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七百二十一生目 金喰

 勇者の剣の作り方をじわじわと解明している。

 とりあえず現物が見たいということで勇者グレンくんをご招待しにワープ。

 行って戻ってきた。


「……もういきなり消えたり現れたりしても驚か……お、もしやお前さんが?」

「遅くなりました! 俺はグレン、勇者、らしいです!」

「うおっ!? ガキじゃねぇか!?」

「見た目ではわかりにくいけれど、成長しているだけでまだ中身は数歳なんですって。ジンドで言うなら、10〜20代ほど……?」

「もうそれはチビじゃねぇか……大変(てぇへン)なこったな……」


 カジートは頭のツノをかく。

 勇者グレンくんはまだまだ顔におさなさがある。

 だが中身はそれに比較できないほど若い。

 なお会話はグレンくんが持つ受信機で翻訳している。


 そういえば何歳なんだろう。

 詳しくは知らないや。

 グレンくんが前に出て布に包まれたそれを差し出す。


「……これが、勇者の剣だったものです」

「どれ、拝見」


 カジートは受け取ると地面に置いて布を少しずつ解いてゆき……

 中から現れたものに顔をしかめる。

 自分の親が完璧な仕事をこなせなかった証明。


 錆びた塊。勇者の剣だったものだ。


「はぁ……実際この目で見ると重く来るな……」

「ええと……?」

「ああ、これを打ったのは、彼……カジートの父親でね」

「ああ……遺品でもあったんですね。それが、こんなあられもないことに……」


 カジートは険しい顔をより一層険しくてよく観察する。

 サビに手が汚れるのを気にせずに全面くまなく触り……


「これは……親父から聞いたことがある。ラストモンスターの餌食になっているな」

「ラストモンスター? 強そうな名前ですね」

「ラストモンスター!?」


 私はパッと思い浮かばなかったがグレンくんは驚いて身体をのけぞらせていた。

 あれもしかして有名? 私の中の知識を探れば出てくるかな?


「あー、えっと、良かったら私にも教えてくれる?」

「あ! ああ、ええ、そう、だね。前衛の天敵で……だよね、カジートさん」

「ああ。そいつは呼び名に反して人畜無害だ。ただし……そいつの食料は、金属だ」


 うん……?

 すごい不穏な単語が出てきたような。


「ええ、戦士としては絶対覚えておけと、良く言われまして……」

「そいつは金属に目がなく、金属を奪い、サビらせて食べる。ニンゲンたちの里は、金属が多く使われていると聞く。さぞかし俺たち鍛冶師以上に嫌うだろうな」


 ううむなんとも恐ろしい魔物だ。

 金属を食べる以外は良さそうなのに……


「で、コイツは……おそらく喰おうとして、うまく消化しきれずに捨てられたってぇところか。ニンゲンの鍛冶師たちもおそらくは、気ンついただろうな。確信がもてなかっただけで。なにせラストモンスターにやられたサビは……武器を取り返しても取ることがほとんど出来ねえ」


 ……ん? 待てよ?

 魔王との戦いで力を使い果たした……のでは?

 それじゃあまるで……


「え!? 魔王との戦いで朽ち果てたんじゃあ!?」

「いや、魔王との戦いで朽ち果てた後に、ラストモンスターに回収された可能性はある。そこはなんともいえんな……元の形すら保ってないからな」


 そう……だと願いたい。

 でなければ。

 ニンゲンたちの信じる勇者の物語が崩れ始める。


 だからこそ。ニンゲンたちもラストモンスターのせいだと断定できなかったのかな。


「で、では、このサビを落とす方法はない……?」

「いや、落ち着け。ほとんどと言ったはずだ。たいていはもう1本作った方が早いし安上がりだからという面が多い。確かニンゲンたちがやっても取れなかったんだったな? ジンド式の対ラストモンスター鍛冶、やってみせる!」


 カジートはサビの塊を頭上へと掲げる。

 その表情はやる気に満ちていた。


「とは言え、材料調達はとんでもなく骨だ。ニンゲン界は物量が豊富なんだろ? 調達してきてほしいものがある」


 ささっとカジートが板にメモ書きして渡してきた。

 モノ自体は確かによくある。

 物量がおかしい。


 ジンド特有の事情の使用品もあるのか何に使うのかよくわからない毒薬まで含まれている。

 まあサビは確かにそういうものを使ったほうが良い……のかもしれない。


「本当はこれに魔力の込めた石も必要なんだが、親父が残していたからな。ここまで見越したわけじゃあなく、勇者の剣を打つためだろうが、一旦はそっちでどうにかなる」

「――って感じの内容。どうにかなりそう?」

「うわっ……! け、けれどみんなで集めれば、これはなんとかなります!」


 グレンくんに話しながら文字を皇国語に直す。

 グレンくんは腕を組んで悩んでいたが苦しそうにうなずいた。


「金竜の尾をまた取るよりはずっと現実的だ。頼んだぞ」


 私もやれることをやらなくちゃね。

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