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七百二十生目 巻物

 守護竜神との交信が終わった。

 毒沼の白雪。崖の白砂。砂漠の白金。

 それこそが託された言葉だ。


 墓から出て大ネズミたちとお別れを告げる。

 結局復活した大ネズミは周りからからかわれはしたが歓迎されていた。

 後少し遅ければ彼らの食卓に乗るところだったのは言わないでおこう。


 鍛冶屋に帰宅してふたたび前いた場所に座り込む。


「でだ、ローズ! 守護竜神様が! 守護竜神が我らを祝福してくださったぞ!」

「うん、うん、私もみたから、落ち着いて!」

「これが落ち着いてなぞいられるかい! こうしちゃおれん! さっそく勇者の剣の作り方自体を精査しようぞ!」


 カジートは興奮冷めやらぬといった面持ちで持ち帰ってきた手帳を開く。

 カジートの親が書いた手帳には勇者の剣の簡単な作り方がのっている。

 だがそれは出典をたどるのが前提かつ未完で研究途中のことが書いてあった。


 だから……


「よし! 家中ひっくり返して本たちを見つけてきたぞ!」

「おお、ニンゲン界でも読んだことのあるやつも!」

「勇者に頼んで持ってきてもらった、と書いてあるな」


 ニンゲン界にある本は現代では有名な著書が多い。

 これが10冊程度積まれていて分厚い。

 それと製紙技術のないジンド族が書き残す手段として主に使われる巻物(スクロール)


 コレは正確には紙ではないらしく狩った獲物の皮を加工してつないであるのだ。

 羊皮紙に近いものがある。

 ただしこの巻物に羊要素ゼロ。


「俺は昔から本が嫌いでな、一応読んだんだがもうあんまり覚えてねえ。これから該当部分を査読するから、ローズ、お前さんも手伝ってくれ!」

「うん! 私はニンゲンの本は読んだことあるから、巻物の方を読みます」


 前足だと読みにくいので"変装"で少し手に寄らせる。

 巻物の紐をほどき……

 丁寧に伸ばして中身を読み取る。


 最後まで伸ばしたらクルクルと巻き直す。

 よし次。


「はやっ!? ローズ、ちゃんと読んでいるのか!?」

「見てはいるけど読んではいないかな。今頭の中で読んでいるよ」

「お、おおう……本当に規格外だな、ローズよ……」


 そうこう話しつつ私は何巻かあるスクロールを読みきって……

 重要な部分を書き出していく。

 なにせ私が知っていても活かせないのだ。


 内容を理解し消化してわかりやすく直せても私では打てない。

 鍛冶系のスキルはないからね。

 真似事は出来ても本職には敵わないわけだ。


「……とまあ、だいぶこのやり方だと無駄な工程が見られたけれど、単にこのやり方を真似するんじゃなくて、もう一つの……こっちのスクロールにあったやり方が重要だと思う。合わせることで意味が出てくるし、だいぶ無駄が省けるよ。それと他の本を読んださいにあった知識として、これだけだと切れ味が落ち気味になるから――」

「ぬおっ! まった! いっぺんに語ンな!!」


 ……前世の知識も混ぜ込み外界の知識も取り入れアノニマルースで使われる技術もふんだんに取り入れていく。

 メモの板書きだけでは不安なので紙を(くう)魔法"ストレージ"で取り出して書きまとめる。


 自分の作業を終えたら今度はカジートを手伝う。

 内容はだいたい覚えているからね、

 ただやはり現場鍛冶師でなければ気づけ無い点も多いだろうからカジートが本を投げ出しそうになるたびにフォローへ入る。


 その結果。


「……多くは、俺が普段からやっていることだった」

「そうなの?」

「ああ、だが、力の入れ具合が違うというか……本来は100本に注ぎ込むような尽力をこいつ1本に注ぎ込むかのような、基礎を極めに極め生涯で一振り作れるかどうかのものだ。その上で乗算的に素晴らしい仕上げになるように工夫がいくつか。それでも足りなかったが……ローズの足した話で、もう少し状況が変わるかもしれん。どうなるかはわからないがな。それと……今回は勇者の剣の元がある。特に金竜の尾は省けるかもしれない」


 やはり普通ではないか……

 そのとんでもない一振りが錆の塊になってしまったのだから困ったものだ。


「金竜の尾、大丈夫かもしれないと?」

「ああ。むしろこれを芯にすえていたから壊れないと踏んでいたんだろうな。金竜神の特徴はその肉体が金属のようだというのに、けして腐らずくすまず鈍らない……とされている。もちろん破損などもっての他で、金竜神に傷をつけるのは金竜神と魔王のみとも書かれているな。それの加工はまさに……神と勇者と親父の力を注いでこそだったようだな。これをもう一度やろうとするならば、多少地獄をくぐる覚悟がいるだろう」


 腹はくくっても地獄はくぐりたくないな……


「見てみないとわからんことも多いな……勇者の剣は持ってきているか?」

「あ、いえ。勇者と共にあります」

「なら、連れてこられるか?」

「それは大丈夫です」


 ということで。

 "ファストトラベル"!

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