コッコ種の生態
某K動物学者著書
某モンスター図鑑
某王国図書館に置かれたものからの転載
キラーコッコ(♂)
コッコクイーン(♀)
種族:鶏鳴種コッコ目コッコ族キラーコッコ
♀のみコッコクイーンと呼称される
呼称
死神鳥、呪鳥、死の時を告げる鶏、有袋鶏、鳥籠など
生息地
熱帯~亜寒帯の森、山間部、林に住む。気温が高めで湿度の高い地域を好む。一般的には木のないところには生息しないが崖や岩場に生息する群れもわずかながら存在する。広範囲に生息しているため広く人間に知られたモンスターである。
見た目
キラーコッコ:
40センチほどの白い色のニワトリ。嘴は黄色。足は薄桃色である。トサカの形や色には個体差がある。これは群れのなかで互いを見分けられるようにするためだと思われている。
キラーコッコ(霊):
戦闘時キラーコッコは自身の周りに鶏の足で掴まれた鳥籠のような檻を展開する。鳥籠のなかの個体は透明な姿となり鳥籠が破壊されない限り攻撃を受け流す。これらは霊的な要素をまとい暗がりでは薄く発光する。鳥籠を掴む鳥足は操作が可能であり狩りの後の獲物を持ち帰る時などに使用される。一般的には足は攻撃に使用されない。鳥籠は霊的な結界の一種とされており魔法の発動の停止とともに消滅する。金属のような質感がある。人間の鳥籠に酷似していて、由来には諸説あるがいずれも証明されていない(*1 コッコのおとぎ話)
コッコクイーン:
160センチ以上の大型の白いニワトリ。足は薄桃色で太く爪が鋭い。トサカは金色に輝いている。お腹に袋をもつため有袋鶏とも呼称される。
※主人公しか気づいていないが一般的には白色レグホンと呼ばれるニワトリにそっくりである。つまり普通のニワトリ。
中身
肺と声帯が大きい。飛行魔法を使うため胸筋は鳥モンスターにしてはあまり発達していない。このため飛行魔法を使わない長距離の飛行を苦手とする。ただ大きな肺と声帯のためにハトムネである。
食生/狩り
果実、木の実、穀物、虫、小動物、蛇
雑食。死肉食いはしない。音波を発して木の実や中空の虫を叩き落として補食する。虫系モンスターにはかなり有利をとれる。群れのなかの複数の雄が餌を取り囲み音波によって中心に追い詰める戦法を多くとる。
天敵
コカトリス、バジリスク、ハーピー、グリフィン、ワイバーン、ラミアなど
特に卵やヒナを狙う蛇系モンスターは天敵であり、キラーコッコやコッコクイーンが積極的に狩る種類の巨大な生物である。蛇を見ると一種の興奮状態になり攻撃力があがる。コッコクイーンはコカトリス系の石化に耐性がある。
寿命/病気/耐性
キラーコッコ:6年~10年
コッコクイーン:40年以上
*魔物使いによる飼育下では雄が25年生きたという記録がある
音波攻撃無効であり、いかなる音波にも吹き飛ばされない。これは生まれつき備わっている能力であり卵ですら音波攻撃を受け付けない。
一部の虫の毒や穀物の毒に耐性をもつが鶏流行性感冒のキャリアになることがある。
繁殖/生態
♀が複数の♂とハレムを築いている。平均して♂の数は100羽程度。群れが充分に成熟すると三百羽を超える。現在報告された最大のものは約3000羽の群れである。(※これは外敵が密猟によって大量に狩られたのが原因でエサ不足によって数年で収束した)
繁殖期:一年中
エサの多くなる時期には繁殖がさかんになる傾向があり、極端に餌がない時には出産行動をとらなくなる。一日の卵の出産数は1~10個程度。
成長
卵の大きさ:にわとりサイズ(♂)、ダチョウサイズ(♀)
孵化:20日(♂) 50日(♀)
ヒナ:5センチ(♂) 20センチ(♀)
成鳥になるまで:3ヶ月(♂) 3年(♀)
キラーコッコ
コッコクイーンは通常時は♂のみ産む。通常生後1ヶ月程度でコッコクイーンの庇護を離れてキラーコッコたちの周りでエサの取り方や霊魔法の使い方を学びながら過ごす。生後3ヶ月で群れから追い出され、【はぐれコッコ】として6~9ヵ月の間、単独または数匹の若いキラーコッコで構成されるチームで暮らす。多くのキラーコッコはこの期間に死亡、捕食される。修練を積んで強くなりコッコクイーンに認められた個体がハレム入りする。
コッコクイーン
充分に群れが大きくエサのある春にのみコッコクイーンは♀だけ3~6匹の♀を同時に産む。この♀は【プリンセス】と呼称される。コッコクイーンはおよそ一年の間は卵を産まずにプリンセスたちの保育に専念する。その後、キラーコッコに保育を託して通常に産卵するようになる。キラーコッコはプリンセスを優先し積極的に育てる。キラーコッコに保育されたプリンセスは成熟した年の春にプリンセス同士で争い、勝者から順に群れの強いキラーコッコの個体を連れて群れから独立する。
クイーンに属する群れの雄たちのことは【軍】と呼称される。【軍】内の順位は『歌合戦』(*2)や『つつき』(*3)とラブソング(*5)やクイーンや群れ全体への貢献度で決まる。そのため戦闘力が低い個体でも階級が低いとは限らない。軍のなかでは【シッター】【ガーダー】【ランカー】と呼ばれる分業が行われている。
分業
【シッター】ヒナやコッコクイーンを世話する
