七百二生目 狂宴
『ククク……客人よ。まさか、我に刃向かえるとでも?』
「当然!」
元邪神の封印されし存在アラザド。
こんなのがこの世に解き放たれたら非常に危険だ。
蒼竜あたりがどうにかできるかもしれないが……それは神と神のぶつかり合いがもたらされることでもある。
『少々防いだところで……ところで客人よ、そちらでは久しく行われていなかった、我の狂宴のマネごとがされているようだな……ぜひ本物を見せてやりたいのだが?』
「違う、決して先程のように何かを苦しめるためのものじゃない!」
意を決して空を飛ぶ!
アインス! ドライ! やるよ!
『ハハハ……それは奇妙なことを。狂宴に捧げられる物は苦と、この我が決めている。この魔法の集いし場所に惹かれ……私はやってきた。幾千年時を得て、やっとこの時代に我は蘇った。そこにこのような歓待など……偶然とは言えまい?』
「本当に偶然だっ!」
まさかこの時にやっと復活して空間をねじ開ける場所をアノニマルースに選んだのは……ハロウィンに惹かれたから!?
それに……"トリック"の書に。
『そう、この魔法は、我の力を……む?』
「……?」
『なんだ、これは……? 似ているが……歪められている! 違う、これは、我を貶めるものか!?』
空に舞う"トリック"の書を見て唐突に怒りだした。
彼の力は確か……異貌化か狂暴化の呪い。
ならば"トリック"による方向は同じでも……それは楽しみふざけるだけのもの。
『赦さぬ……赦さぬ! 此れは我を否定している!! そうか、はるか昔、あの時の……! 手始めに客人よ、貴様から滅ぼし、世界に正しき我の力を広めよう!!』
「絶対に、それはさせない!」
先程の攻撃を受け私の力が変化している。
具体的には"精神暗転"により呪いの力が呪いと化している。
力がみなぎり気持ちはなんだか晴れやかで今なら傷も勝手に癒えそうだ。
『我を……舐めるでないわ!!』
相手が攻撃してくるがこちらも攻める!
空中で魔法展開しつつ……
(けり込むよー!)
(剣ゼロエネミーを鞭剣化! いけっ!)
鞭剣としてゼロエネミーを振るう!
"猫舌打ち"!
自分も飛んで接近した勢いのまま腕を蹴る!
イバラを伸ばした"猫舌打ち"をしかける!
『ぐおっ!? 何……貴様……その矮小な肉体の、どこにそんな力が!? ……ええい!』
よし効いてる!
鞭剣は土魔力をまとっているから切り裂くたびに赤黒い宝石のような左手に傷が刻まれて魔力が爆発する。
だからむりやりあちこちに方向を曲げられているようだ。
アラザド右手は私自体が殴りまくっている。手応えあり!
けれど……光をまとってきたから攻めてくる!
拳が横薙ぎされると黒い塊たちがうまれその場で漂いだす。
かなり大きく私を軽く飲み込むほどの塊が5つ……
「当たらないよ!」
火魔法"エクスプロージF"と土魔法"アーティトアン"を組み合わせ爆発と共に土槍があちこちへ炸裂!
さらに土魔法"ソールハンマー"と空魔法"ディメーションスラッシュ"!
空間を切り裂く刃を纏った大きな槌がアラザドに回転し勢いをつけて叩き斬りつけられる!
『こうだ』
「うっ!?」
黒い塊が唐突に炸裂した!?
重さを持ちべっとりとしたインクのようにあちこちに飛び散る。
避けるのは難しいから瞬時に針の鎧を全身展開!
重い黒い塊がベッタリとつく。
同時に私の魔法もアラザドをえぐり切り裂き叩きつけていた。
この黒いの……鎧越しなのに身体に凄まじい痛みが!?
「ぐうっ!?」
『うぐっ……この我に傷を……! この程度で調子に乗るな!』
鎧を瞬時解除して振り払う!
ふう……なんとか痛みが収まった。
今の……当たるだけで生命力がゴリゴリ削られた。
直接ふれなかったのにこれほどとは。
あと多分猛毒がある。
私にはそっちは大して効かないけれど。
『我の……神の祝福が、2度も!? なぜその身に祝福を受けぬ……! 貴様も、我を侮辱する気か!?』
「祝福も何も……! こっちが死ぬようなことしかしないくせに!」
『それも含め祝福よ! 客人よ!』
とてつもなく耳障りな笑い声が響く。
同時にその顔からおぞましく赤黒い宝石のような犬歯。
まさにドラキュラの牙だ。
バサリと翼がアラザドの背から広がる。
コウモリの翼だが……あれほど禍々しく大きいものはみたことがない。
しかも3対の6枚もある。
『我に真の力を使わせることを褒めてやろう! せめて、苦痛なき死を与えてやる。我の祝福を受け取れい!!』
今度は次々と地面から石油のような真っ黒い光が噴き上がる!
さらにアラザドが移動しだした。
大きいは早い。
けれど追いつけないほどじゃない!
手を抜かずに追撃!
「うおおおっ!!」
『くっ、寄るな! 落ちろ!』