七百生目 邪気
私の家倉庫にデュランマによって連れてこられた。
「ここ、向こう側に行く方法しらないかな? この奥からとっても危ない、死の気配がするんだ! こんなこと突然言っても困るだろうけれど……僕はそういうのに敏感で、できることなら確かめて、みんなに逃げてもらいたい!」
「え? あ、いや、信じるけれど……何があったカボなあ……」
私の倉庫。
結構物がたくさんあるせいでデュランマの言う危険はどれなのかがわからない。
ただデュランマの特性上言うことは無視できない。
デュランマは不穏を察知するらしい。
未来の危険を感じ取る不思議な力がある。
このデュランマがどこまで信用できるかがわからないが……"見透す目"で読心したが本気で言っているように思える。
「んじゃ開けるカボ!」
「できるの!?」
「やり方があるカボ」
まあかけたの自分だからね。
軽く解除を念じて魔力を扉に通す。
軽く光に包まれると魔法効果による頑強化が解かれる。
こうしたらあとはふつうに錠に対して魔法鍵を作り出し差し込めば。
あっさりと開く。
「す、すごい! 絶対開きそうになかったのに!」
「まあ、これはぼくなら開けるものだったからカボ……と、そうだ、問題のものは?」
「それはアレ……うわわわっ!?」
叫んだ方向を見てみる。
あれは……"トリック"魔本の山か。
また勝手に増えていた。
それ以外は特に何もないように見えるけれど……
「どうしたカボ?」
「て、手遅れだーッ!!」
「え? ……ええ!?」
急に魔力反応!
莫大な力が紙たちを動かし渦となり……
空間が裂ける!
ちょうどひとひとり分大の穴が空間に空いた!?
"トリック"の魔本がすいこまれていく。
代わりに……穴から手が飛び出る。
それはニンゲン大に空いたはずの穴を両手指先だけしか出られないほどのサイズ。
無理やり穴に指をかけて拡げようとしている。
その指は赤黒く宝石のような輝きを持ちニンゲンの5指のようにわかれつつ4つの指先は鉄をも引き裂けそうに細く硬質だ。
直感した。
あれはこの世界に出てきてはいけない。
私達を……世界を憎んでいる。
激しい敵愾心が全身を襲った。
「あわわわわ、こんな時にアイツがいないだなんて! まずい! まずい!!」
デュランマはパニックになってあちこち走り回っている。
ええい! "観察"!
[ア・ラ・ザ・ド Lv.58 異常化攻撃:呪い 要注意能力:呪怨連鎖 自身のいるエリアに対して強烈な呪い攻撃。呪いの内容は異貌化と正気の喪失に狂暴化]
[ア・ラ・ザ・ド 発音語がないため正確な表記ではない。元々は地方で祀られていた狂気の呪いを与えるおぞましき小さな神。しかしついには神から引きずり降ろされて異界へ追放された]
なにそのヤバイを集めたような説明文。
この元神が外に出てきたらアノニマルースが危険だ!
この手を殴……あー。今の格好だとパンチもしにくい!
火魔法"フレイムボール"!
青白い炎の玉を何個も作って投げつける!
指にそれぞれ当たって炎が渦巻く!
嫌がってか衝撃に驚いたか指が引っ込められた。
ただ……亜空間の穴はまだ広がったままだ。
「あわわ……わ? す、すごい! 追い返すだなんて!?」
「でも又すぐに来るカボよ! どうすれば閉じれる!?」
「そうだなあ……穴が未来の気配も安定しているから、多分さっきのナニカを倒さないと……」
「わかった!」
ならばもはや仮想している意味はない。
服をひとつずつはがしていく。
[各員>危険な敵が亜空間から出そう。私の倉庫にきて亜空間の穴を監視する者と、お客さんや住民の安全確保をお願い。私は撃退を試みる]
[ジャグナー:さっきの悪寒や月が赤いのは木のせいじゃなかったか わかった]
[イタ吉:よりによってこんな時に!]
魔法を唱えつつ服を外していって……
「……えっ!? 中からだれかが出てくる!?」
「あ、これは仮装ってやつだ……よっ!」
頭のかぼちゃを外す!
そういえばデュランマは仮装というものを知らないのか。
野生の魔物なら仕方ない。
「ふうっ」
「わわっ!? どなた!?」
「ぼくは……私だよ。少しだけ待ってて、準備してくる!」
空魔法"ファストトラベル"!
ワープ! 到着! 荒野の迷宮龍脈地点!
相変わらず膨大な量が広大な地下空間を行き来している。
用意する魔法は5つ!
それらを魔力に変換!
そして……来て! 龍脈の力!
ほんの僅かだけその輝きが私へとわかれて流れ込んでいく。
私の周囲に光が卵のように形作り……
私の魔力も身体も溶けていく。
そして今……形作る!
3つ目を開いて殻を破る。
『ネオハリー』だ!




