六百九十六生目 偶然
カボチャ頭のジャックというキャラに変装してハロウィンに乗じあちこちで
話を聞いて回る。
私の話も聞けたら聞く。
ちょっと恥ずかしい企画実行中!
賑やかなハロウィン音楽も演奏されあちこちで聴こえてくる。
ジャイアントエリアから離れ散策中だ。
ここらへんは出店が多く並んでいる。
ハロウィン関連品からまったく関係ないだろうというものまで出揃いいよいよ収穫祭めいてきている。
食事も魔物用やニンゲン用またはそれらに左右されないものがたくさん。
つまりは誰用なのかすらわからないのもある。
それでも賑わっているということは種族専用のものでも活発な取引がある程度にこの出店たちが潤っているということだ。
ここにいるのはニンゲン商人たちはともかく結構魔物もやっている。
彼らが本格的な店を構える日も近いかもしれない。
あちこちで挨拶をしつつやれるなら私の話を聞いたりもする。
「魔物に生まれたからには、やはり強さに憧れるよ!」
「彼女は魔物なのに私達人間にもこうして便宜を図ってくださるので、助かっているのですハイ」
「ぶっちゃけつがいになりたいよね。種族が同じだったら良かったのに」
……などなど。
3つ目のはなんというか……
恥ずかしさがかなり……お断りです。
そんなこんなと歩いている間に。
なんだかよく知っている気配を感じた。
そそくさと見に行こう。
その出店はお面屋だった。
確かに気軽な仮装と言えばお面は目の付け所が良いだろう。
簡単に面をつかた誰かになれる。
それは良い。それは良いんだが。
なぜ1種類しかないのだ。
しかも売り手は蒼竜。
今はお面販売のためにニンゲンバージョン。
売っているのはイメージ上の蒼竜を模ったお面。
ええっと……これは……
「やあやあ、キミも1つどうかな?」
「出店には出店許可書がいるカボ」
「いきなりひどいな!? ちゃんと許可もらっているってほら!」
オーバーリアクションで泣き笑いしつつ指差した先にはきっちり許可書が飾られていた。
絶対コレただのお面屋として通したな……
布教の基盤作りしようとしているお店だよこれ!?
「キミは……? まあいいや」
「どうしたカボ? ぼくはジャック、ハロウィンのマスコットカボ!」
読心はガードだ!
"影の瞼"での読心防御効果部分を事前にネオハリーになって神の力を使い底上げしているのだ!
概念を一時的に格上げする……色々試してみてやれたことの1つだ。
"影の瞼"が降りて目の上にかぶさり相手のスキルを防ぐ。
「そこまでして隠したいかあ。とりあえず、キミも1つどうかな? ありがたい蒼竜のお面だよ!」
「ありがたいカボ……?」
「そう! 蒼竜の教えとは大陸の方で広く一般的な教えでね、みんなを大地のように守り嫌なことを凍てつかせてキミを守る! このお面はそんなおめでたい蒼竜を模ったお面! 実はかなりありがたいお守り効果もあるよ! これで7シェルは破格! さあ買ったかった!」
いったいどこでそんなウリ文句を覚えたのだ。
自分の教義を自分でこうやって叩き売りしているのだなんて初めて見た。
多分今後も見ることはない。
確かに木彫りの面7シェル……つまり700円ぐらいはオトクではあるなあ。
しっかり彫って塗ってある。
何より……蒼竜がこっそり自身が作ったからなのか力を面に込められている。
蒼竜自身の魂のカケラが入っている聖なる品が量産されたたき売りされている現場と考えるとかなりオモシロい。
買わないけど。
「まあ、そんなことより、キミはなんでこの街に来たカボ?」
「そんなことって……ああ、来た理由かい? それなら簡単さ! この街にローズという子がいてね。その子が面白いんだが、その子が発展させたこの魔物の町が、これからさらに盛り上がりそうでね! その面白そうな様子を見届けに来たんだ!」
クルックルまわり帽子を指で弾く。
これさえなければイケメンで済むのだが。
これの要素が大きすぎる。
「そのローズって子、面白いのカボ?」
「まあキミもこの街にいてそう知らないってことはないだろうけれど……そうだね、僕みたいに近くで見ていると思うけれど……」
「ほうほう?」
思わず身を乗り出してしまう。
「あれは……そうとうなバカだねうわぶふっ!?」
「あ、すいませーん! そっちにこのブーメランって道具が飛んじゃって!」
ナイス偶然!
見事蒼竜の頭に吸い込まれて行ったブーメランはゴンッ! と当たった。
蒼竜に傷すら負わせる事はできないが痛そうに頭抑えているのは天からのバツかなんかだろう。
「うう……気をつけてね、はい」
「ありがとう!」
魔物の子どもがブーメランを蒼竜から受け取る。
そいやあそんなものも売っていたなあ。
木製だから当たると痛い。




