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七百三十三生目 謎掛

 見渡す限りの宝石たちの砂漠。

 そして身を激しく打つジュエルストーム。

 もしここがニンゲンたちに見つかっていたら……


 果たしてどれだけの血が流れたのだろうか。

 砂も石も岩も高魔力保有の宝石。

 美術価値や資源価値どれをとっても金額に変換などしきれない。


 ぶらぶらと歩いているラクダの背中からもハイローズルビーとかいう普通のルビーの何十倍も希少なものの塊が飛び出ていた。

 ……あ。ニンゲンといえば。

 オウカがここにいたや。


「オウカさん……」

「ああー、これは……あくまで伝説上の存在にするしかないね。伝説の中で、永遠に眠ってもらうしかない」

「ですね……」


 良かった。

 オウカも同じ結論になったらしい。

 かなり引いている。


 一方魔物2名ははしゃいでいた。

 値段云々ではなくきれいだからね。


「ようし、これで黄金の砂漠とやらも、きっと近いな!」

「ええ! こんな不思議な世界があるんです! 歩いていけば、きっと見つかります!」


 私達もふたりに気持ちを引っ張られて駆ける足を再開した。





 ジュエルストームは容赦がない。

 鉄あたりと違って鋭さと硬度と有している魔力を持って体当たりしてくるのだから。

 1粒1粒は大きくなくともやはりストームとなると規模が違う。


 強いエネルギーの込められた体当たりは爆発的に威力が増す。

 先程から何度かみんな首や腹が大きく揺れている。

 そのたびに大きな痛みが入っているということだ。


「みんな、いつでも治療はするから言ってね! 継続治療の魔法もかけておく!」

「ああ、すまん」

「草ゴーレムの中で本当に良かったです……」

「見た目はきれいだが中身は極悪だねこりゃ!」


 あうっ!

 ゴンッと当たった。

 今のはちょっと痛かったな……


 ここを抜けるあいだにみんなあざだらけになっていそう。

 それでも方角感覚を合わせつつ歩むしかない。

 ああ……ため息が出るほどに素晴らしい光景も今では苦労のため息しか出ない。


 いだだっ!!

 ストームの中では主に地上にいるのは気性が柔らかく刺激しなければ平気な魔物だらけなのは幸いか。

 主に激しいテリトリー争いは地下で繰り広げられているらしい。


「こんにちはー」

「やあ、言葉がわかるとは珍しいね」


 大きく全身が硬そうな甲殻に覆われている魔獣だ。

 スフィンクスほどの大きさか。

 つるつるとしていそうな表面はキズひとつない。


 目は保護用のグラスみたいなものに覆われている。

 色付きだが多分この嵐をまともに見るためだろう。

 中の目は眠そうな目つきだ。


「これからーどちらへー?」

「少し黄金の砂漠の方へ。でもこの嵐で進めるかどうか……道もわからないですし」

「それならー、この先をずぅーーっと行ったところだねー。休みながら行くと良いよー。三角のー……山が見えるからねー。それが目印さー」


 やはりまだまだ先らしい。

 話を聞いた全員が内心ため息。


「ありがとうございましたー!」

「じゃあなー」「おげんきでー」「長生きしなよー」

「さようなら、旅の方たちー。そうだ。小柄なー者たちが身を休める場所ならばー、思い当たるフシがあるよー。それは――」


 思いがけず大きな魔物からこの砂漠で休む方法を教えてもらえた!

 ちょうど嵐の縫い目ような境を見極める方法やその影響で風が止むような空間。

 またはちょうどいい壁の設け方なんかも。


「――とまあ、昔から無駄な知識を集めるのが好きでねー。自分にはまるで役に絶たないがー、旅の方の役にたつことを祈っているよー」

「「ありがとう!」」


 そんなやりとりをあちこちで交わし場所や環境に詳しい現地民から話を聞いて進んでいく。

 さすがにこの世界を黙々と進むのはつらい。

 まともな情報もなしに身を削る思いであるき続けるハメになるから心も削れる。


 さっそく見つけた風の縫い目で壁を設け簡易キャンプ。

 大した目印が少なくて"ファストトラベル"をしづらい。

 一度アノニマルースに戻ったら1時間以上はまた同じ道を走らされるためここで休む。


「あぁ〜! 老骨にこれは堪えるわあ」

「みんなー、体を見せて。治すから」

「まったくオウカじゃねえがしんどいぜ、全く」

「ゴーレムもすごく揺れましたし操縦疲れました……」


 みんなで火を焚いてよく体を癒やす。

 間違えて宝石たちに影響が無いように地面は即席で材料をもとに作った。

 まともな足場がない場合に備えて(くう)魔法"ストレージ"に材料をしまってあったのだ。


 そして砂漠なのに火を焚かなくては行けない問題。

 正直暑くない。

 嵐で奪われる体温を考えれば冷えるほどだ。


 夜でもないのにこの砂漠の気候は暑くないため感覚が狂う……

 ここで体を良く休めてから再出発しよう。

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