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七百三十六生目 花畑

 黄金砂漠の迷宮は花畑に包まれた。


「…………すっ……ごいな……」


 誰かが感嘆をもらす。

 身を裂く嵐が吹き荒れていた環境だとは思えない。

 風の音は消え踏みしめる砂利はなくなりただただ花畑が広がっていた。


 双葉と花のみを素早くつけたこのカラフルな花たちに混じりオジギソウみたいなのが混じっている。

 "観察"したら[もぐり草]と言うらしい。

 反射的に瞬時に地面の下に潜って嵐を回避しなくなると反射的に這い出てくる。


 花の方も似た動きかと思ったらこちらは[1日草]だとか。

 その名の通り成長から寿命までが1日。

 正確には再び嵐に身を裂かれるその数時間のみ。


 頑強な種の状態で長い時をすごし嵐の中を舞った後着地。

 地面の下で雌雄の時を待ち望み嵐が止んだところで爆発的に成長する。

 嵐の止んでいる区域は全て一日草の天下だろう。


 花言葉をつけるとしたら『晩成』だの『3日天下』だの良いのと悪いのとが入り乱れそうだ。

 そんなように嵐のない世界は小鳥のさえずりさえ聴こえて来そうな天国だった。


 いくらかの魔物たちも地面の下から飛び出て争うこともなく体を伸ばし日光浴。

 先程までのつらく苦しい世界は消え去った。

 ……実際はほんの一時のきまぐれだとしてもだ。


 私達はコレ幸いにと素早くダイヤモンドピラミッドの近くまで来た。

 黄金の砂漠はこの近くだというけれど……

 どこまで歩けば良いのだろう?


「それにしてもすっげえなこのピラミッド? どうやって作ったんだ」

「うわっ、やっぱり近くで見たらひとつひとつに贅沢なほど価値が高めてあるじゃないか! コレ1つで家が建つんじゃないか……?」

「ええっ!? そんなに高いんですか!? うっかり触れないですね……」


 たぬ吉もゴーレムの外に出ている。

 素手で触ろうとして……話を聞いて引っ込めた。

 ダイヤモンドが触った程度で価値が変動するわけがないが気持ちはわかる。


 なにせあの嵐の中なんの破損も見られない。

 普通物が叩きつけられ続けたらダイヤモンドの弱さである熱か衝撃で壊れる。

 それらの跡すらないのを見るに単なるダイヤモンドではなくオウカの言う通り特別なものだろう。


 こんなのを見ると『砂漠の白金』も存在するのではないかと期待が高まる。

 早く番犬に会いたいが……

 ぐるっとピラミッドを回ったがソレらしいものはない。


 入口はあったが閉じてあった。

 ピラミッドの中には用がない。

 黄金の砂漠をめざさなくては……


 テテフフはなんて言ってたっけな。

 『目印にて待つ。時が来れば示される』だったかな。

 目印は間違いなく多くの魔物が言っていたこのピラミッドだろう。


「みんなー! 早いけどここで休もう! テテフフが時間くればわかるって言っていたから!」

「よーし! ピクニックだ!!」

「いいこと言うねえ!」

「楽しみましょー!」


 みんな冒険じゃなく休憩に大賛成。

 ささっと敷物を引いて飲むもの食べるもの取り出して。

 パーティターイム!!


「「いぇーい!!」」


 私も"進化"を解いてのんびりすぎる時間を全力で楽しむ。

 あたたかな陽気。

 美しい花畑。圧巻のピラミッド。


 美味しい料理たち。

 落ち着くお茶。

 楽しい談笑。


 何ひとつとっても先程までの地獄からは考えられない。

 楽しき観光!

 黄金の砂漠とはここのことだったんだ!!

 もうこのまま帰っていいかな!


 もちろんそうはいかないが……

 今だけはそんなことは忘れよう。

 楽しい楽しいひとときがみんなに訪れますように。







 ……はい。

 『グラハリー』に"進化"済み。

 つまりはまた嵐が戻った。


 夕日が沈みかけているけど嵐が戻ったことにより1日草たちは全て嵐に狩られた。

 みんな心も体も充足したもののだからといって嵐のつらさがなくなるわけじゃない。

 歩むわけではなくただ待つというのもやることでごまかせなくてつらい。


「あイテッ! 今膝に当たったぞ……!」

「そろそろ……ですかね?」


 ジャグナー大きめの宝石であれは痛そう……

 夕日が沈み夜がやってくる。

 本格的に暗く世界が闇に沈み……


 ……沈み……?

 あれ? このあたりやたら明るくないか?

 ……あっ! ダイヤモンドのピラミッドが輝いている!


「おおっ! 仕掛けがあったのか! 明るいなあ」

「うん? 何か……光の形がおかしくありません?」


 このピラミッドは四角錐(しかくすい)なので輝けばあらゆる方向を照らす。

 しかし無限に光が伸びなければどこかで影が生まれる。

 だが……


 光は不自然に1つの部分だけ地面に丸く穴を作っていた。

 自然な形によってできたものではないのは誰の目にも明白。

 いつの間にか他にも魔物が地面下から出てきてその()へと向かっていた。


「さっきまであんなところに、何も無かったですよね……?」

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