七百三十生目 頭脳
ラストモンスターの1種メルスライムに囲まれた。
全身を金属で作り金属を食べるスライム。
うっかりが即こちらの武具消失の危機。
「おいおい、もしや俺のことも飯だと思っているんじゃないだろうな!?」
「それは……スライムに聞くしかないですね」
「ひええ! き、きます!!」
ジャグナーの肉体は岩が多くある。
果たしてこの鉱物はお気に召すのか。
試してしまうのは危険だろう。
たぬ吉の言葉と共にメルスライムたちが一斉に飛び込んでくる!
「やああ!!」「わああ!?」「うおお!!」「うう!?」
「まてぇ〜〜〜い!!!」
うわ!? なんなんだ!?
何かプルプルしたものが震えて声が発せられているような……
どこだ……?
周りのメルスライムたちは巣の奥へと引っ込んでいく。
どうやら今の声で敵対をやめたらしい。
一体どういう……?
奥からその声の主が這い出てくる。
その姿は……またメルスライムだった。
敵意はないようなのでみな構えを解く。
「ようこそ旅人さま〜たち、何のために辺鄙なここに来たか知りませ〜ぬが、歓迎〜しましょう。伝わる〜とよいのですが……」
「「しゃべった!?」」
メルスライムが全身をプルプルさせてプルプルした声で会話を!?
メルスライムの語句はいつもの"言語学者"に"観察"合わせで理解はしたしみんなも翻訳機が受信して何らかの訳しは出来ていると思う。
しかしだからといって文脈でやり取りをしかも別種族とするだなんて……!?
「……おや? 我々の言葉を理解なさ〜る?」
「え、ええ、まあ、色々ありまして……それにしても、話しかけてくれるスライムというのは驚きましたが」
「ほほほ、まあワシはいちば〜ん脳が大き〜いので、こうやってみなさ〜んとコミュニケ〜ション取れるのです」
脳が大きい……?
あのスライムたちが身体の中に見えている内臓かな。
確かに脳っぽいが脳で良かったんだ。
「それでは〜、こちらへ」
「……どうする? ついていく?」
「私が緊急用ワープ準備しておくから、とりあえず行ってみようか?」
「うっし」「はい」
のしのしと重たい身体たちが樹林の奥へと導かれた……
確かに石樹木が多くなっていると思ったが鬱蒼と茂るほどになるとは。
天からの光や風通しが薄くヌメヌメしたスライムたちにとって絶好の住処となっている。
同時に私達にとっても休息するのならここしかないと思える程度に。
「さあさ、汚染されていない水をどうぞ。我々としては水銀のほうが食事なので、余るほどありますぞ」
「あ、これはありがとうございます!」
ちゃんと"観察"はしておく。
普通の水だ。
小さい池のようにたまっていて水に棲む普通の苔なんかも生えている。
苔や小魚は普通のスライムにとって捕食対象だがメルスライムにとっては真逆ということか。
ありがたく飲んで水筒を補給しよう。
「ふぅ〜! 生き返る!」
「さっすがに嵐の中じゃあピクニックとは行かなかったからなあ」
スッキリさっぱりした!
メルスライムたちはあちこちに歩いたりへばりついたりと自由にしているようだ。
「いやあそれにしても、さっきといい今といい、助かるよ」
「ありがとうございます!」
「いえいえ〜、見たところそちらは〜かなりの手練の様子。我々〜負傷するのは嫌なので〜。話が通じそうなら〜そりゃあ〜どうにか聞きます〜!」
オウカとたぬ吉の礼に先程の賢いメルメタルはプルプル震える。
かなりの賭けをしたわけだ……
「本当に良いんだったら、ココで休ませてもらってから出発するよ。良いかな?」
「構いませんとも〜。我々も、強い味方がいる間、外敵が来にくくて助かりますから〜」
「何から何までありがとうございます」
こっちはヨソモノのにおいや気配を漂わせるそとでメルスライムたちの天敵を追い払う。
向こうはどうでもいい水を出し危険な相手にも無傷でやり過ごす。
スライムが考えたとか普通なら苦笑ものだが目の前のは頭脳が大きいらしい。
まあ金属色で中身が見えないんだけれど……
ニンゲンたちに見つかっていたならば2つ名がついていただろう。
会話を試みて群れを率いるだなんて。
彼は彼なりの戦いなのだ。
それは尊敬するしとてもありがたい。
……"ファストトラベル"用の場所としても覚えやすくて安全な場所だから候補として記憶はしっかりしておこう。
「ではでは〜。道中お気をつけくだされ〜!」
「「さようならー」」
私達はメルスライムたちの巣を後にして進む。
たっぷり休み食べるものも飲むものとちゃんとやったので気分は良い。
だが……少し歩けばまた風に乗って何かが飛んでくる。
「わっ鉄じゃない! 結晶!?」
「水晶だね……気をつけなよ! 結構塊が大きい!」
鉄とはまた違う危険が出てきた……




