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六百九十九生目 首無

 ハロウィンは続く。

 遊び巡っていたら勇者1行が骸骨やら狼ニンゲンやらの仮装をしつつスタッフとして警備していたり他のみんなにもちょくちょく合う。

 そうして私の印象をこっそり聞き集めて来た。


 こう……思った以上に私に対して想いがめちゃくちゃ多いな!

 もっと単一的かと思ったけれど……

 これは面白いことを聞けたなあ。


 そうして夕日が閃光のあとに沈み夜が訪れる。

 ハロウィンは夜からが本番。

 夜行性でなければゾクゾクするような景色がやってくる。

 なにせただ歩く魔物たちすらも危険でダークな気配を漂わすのだから。


 さあ夜はどこへ行くか。

 カボチャスープに舌鼓をうつ面々を横に歩いていく。

 食事処が近いのだ。


 お……なんだかおろおろしている子がいる。

 話しかけてみよう。


「こんばんカボ! 何かお困りカボか?」

「あっ!? えと、どなたですか……?」

「ハロウィンのマスコット、パンプキンのジャックカボ!」


 この魔物は馬の魔物か。

 ただしあるべき首の場所にはなにもない。

 そのかわり背中から首がニョキッと生えている。


 ゲスト用の翻訳機リングが見える。

 外の魔物だろう。

 "観察"での言語学習は……まあ良いか今は。


 デュラハンのコスプレもメジャーではないが定番だよね。


「ジャック……あ、オレはデュランマと言います。俺はここに誘われるがまま遊びに来たんだけれど……あと……いや、そうそう。腹が減るへんなにおいがして……けれどみんなどこからどうやって手に入れているのかなって。しらない魔物の横からもらうのも変だし……」

「おお! お客さんカボ! じゃあこっちカボ!」

「は、はい!」


 カランコロンと鈴なりの木の実から音を鳴らし歩く。

 デュランマも不思議そうな顔をしつつもついてきてくれているようだ。

 そのまま食事場へ移動する。


 ひととおりの手続きを教え……


「――と、まあこんな感じカボ! お金を持っていない、旅の魔物のために物々交換や労働でも承っているけれど、今回はぼくが建て替えておくカボ!」

「あ、ありがとう! オレ、そのお金とかよくわからないから助かる!」


 あったかーいカボチャスープで腹を温めてもら……

 ……おうとしたら熱のある食べ物を食べ慣れていなくて大苦戦。

 だがそれ以上に。


「やっぱりこうだと飲むのはやりづらいから……よいしょ」

「え!? く、首が、浮いた!?」


 つながっているはずの首。

 それがふよふよと浮き出してカボチャスープを飲みだしたのだ。

 あ……あれ?


 今まであんまり気にしていなかったけれれどあの首の断面って……

 うっ!?

 見たら視界に影が!?


 "影の瞼"がおりるってことはこの断面の中は見るだけで危険なのか……

 はた目から見ると何か暗闇が渦巻いているようだ。

 ……あんまりしっかり見るのはよしておこう。


「あわわ、は、恥ずかしいからあんまり首は見つめないで!? ……えと、首がうくってそれは普通なんじゃ?」

「いやいやそんなこと無いカボ!? もしや本物のユーレイ……」


 幽霊。そう私が口走った瞬間。

 私の腹へと頭がタックルをかました!?


「ぐほっ!?」

「コラーッ! オレはユウレイじゃない!! ……あっ! ごめん、つい……!」

「こ、こっちこそゴメンカボ」


 うぐく。生命力にダメージはないけれど不意だったせいで痛い……

 改めて……"観察"!


[デュランマ 首の浮いた姿は草を食べたり警戒するのにとても役立つ。妖精であり相手の未来を見通して、不穏さを知らせる]


 よ……妖精!

 そうか! そういえばデュラハン自体も妖精だった気がする……

 ニンゲンが豚野郎って言われるようなもんの悪口になっていたのか。反省。


 そんなこんなしつつ。

 舌にやけどをしかけたりしつつも最後はなんとか飲めて……


「ふぅー! お腹があたたまったよ! 料理? とかいうのは初めてだったから驚いたけれど、いつも食べている草よりも甘いしあったかいから驚いたよ!」

「そ、その首で食べたらお腹にいくのカボ?」

「そりゃそうでしょ、じゃなかったらどこにいくの?」


 疑問符を浮かべられた。

 口の中の食物が喉を通るさいにワープして……

 いや深く考えるのはよしておこう。


「まあ、とにかく問題が解決して良かったカボ。それじゃあぼくは――」

「あ! そうだ! いきなりこんなことを言うのもなんだと思うけれど……キミなら信用できるから……ちょっとついてきて!」

「え!? わ、わかったカボ」


 そのままデュランマに連れられて移動。

 ……ん? この方向って?

 そのまま考えていたら私の家へと連れ込まれた。


「この奥なんだ、この奥からなんだか猛烈な死の気配が強くなってきている! 仲間もいたんだけれど途中ではぐれちゃうし、お腹はすくし……しかもここ開かない!」

「え? 倉庫カボ?」


 何か不吉なことを言い出したその先は。

 私の家倉庫だった。


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