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七百二十二生目 腹切

 ラストモンスターで錆びた勇者の剣を直す方法は目処がついた。

 あとは……


「サビは取る。だがそこは始まりでしかない。俺たちは、勇者の剣を再生させる必要がある」

「そうなんですよねえ」

「うう、普通の剣なら十数本作れる材料使ってやっとスタートかあ……」


 グレンくんは大きく肩を落とし頭を指先で支える。


「勇者の剣は、前の形ですら……未完……だ。俺なりのアレンジや、今の勇者に合わせた変更は多数いるだろう。でだ、参考になる剣でもねぇかな……特に、勇者のお前がしっくりくるものや、憧れるものが良い」

「あ! それなら! 刀が! それとローズさんのゼロエネミー!」

「あ、私の?」


 ここで振られるとは思っていなかった。

 それはカジートもそうだったらしく私の方を見てやや苦々しい顔で疑問符を浮かべている。


「お前……剣も使うのか?」

「ええ、まあ……」


 で。


 私の剣ゼロエネミーを出した。

 刀というのが良くわからないがニンゲン名称とはズレているかもしれないとグレンくんに倉庫を探させているところ。

 

 もちろん私達も倉庫に移動してグレンくんが危なくないように見張りはしつつ。


「こ、これが……!? ローズ、本当にお前はなんなんだ!? こんな武器、見たことがない!!!」

「ええ、私の自慢の剣です!」


 剣ゼロエネミー。

 ホークアイという宝石が持ち手近くに埋められた剣。

 私が鞘から引き抜いたら勝手に黄色の(エフェクト)をまとう。


 カジートに見てもらうため手にとってもらったがいきなり重くなったりはしないらしい。

 勇者グレンくんは拒否したのに……

 手入れと使用の違いは明確に理解しているようだ。


「ははあ……これは延々と見ていられるな……後で研ぎ直してやろう。あと……その鞘だな。剣は立派だが鞘はあくまで普通らしい」

「え? 鞘ですか?」


 鞘に注目するとは思わなかった。

 確かに鞘そのものは特別な力はないが……


「ジンド流は、鞘にも注目する。鞘は強大な力を持つ封ずるものであり、休める場所であり、解き放つ場でもある。まあ、言うより見せるほうがはやいだろう。少しの間、その鞘といくつか材料を預けてくれないか? 使えるようにしてみせる」

「あ、どうぞ」


 いつもストレージにしまうから正確にはあんまり鞘の意味はなかった。

 ニンゲン冒険者に偽装する時くらいかな。

 借り物の鞘と今の鞘を交換し素材を渡す。


 ちなみに剣ゼロエネミーの研ぎ直しのさいに出たゴミになる部分やら私のトゲやらだ。

 他の素材は自前で用意してくれるんだとか。


「あ! あった! これだ! これが刀だ! 俺が知っているのは片刃だけれども!」

「ん? それは……腹切り包丁じゃないか」


 そうこう話している間にグレンくんが何かを見つけ出した。

 取り出し鞘から引き抜いたもの。

 それは……刀だった。


 ニンゲンが基本的に作る片刃とは違って両刃。

 これに関してはとても普通の武器だが……

 あの時ラゴートに見せてもらった刀を思い出す。


 作り手は……間違いなく同じだろう。

 というか今の物騒な単語は?


「腹切り包丁……?」

「ああ、それで取ってきた獲物の腹を斬るんだ。刃が大きいやつはもちろん大物用だ」

「「ああ……」」


 私もグレンくんも思い浮かべたことは同じらしい。

 切腹か何かかと……

 あれは小刀だけれども。


 ……? この世界に切腹文化あったっけ。

 だとしたらグレンくんが思い浮かべたのは相手の胴を真っ二つにする感じのかな。

 それはそれでこわい。


「なるほど、形状はそれが好きなのか?」

「ええ! カッコいいじゃないですか!」

「使いやすさではないのか……まあ、そこらへんも参考にしてみる。それと……このローズの剣、確かに憧れるのはわかるな。この力、凄まじい!」


 カジートが剣を天に掲げると置いてある魔法光を反射して剣先がきらめく。

 どうやら褒められてご満悦らしい。

 私も嬉しい限りだ。





 翌日。

 集まった材料をグレンくんが持っていくために私も付き添いワープで到着。 

 早速カジートには作業に取り掛かってもらう……のだが。


「うーん……」


 カジートは大量の本と同時に錆び付いた勇者の剣を前に唸っていた。

 また本が苦手ゆえのかな。


「材料持ってきたよ……って一体これは?」

「おう……置いといてくれ」

「何かありました?」


 グレンくんが工房の方へと荷物運搬している間横から本たちを覗く。

 たくさんの本そしてカジート父の手帳から得られた情報を統合しているようだ。

 その結果は……


「え……? なんですか、これ?」

「わからん……何もかもが伝説上の存在を指している。どうすればこんなもの手に入るのか、まるでわからん……!」


 それらの答えは実在するかもわからない幻の品々を指していた。

 勇者の剣づくりは前途多難である。

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