七百十八生目 復活
「ぬおっ!? 姿が変わった!?」
「さっきのと同じヤツなのか?」
「わわあ!?」
「これから復活の魔法を使います! 集中しなくてはならないので、邪魔してくる変な相手は任せますね。それと補助線とか描くので、消さないでください!」
この作業は途中まで地味だ。
ホリハリーに進化したので"森の魔女"のスキルが活性化し魔法への深度が深まる。
まず聖魔法"リザレクト"を唱え出す。
次にすぐに道具を使いつつ補助線を描いていく。
チョーク系統もいいがちゃんと魔力のあるものをお忘れなく。
本来は本を見て正確な複写がいるものの一応そこは頭の中のものを見られるので大丈夫。
ただ頭の中のものを見て直接描くのも難しいのに完全に空で描くのは相当難しい。
魔法陣を多重に重ねる必要があるがそれは補助線でどうするかを示すだけでなんとかなる。
下書きで手を抜かなければだけれど。
初めてなので結構焦る。
カリカリと書き続け……
「お、おい、手伝うことは……」
「静かにすることと、誰か敵意の持った相手を静かにさせること……」
「お、おう」
少し口調が厳しくなってしまったが今は本当に1手もミスできないのだ。
ミスがあればあるほど魔法は不完全になる。
成功率は段違いに落ちるからだ。
10分ほど経過。
描き終わった……
床一面に書き記したさまざまな下書きたち。
チョーク。ペン。溶液。ロウソク。水銀。
「は、早い……!」
「これほど広大なもの、すごく大変そうなのに」
「ちょっとこの線かじってもバレないかなあ」
背後でヒソヒソと話したり誰かの動きを集団で止めたり。
その間にも魔法は続く。
予定通り大部屋一面の床に書き記したものの初めてだからこれでもうまくいけるかどうか。
一応完成図を元にきっちり修正を入れていく。
さてここからだ。
私の魔力を用いて魔法陣展開していくが本来は魔力の籠もった石などを割って多く加算することで使うからひとりで道具補助なしでやるものではない。
「おお……! ついに始まった……!」
「光が広がっていく……!」
「すごい……なんかいっぱいさっきのに、重なっていく!」
光の線は私の想定通りのラインを描き魔法陣を描いていく。
頭の中の想像と下書きにうまく合わせて引かねばならない。
手で直接引くわけではないく光を操作するのだから慎重に。
魔法なのだからある程度はサポートが効く。
しかしサポートはあくまでそれまで。
慣れれば力技も出来るだろうが初めてなので慎重に慎重を重ねていく。
魔法陣が床一面に広がる。
ここまでは大きな魔法でしかない。
対象が小さくひとりなのでこの大きさは本来いらないが……
ここから下書きの本領発揮!
魔法陣にさらに魔法陣を重ねていく。
実質上はさっきの続きにあたる。
さらに……!
「「浮いた!?」」
外側に光で描いていた魔法記述が浮かび上がり大ネズミ中心に地面を無視して回転しだす。
縦に斜めにグルグルと回る。
やっと派手な見た目に背後のみんなも喜ぶし私もひと安心。
部屋全体を魔法陣が舞う。
空気が変わりだした。
静謐で厳かだったのが活性化しだしたのだ。
合計30分くらい経過するとさらに変化が激しくなっていく。
魔法陣に魔法陣を重ねることは光なので厚みは増さないしはたから見たら意味不明な記述がたくさん増えるだけだろう。
しかし部屋のなかに奇妙な文字が浮かび上がったり消えたりするのは目を楽しませるらしい。
声を抑えた感嘆符が上がるが集中集中。
45分目。
魔法記述の追加は基本的に大丈夫になったかな。
あとは書き足すのではなく運用をしっかり続けることが肝心。
ソレとは別に空中に漂っていた魔法記述たちが壁へと張り付いていく。
波打つように光が満ちたり引いたりを一斉に繰り返しているため幻想的だ。
背後のみんなもキョロキョロと落ち着かない。
55分目。
もはや仕上げの段階。
実際にやってみて知識上との齟齬や問題点反省点が見つかった。
次はもっとうまくやれる。
きっと早くも効率もよく出来る。
だから今はこれを絶対成功させよう。
聖魔法についてのおさらい。
排除し拒否するという力が聖魔法の本質だ。
混ざり合い引き寄せる邪とは真逆の性質を持つ。
"リザレクト"は死を否定する。
死にまとわりつく邪気も払い致命傷の治療もして空の肉体に道と器を開く。
その道は魂へと直通する。
そして問いかけるのだ。
死の安然とあの世への道か。
生の騒然とこの世への道か。
1時間。
全身に力が満ちて私も光輝いている。
空間は異常なほどに魔力が活性化し光が明滅する。
「帰って来て……!」
小声で転がす。
膝を折って手を合わせる。
発動……!
"リザレクト"!!
 




