きくて私の少し前ぐらいの大きさはあるが……

 なんでウロウロしているのか。


 言語自動学習が発動して頭痛がする。

 今のうちに隠れつつドラゴンの方も。


[ムラリューLv.2]

[ムラリュー ドラゴンの中では様々なトランス先が存在する力を秘めた竜。そのためあらゆる環境に適応しやすい]


 緑の鱗に覆われたそのドラゴン。

 見た目そのものは立派な翼が背にあって翼膜も張ってる。

 角は翼の上側と頭に小さく2つずつ。

 背骨に沿って大きな尾まで小さくヒレが続いてて王道だ。

 ……その立派な爪で顔を覆って震えてなければ。


 じっと見ていても状況は変化してない。

 やがて頭痛が収まってゆき、彼等の言葉が理解できるようになってきた。


「うぅ……コワイよぉ……なんでどいてくれないのぉ……」

「早くどけ……」「早くどけ……」「早くどけ……」「早くどけ……」


 いや、どういう状況だよ!?

 見ていても状況が改善しない様子だな……

 よし、介入だ!


「おうい!

 そこをどいてって言ってるよ!」


 これの言葉を変えて2回。


「え? あ、はい」

「うん?」「まずはこいつが立て」


 驚きながらもドラゴンが恐るおそる立ち上がる。

 こちらを振り向き手をどけた顔もまさにドラゴンなんだが……

 威厳も何もない。


「左足」「どけろ」

「左足の下に何かあるみたい」

「え、あ、はい」


 言われるがまま翻訳してドラゴンは言われるがまま左足をどけた。

 するとその下から勢い良く砂が噴き出す。

 すぐに収まったがこれは……


「空気穴通ったな」「よし寝るか」「よくわからんやつおつかれさん」

「あー、仲間が冬眠している時の空気穴閉じてたみたい」

「え? よ、よくわからないけれど、助かった……?」


 生態性の違いによる事故だったか……

 亀達は立ち去り近くの隠してあった穴へと入っていく。

 もう大丈夫だろう。


 私は彼等の生態をドラゴンに説明した。

 冬眠時に雪が積もってもなんとかなる場所を選んだはずが、彼等の仲間の穴がドラゴンに塞がれて焦ったのだろう。

 ただまあなんとなくゆったりしたものだったけどね。


「なるほどトウミン……色々と詳しいのですね、言葉もわかるみたいですし。

 一体あなたは?」

「ローズオーラって名乗ってるホエハリ種だよ。

 今は姿変わってるからミリハリだけど。

 ところで良かったら聞きたいんだけれど何があったの?

 生命力も減っているみたいだし」


 そう、観察したら生命力ゲージが半分程度になっていた。

 確かに鱗には少しずつ傷はあるが……見た目大したことはなさそうなんだけれど。

 とは言え生命力現象は様々な原因があるので一概には言えない。


 ドラゴンは恥ずかしそうに頭をかく。


「話すと長くなるのですが……」


 そこから歩きながら彼の旅路を話してくれた。

 彼は親の元で産まれた。

 そこでぬくぬくと育ったのだが……


「ほら、僕、弱いんですよすごく」

「ほらって言われても……力量(レベル)は低そうだけどそんなに弱いの?」

「もうびっくりするほど」


 彼は言った。何にも勝ったことがないと。

 親たちは飯はくれたが放任主義。

 自分はそれに全力で甘えて怠ける日々。

 もちろんそこまでは良かったのだが……


「50ほど季節を巡ったころなのですが」

「すごい、私達が5回死ぬ時間だ」

「僕達にとってはまだほんの子どもですよ!

 まあ、とにかくそのころに親に聞かされたんです」


 珍しい親からの話。

 何かと思ったら将来の話だったそうだ。

 そして彼がおぞましいと表現する事が語られた。


「僕達の種族は育つだけでも身体に大きな変化をもたらすのですが……そこで聞いたんです。

 育てば闘争心が抑えが利かなくなると」

「闘争心?

 普通に聴こえるけれど……」

「いや、そんな普通なんてものじゃないんです。

 いずれ戦いだけを好むようになり、殺戮しなくては生きれなくなると。

 そして親も、子どもを産んだ後は少しおとなしくなるそうですが、もうじき子どもでさえも殺したくなるのだと言われ……」


 ああ、生きていくために食べる必要があるけれど、それに対して心が肯定し生きていけるための本能かな。

 確か前世でももっとエグい動物たちはいたはず……


「僕、殺されるって驚いて!

 なんとか巣から出ていく決心はしたのですが……僕そもそも狩りもしたことなくて」

「それで逃げ回っていたと?」

「幸いなんでも食べられるからきのみとかを食べていて。

 気づいたらこの森にまでさまよって……追い掛け回されて、さっきは休もうとしてたんです」


 そして亀に囲まれたと。

 う、うーんこの子大丈夫か?

 話聞いたら不安になってきた。


「じゃあ、ちょっとそこで休んでいく?

 回復なら使えるし」

「あ、ありがとうございます!」


 今度こそ誰かの冬眠を邪魔しないように座ってからヒーリングをかけつづけ……って終わった!?

 一瞬で生命力が完治した。


「うわあ、凄い魔法ですね!

 一瞬で身体が楽になりました」

「う、うん喜んで貰って何より……」


 どうしよう、この子ちょっと突いたら死にそうなぐらい弱い……

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