【ガーダー】コッコクイーンやヒナや群れを守る
【ランカー】エサをとりにいく
階級
【隊長】分業のなかで一番えらい
【次長】2~5番目くらい
【ヒラ】うじゃうじゃ
分業は掛け持ちや配置換えが適宜行われている。
さえずり
多くの生物にとっては不快に感じる鳴き声をする。非常に大きい。高周波と低周波と超音波がまじり破壊音や破裂音やノイズのような音がランダムにまじっているように聞こえる。この音はその巨大な音量のわりには遠くまでは拡散しない傾向がある。外敵に群れを発見されないためだと思われる。
ヒナの時からさえずりは大きく数十羽もいれば家の屋根を吹き飛ばす。この不快音は外敵から身を守るためであり、群れのキラーコッコはクイーンの周囲で朝昼問わずにさえずりつづける。このためキラーコッコは『非常におしゃべりでようき。歌うのが大好き』といった性格の個体が多い。
このため群れが視認できる距離まで近づくと爆音が聞こえ始め、群れから100メートル以内に近づくとその巨大な爆音に人間やモンスターは最悪の場合は鼓膜が吹き飛び意識を失う。
知能
キラーコッコはとりあたま。コッコクイーンはキラーコッコの数倍の大きさの脳を持ち、キラーコッコより知能が高い。
攻撃
チキン。にわとりだけに。
キラーコッコ:
群れが脅かされない限りは大型のモンスターには攻撃しない。鳥籠が損傷すると敵から素早く逃走する。クイーンのいる群れの中心に近づけば近づくほどキラーコッコの攻撃性は増す。クイーンが脅かされると最も攻撃性を増し逃走行動をとらなくなる。
群れのなかの♂同士では頻繁に『歌合戦』(*2)や『つつき』(*3)といった群れ内のヒエラルキー争いの行動がみられる。
群れに属さない若鶏の雄は攻撃性が高く別の♂と遭遇すると激しい敵対行動をとる。この場合は大声で鳴きあいながら鳥籠を掴んでいる鳥足でお互いに蹴り合う『キック』、鳥籠同士を激しく衝突させる『タックル』を行い、先に鳥籠を破壊された雄が敗者となる。
外敵に対しては霊魔法、音波攻撃、飛行魔法を使用する。音波攻撃に呪いを付加する。この呪いを浴びると精神の混乱、磨耗を引き起こし、幻覚や幻聴がおこり、トラウマが喚起され、自傷行為などを行い、最悪の場合は発狂する。発狂後も治療により回復可能だがキラーコッコに対しての過度な恐怖心が植えつけられ、キラーコッコを見るとフラッシュバックが起こる事例がいくつか報告されている。ステータスの【呪い】ではないクリアステータス(*4)があるのかは研究中だ。
コッコクイーン:
積極的に戦わず腹部の袋にヒナや卵を避難させて逃走する。飛行魔法で素早い飛翔が可能。
ただし小型のモンスターに対しては攻撃性を見せることがある。太い足と鋭い爪による蹴り技で戦う。また強大な敵に襲われた際には卵やヒナをわざと数匹身代わりにして逃げるイケニエ行動をとる。イケニエ行動ではヒナ>卵の優先順位をとる。この習性を利用して一部の冒険者はコッコの卵を手に入れている。
人間との関係
古くからキラーコッコの肉は食肉として流通している。市場に出回るのは比較的狩るのが簡単である群れに属さない初年の雄の若鶏である。わずかだがモンスター使いがキラーコッコを飼い市場に卵や若鶏を供給している事例もある。攻撃性が低いため人間の子供に遭遇しても大音量の不快な鳴き声で追い払うだけであり比較的安全なモンスターだと言われている。ただしコッコの鳴き声をそばで聞いてしまうと呪われてしまうため遭遇した人間は効力が消えるまでは倦怠感や不快感や悪夢に悩まされることになる。死神だの死神の使いだの罪人などと呼ばれる要因である。一般的なヒーリングや薬草の煎じ汁で治療可能。
卵、肉ともに非常に美味であり、肉付きがよく、捌きやすい。内臓もすべて食用となる。骨や足からはスープがとれ、羽は寝具になる。
*1 鳥籠の仮説
①人間がコッコの檻から鳥籠を思いついた
②コッコが人間の鳥籠を見て真似をした
③偶然の一致
大まかにこの3つが主な仮説である。研究者の間でも意見は別れている。
※コッコのおとぎ話
罪を犯して死んだ人間がキラーコッコに生まれ変わりその罪の証が鳥籠であるという童話だ。悪いことをしたらキラーコッコになっちゃうよ。
*2 歌合戦
数匹のキラーコッコが鳴き合う。不快音にしか聞こえないが、どうやら美声を競っているようだ。
*3 つつき
嘴と嘴同士で激しくつつきあう。人間で例えるとスモウをしているようなものらしい。強い個体ほど嘴が傷だらけになる。
*4 クリアステータス
スキルとして表示されないステータス。ステータスには存在が証明されてないステータスがあるという仮説が存在し研究が行われている。ただしキラーコッコの場合はただのPTSDである可能性が非常に高い。というかそっち。これが解明されてないのはむてき世界では心療内科が発達していないためである。
*5 ラブソング
聞くに耐えない歌だ……。まったくひどい。鳥モンスターは♀に歌で愛をささやくっていうのはよくある話だけど……とてもひどい。地獄で音楽が流れていたならきっとこれだ。
*キラーコッコの追記
野蛮な獣には理解できないだけだ!
転載以上