六百七十九生目 かったよー!
ツバイはああ見えて幼く弱いどこにでもいるただ大人びたこどもだった。
そしてそれは私の中にある一つの側面ということでもある。
そこに今まで気づけなかっただけで。
良くわたしことアインスは幼く見られる。
言動はこどもっぽいからネ。
でもわたしはこどもっぽいだけでオトナなのだ。
かげに放った魔法がクリーンヒット!
打ち勝てた!
このローズオーラとしての身体をフルスペック扱えてどんな情報量もラクラク処理。
みんなの特技を把握しいつでもそれらの魔法を引き出せて。
なんならツバイがなんからの拍子で表に出れなくてもみんなに問題なく指示を出せる。
実際そういう時もあったね。
大グモと赤蛇の連戦をしてツバイが意識の限界にきたときにわたしが代わりに対応したよね。
ああいうのもわたしたちの利点だね。
魔法やスキルでの膨大な探知処理はツバイはわたしに任せないと処理がぜんぜんできない。
あれは自分が幼いことへの無自覚が自分はまだ強く広く使えることの自覚がなかったからなんだろうね。
そのことを……さっきまでのわたしも知るよしもなくて。
今目の前にかげが膝をついている。
わたしの内側の見つめ直しにはツバイもドライも必須だ。
だから早く戻って共有したいんだけれど……
「はぁ……はあ……っ、まだ、まだある!」
「……アノニマルースのこと?」
「そうだ。仲良しごっこは内側だけじゃない。外側にもある!」
もうすでにわりとお腹いっぱいなんだけど……
けれどかげは関係なく光に包まれたかと思えばネオハリーに。
わりとズルいぞそれは!
「さあ、これを見ろ!」
むむ。
噂のアノニマルース内でのコロシアイの映像かぁ。
建物が引き倒されて双方の軍隊がぶつかり合う。
知っている。みんな知っている。
どこかの誰かの有象無象じゃない。
わたしの記憶から再現されているからしらないはずがない。
いつものみんなの姿もある。
イタ吉がたぬ吉の首を刈り取っていた。
ユウレンがドラーグに踏み潰されて……
ジャグナーとアヅキが互いの得物で胸を刺したまま動かない。
そしてインカとハックが骨肉の争いを繰り広げていた。
互いに傷をつけあっている。
切り裂き燃やしあっている。
鮮血が噴き出しあっていた。
わたしがもっとも見たくない景色のひとつ。
「うぐむ……みたよ。だったらなんなのさ。これはもうそ〜じゃん」
「想定でもあるだろう?」
それもそうだ。
これはわたしの頭の中のどこかで渦巻く警鐘。
起こりうる可能性が1%でもある未来。
けれど……!
「それで何もほろびるなんてことはないよ! こんなことはおこらないし、わたしもおこさせない。たぬ吉とのはなし、かげも知っているでしょ?」
「それがどうした! あれで納得するのは相当な享楽家のみだ! 到底心に響いていない!」
「だったら……!」
わたしは大きく息を吸い込む。
殺し合う幻影たちの姿が次々と変化していく。
わたしの息に合わせて吸い込まれてゆき……
わたしの横に後ろにその姿が並び立つ!
アノニマルースのみんなが傷ひとつなくズラリと立つ!
まさに壮観!
「わからせてやる! わたしのかげ! そのこわさにわたしの想いを!」
「理屈をどれだけ並び立てても、底には常に恐怖がある! 終わることで次につながらない、その恐怖が! それに勝てるとでも!?」
かげも暗い幻影たちをたくさん並び立てだした。
わたしと違ってかげが1番うしろ。
あれだと攻めづらいなあ。
「それでも、たぬ吉がわたしをしんじている! わたしもたぬ吉をしんじる!」
「私が過労になるまで働き私が全力で支えてやっとアノニマルースは成り立っているんだ! そんなことだけでどうにかなるか!」
かげ前方の幻影が勢いよく遠隔攻撃を放ってくる!
エネルギー弾に衝撃刃それと連射弾!
「それでもたぬ吉が……みんなが信じてくれているなら、わたしも恐怖と戦うから!!」
わたしのほうの幻影たちがわたしへとスライドしてゆき重なり合う。
力が……わいてくる!
大きくジャーンプ!!
「扇動者め! そうやってみんなを死地へ送り込み殺し合わせるのか!」
「だったら!」
たくさんの攻撃が幻影たちから放たれてさらに幻影自体が飛来しわたしへ向かってくる!
大丈夫。
怖さに打ち克つには……怖さを認め目をそらさないこと!
「当たらない!?」
かげへ空中落下しながらわたしの身体は素早く攻撃を避け続ける。
身体にかすって毛と血が散っていく。
それでもいちどもまともに当たらない!
「今、みんなを信じきる! それがこわさにかつホウホウだーッ!!!」
そのままスピードをあげてキーック!!
かげにするどく当たり……
まるで石のようにバラバラと粉砕した!




