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六百八十四生目 怠慢

 私はこの精神世界では時の流れが違うことを利用してこの世界でたっぷりと自分を見直すことにした。

 そのついでに私の影を追いかける。

 まあ自分の考えを読めばだいたい分かるから慌てなくて良い。


「やあ、2週間ぶり? 私はね、決めたんだ。影と戦うって。だからちゃんとついていくよ。私自身を見つめ直すために」

「しつこい……!」


 衝撃波!

 "無敵"で和らげているとまた姿が消えている。





「また来たか……」

「私は、自由に暮らしてただ面白おかしく生きたい、そんなどこにでもいる存在だった。だけど私が欲しいものを求めるうちに、守るものが増えていった。それを選んだのか選ばされたのかすらも深く考えることもせずに」


 ビルを斬って倒壊させ私を生き埋めにしようとしたため"無敵"で弱める。

 殺意はなくただ倒壊してしまっただけでも意味はある。

 私の近くに降り注ぐ瓦礫が不思議と少なくなった。


 それでもわりと痛いのだからやはり無理はできないか。

 私の周囲には瓦礫のみ残り影はいない。

 再び追跡だ。




「それは欲だと、個人のワガママ、持ちたいものだと、いつの間にかなくしていった。アインスはあれだけ遊びたい、休みたいといつも言ってくれていたのに」

「分かっているなら、もうやめろ! もっと寝たい、もっと遊びたいだろう!」


 ――また逃げられ。


「――それだけじゃない、世界の運命とか、国家の存亡とか、正直私個人にかかるには重すぎるんだよ。アノニマルースのみんなも含めてね」

「ああ、それなのにちゃんちゃらおかしくお前は先頭で音頭を取っている! これが滑稽な英傑ごっこでなくてなんなんだ! 仲良しごっこで仲間を集め、魔物ごっこで前世からの力に振り回される! もう止めるんだ!」


 ――私に傷だけ残してまた去っていく。


「――けれど、私は力を持った。背景を知った。だったら、やってみるよ。誰に決められたのでもなく、私の意思で」

「そんなもの、なんの意味がある!? お前の本当の意思は(わたし)だろう!? そんなのは振り回されているだけだ!!」

「いいや、違う。なぜなら……私も本当の意思なのだから」


 ――もはや何度目だろう。

 影が私を拒絶して去っていくのは。


「……来たか! (わたし)の気持ちを見捨てて、これまで生きてきたくせに今度はそっちが本当の意思だって!? 傲慢で思い上がりだ! 糸付き人形のくせに!」

「自身を省みなかったことで、傷だらけになった……ちょうど今の私みたいに、けれど、今や糸は見えた。さらに様々な糸が交差して私の動きは絡まって止まっている。ならば、今どう動くか考え、今度こそ自分の意思で動けるチャンスなんだ」


 私にあてつけのように強烈な攻撃をしてそのスキに去っていく。

 こっちは"無敵"しか使えないから有効な手だ。

 さあ。傷が癒えたらまた移動だ。


 影も含めて私なのだから。






「もう何ヶ月? むしろ1年たっているかな?」

「いくら空腹すらないとはいえ、(キミ)は諦めないんだ……」


 影はうんざりしていた。

 ここはビルの地下駐車場。

 ただし車は1台も止まっていない。


 高い場所にいくらでも逃げ道があり事実今までそうしてきたから裏をかいたつもりだろうけれど。

 私だってそうすると考えればたどり着くのは難しくなかった。


「おかげでこれまで生きてきた中で一番ゆっくりできたよ。そこで今までのごっこ遊びを振り返ってみたりね」

「だったらわかっただろう!」


 影の目の前から強烈な突風!

 "無敵"で和らげないと立っていることすら危うい!

 ……ここの駐車場は私が来た階段以外は車用エレベーターや普通のエレベーターしかない。


 そして電気は通っていない。

 つまり私を退かすしかもう逃げ場ないのだ。


「分かる! 私はいつも、もっと前世基準のように安全で安心でなおかつゲームしたりアニメ見たり、そういう感じに暮らしたいよね。インターネットなんかもやったりさ」

「だったらなんでここまで動く! 他者にまかせて自分は怠けていればいい!」


 漫画もアニメもインターネットも娯楽というジャンルの高度なものという知識しかない。

 そこに思い出はあったかもしれないが思い出すことはできないからだ。

 けれど私はそういう前世にどこか憧れがある。


「だからこそだよ! 私は前世以上を再現したい! それをみんなで共有したい! 作り出したいんだ!」

「不可能だ! そんなのはどれだけ(キミ)が寿命を伸ばす必要があるんだ!! それに……その間、(キミ)はしんどいだけだろう……!」

「しんどいこともあるだろうけれど……それは、私がやりたいことなんだ。やりたくないことも含むて、私がやるって決めたんなら、それはもう操り糸だなんて関係ないさ」


 言葉をひとつひとつ確かめるように吐き出す。

 そのたびに風が緩まって1歩1歩進めれた。

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