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七百三十四生目 休息

 宝石の海とも言える鉱石と宝石の砂漠。

 希少な鉱石……それこそアダマンタイトやヒヒイロカネよりも希少なヤグマネウムやホワイトハイミスリルがゴロゴロ転がっている。

 宝石たちもひとつひとつどれをとっても希少品だらけ。


 そして……それが嵐の中を飛んでくる。

 うっかりするとそれだけで分厚い装甲を打ち破る代物。

 そうでなくともあまりに痛い。


 濡れたスリッパが台風の風に乗って飛ぶだけでビルの強化ガラスを破壊すると言われる。

 それよりもずっと硬く重くなんならたまに鋭いものが破壊力を持たないわけがない。

 案外体積があるものでも飛んでくる嵐の威力もたいがいだ。


 なので今炎をかこんで風の縫い目で休まざるをえない。

 こまめな休憩こそが最大の早道だ。

 私も"進化"を解いた。


「それにしても、どこまで行けば黄金の砂漠につくんでしょうかね……?」

「一応聞くやつ聞くやつみんな同じ方向を指すがよ、何も見えねえと気が滅入るなあ……」


 たぬ吉が草ゴーレムから出て操縦の疲労を訴えている。

 "ヒーリング"や"トリートメント"で毛皮をかきわけつつキズをいやし尾のしおれている草も元気になってもらう。

 ジャグナーも毛皮は岩のごとくで体から岩そのものが生えて肉体を守っていてもところどころ内出血が見える。


「まったく、強すぎる景色は目に毒だね。冒険者としては大喜びしたいところだけれど……」

「中の物は取れませんし、取れたとしても、これはあまりにも過剰ですね……」


 どれだけ希少なものでも私達の体に穴を空ける程度しか役に立たないとなると途端にテンションが落ちてしまう。

 後でこの美しい景色を振り返って遠い地で思いを馳せよう。

 今は苦労の思いが強すぎる。


 オウカの光の鎧を解除していく。

 これは彼女のスキルにより纏っているので……

 何の苦労もなくすんなりと消え去る。


 鎧の下にもしっかりと緩衝や快適性のために服をきっちり着込んであった。

 久々に顔が露わになる。

 年老いているのに目に力強い光を見た。


「ふぅー、こりゃ着替えなきゃね。血が滲んでいるや」

「あれだけ物が飛んでくればこうなるよね……私もまだ骨がきしみそうで……」


 今のうちによくよくほぐしておこう。

 みんななかなかしんどそうだ。

 こんなところに棲む番犬……空振りに終わらなきゃ良いけれど。


「たぬ吉、そのゴーレムってどうやって動かしているんだ?」

「ええっと、難しくはないですよ。中に入ると草が絡みつくので、あとは動かしたいように体を動かすと同じように動きますね! あと丸まるにはからだをちぢこめて、転がるにはそのまま前転する感じです」

「うーむ、複雑な操作がいらないっていうのが良いな。なんとかこの搭乗型ゴーレムを汎用性にして、多数配置出来たらとんでもない制圧力なのだが……」

「普段はかわいくついてきてくれますから、そこらへんも大事です!」


 たぬ吉が外にいるときは草ゴーレムは自動的に動く。

 今は足を伸ばして座り込んでいた。

 こうしていればたぬき型に整えた草木なんだけれどね。


 こうしてだべったり食事をしたりした後に交代で眠る。

 そうして……





 また今日も歩く!

 勇者の剣は魔王が復活する前に必ず造らねばならない。

 気持ちは焦りやすいがこの第一歩を踏み外すとどうしようもないから慎重に。


 まあ急ごうが静かに歩もうがジュエルストームは容赦などがない!

 今日も今日とて痛い!

 なんでこんなに嵐は元気なんだ!?


「そろっそろっ、黄金の砂漠が、見えても良いんじゃないか!」

「気持ちはわかるけど、さっきからそればっかじゃないかー!」

「1時間駆けるだけでもごっそり体力が減りますう!」


 気温が高くないのは絶対この嵐に寄る光の阻害も大きい!

 まったくみえないんだもの! 太陽!

 吹きっぱなし隠れっぱなし。


 確か三角の山が目安と言っていたが……

 どこにそんなものがあるのかまるでわからない。

 そもそも"見透す目"でも嵐をそこまで遠く見渡せない。


 話を聞いて。

 駆けて。

 休んで。


 駆けて。話して。休んで。

 治療して。駆けて。休んで。

 駆けて。励まし合って。休んで。


 何度それらを繰り返したかわからないほどにやった。


(ん? せ〜かくな数はわかるよね? 数は――)


 そういうことじゃないから!

 気分の話だから!

 とまあアインスにツッコミを入れつつも歩む。


 というかこういうことしてないとしんどい。

 駆けているこの面々の表情は暗く会話も乏しくなって久しい。

 声掛けも限度がある……


 『グラハリー』に"進化"している私ですらしんどいのだからオウカたちがかなりの痛手をともないつつ歩いているのは間違いない。

 不規則に連続で体に浴びせられる痛みに耐えるのは誰だって苦行だ。


 未来はどこへ。

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