七百十六生目 高速
鍛冶師を全治させたら驚かれた。
「取り乱した、悪い」
「え、ええ、大丈夫です。それよりも、なぜここに来たのか教えてくれますか?」
「ああ、そンことか……それならば進みながら話そう」
鍛冶師が松明を再点火させ持って進むこととなる。
剣は相手が落としたのを調達。
刺さった剣は刃が潰れてしまったらしい。
「話は……そうだな。勇者の剣は、俺ン親父が打ったものだ。ここにその墓がある。まさか誰も管理していない間に、アンデッドすら湧くようになっていたとはな……」
「お墓参りを? その、鍛冶師さんの親が打ったから?」
「それもあるが、俺は……あー、獣の習性がどうかはしらんがな、ジンドは文化的に必ず母の家で子が育つ。だから肝心の、普段の親父の腕をあまり知らない。勇者の剣を打つ秘術もな。だが……お袋は、親父の墓に秘密を埋めたらしい」
ちょっと事情の内容を察しだした。
次の石扉を開くと墓の土壁を破ってアンデッドたちがのそのそと起き上がりだす。
どうやら封印が弱まっているらしい。
「グッ!? 2体……獣! そっちは任せた! 命の恩人にいつまでも獣呼びは締まらねえな、なんて呼べば良い!?」
「ローズ、ローズオーラって名前」
「なるほど、俺はみんなからはカジートと呼ばれているから、ぜひ俺のことはそう呼んでく……おお!?」
アンデッド相手に容赦はなし。
噛み付くのは抵抗があるから起き上がり途中の1体をぶん殴り頭が吹き飛ぶ。
もう1体は剣を構えたとこに飛び込んで尾で足払い。
そのまま倒れ伏したところを跳び踏んだ。
頭蓋骨が砕け散る。
「次行きましょう」
「は、速すぎて見えない……獣、いやローズ、お前……?」
うへっ。土くれの感覚が嫌だ。
鼻に独得のカビ臭さもツンとくる。
ちょっとかっこつけたけれど足の裏の感覚もあんまりよろしくない。
驚くカジートをよそに適当に土を払い周囲警戒。
ここらへんからは主にアンデッドが占めるらしい。
奥の方にも邪気独得の冷えるような感覚を感じる……
「それで、カジートさん、その墓の秘密って?」
「あ、ああ。俺は親父の秘密がおそろく勇者の剣にまつわることだと思っている。死ぬまで教えてくれなかった、な」
「でも、そんな状況でも鍛冶師を引き継いだんですね」
松明が洞窟を明るく照らす。
廊下を曲がった先にまたいたので倒しねおいた。
「……ああ、俺は親父が好きだったからな。仕事を受け継ぐために教えをこいた。だが、丁寧に教え込まれたからこそよく分かる。俺の腕は、いつまでも親父には及ばなかった。まだガキン頃に他界はしたが、今でも越えられている自信はねえ」
木の扉を越える。
アンデッド化したジンドがこちらを狙ってウロウロ。
蹴り飛ばしてまとめて3体。
「それほど偉大に見えていたと。分かるきがします、私も親にはまだまだ勝てない気がしますから」
「ローズ、お前の親はどんな修羅なんだ……? まあいい、ともかくその秘術があるかもしれないから来たというのと、他にもこの聖堂ン奥には守護竜神様の特別で稀少な像がある。天恵と加護を受ければ、勇者の剣も打てるかもしれない」
だいぶ奥まで来た。
階段があり2階吹き抜け。
つまりそこから弓をつがえようとするジンドがいる。
土魔法"ストーンウォール"でカジートの目の前に土壁を生む。
障害になっている間に目の前の3体に対して蹴り上げ尾で打ちとばしサマーソルトキックで最後のを引き裂く。
階段を駆け上がって弓で土壁を射っているところにお邪魔する。
2体の弓兵は殴れば簡単に倒せた。
「もう大丈夫ですー」
「え!? 何が起こって……ああ……まあ……もう何も言わん」
無事でなによりだ。
かなり奥まで進んできたしどうやらそろそろ最奥らしい。
今までとは違う物々しい雰囲気の扉があった。
そこを開くスイッチを倒し先へと進もう。
土とカビ臭い臭いが舞いはるか昔のギミックながらもしっかりと歯車が魔力で回って開いていく。
ジンドの力で開けることが想定されていない重さ。
それが開いた先には……
「あれが……守護竜神の特別な像!」
「それと、もっぱら新しい墓だ。あの守護竜神様の像はさっき言ったとおり特別でな。守護竜神様と交信できるとの話が伝わっている」
里に入る時の守護竜神像は人間大サイズだったがここのはまさに遠くから見上げる立派な像。
確かにここだけは邪気がない。
むしろ聖気が漂い息をするだけで胸の奥から力がきらめく。
つまり生きる者のための力が満ちているのだ。
これはこれで……強大な魔物が発生するかもしれないが。
「おお……! 無事だったか! 親父の墓は……ここだ!」
壁に駆け寄ってメモを見ながら調べる。
そして壁のひとつに手を置いたあとにその壁を掘り出した。
中の空洞にあったのは……骨壷と小箱だ。




