六百七十八生目 きづいたよー!
前までの話をまとめようネ。
かげの主張はわたしたちはなかよしごっこをしていて違う面にトラウマを、押し付けてひとつの面だけ横暴だということ。
これは多分裏返すと私のもやもやした感情だと思う。
とは言ってもそもそもトラウマはダレかに押し付けて解決出来るものじゃない。
それはわたしたちの中できっちり守りきれるからこそトラウマを乗り越えたと今なら言える。
けれどかげはまだ納得した様子がない。
答えが正解だとわかった今なら。
「トラウマは存在し、私の中でまだ渦巻いている。ツバイは自身の不調を理由に性格の面が違う私たちに押し付けているだけだ……! それで乗り切ってきたんだろう! トラウマを乗り越えただの、うそぶいて……初めからないだけのはずなのに……!」
「でもさっきのコウゲキ、効いたでしょ? そういうことだよ。わたしははじめからいたし"私"も私のいち部分を強くぬきだしただけで、私とおんなじそんざい。あのトラウマを味わった、ネ」
わたしはかげの放つ魔法をとにかくレジストしまくる。
それでも意識はそこには向いていなかった。
今ダイジなのはこの秘めた……より深いわたしの言葉。
これを言えば説明しなくちゃならなくなる。
けれど何もかもがそう証明しているし……
何よりこれは……絶対向き合わなきゃいけないこと。
このかげのなかよしごっこという話題の根。
かげとは……わたしが見ようとしなかった私自身の深い闇。
闇はすべてを受け入れてくれるから……甘えすぎていたんだ。
「どういうことだ!? わたしが本当はこの呪いのような思いを……トラウマを乗り越えたから、少なくともわたしは気にせず浮けるとでも!? じゃあ、私はなぜあそこまで弱っている!」
「それは……っ!?」
何か血でも吐くかと思った。
それほどまでに強い痛みがわたしのなかでうごめいた。
言ったら戻れないから。
言葉にして語る。
この気持ちを形にする。
それだけなのにこれほど難しい。
そして苦しいのはここが精神世界ゆえなのネ。
私として成立しているのに私は強く引きずってわたしは比較的へ〜きなワケ。
これを認めるのはわたしも……特にツバイも辛いことになる。
なかよしごっこでいさせてくれたらその姿を見つめる事はなかったのに。
それでもわたしは……このかげを見つめることにしよう。
「ツバイは……」
「はぁっ!!」
「幼いからだよ」
わたしがレジストしそこねた魔法が激しく大きなビームになって私を襲いかかる。
けれどそれはわたしの目の前で弾け霧散する。
「な……に……!?」
「ダレだってあるじゃん。心のなかに、むじゃきでジュンスイでただイヤなものをイヤっていって、コワイものにがまんせずなく……そっとダイジにしているブブンがね」
するどい魔法ビームをお返しに放つとロゼハリー姿のかげの胸に強く当たる。
大きく吹き飛んだ!
着地し後ろに大きく転がりやっと止まる。
今のはクリーンヒットだった。
つまりはそれほどにつよいものだということ。
「ぐぅ、カフッ!?」
「ちゃんと見てこなかったし、私もジカクがなかったんだよねぇ。でも、なかよしごっことしてかげがつきつめたから、今かげがなんでこう言ってくるかわかったんだよね」
「……つ、ツバイは3つの性格の中でも思考がまともじゃないか……! アインスはすごく幼くみえて、ドライは攻撃的で、ツバイがそんな、心の中の幼い自分を表した面なわけがない……!」
まあ言いたいことはわかるんだけどね。
わたしのかげだし。
「でも、私のかんがえは初めっからああいうふうだったよね? そう、うまれたときから」
「あっ……!」
ふつうは言動の幼さなんかでその性格が抱えている年齢がわかる。
小さい頃の泣いている自分だなんていうものがここまでわかりにくくなっている原因。
それはあの大人びたふるまいだった。
だからこそ気づけなかった。
そして歪みはたまり……
今目の前でかげとして現れている。
あの目の前のかげは……ローズオーラの偽らざる傷を負った自分自身なんだ。
傷があっても時間がたてば癒えて古傷となるようにそれは心も似ている。
けれど『そういうものだ』としてしっかり見向きされなかった傷には……膿がたまる。
自分自身内側のわたしたちの『なかよしごっこ』とは他でもなく自分への不信。
ただ強くあるために弱く幼い自分を見つめることすらできなかった痛み。
わたしとはこんなに弱いんだって知ることから初めよう。
弱い自分があることを認められなければ本当に自分を信じるだなんで土台無理なのだから。
そうかげに語って聞かせた。
「……っ生きていくために、そんな、弱く
幼い自分を切り捨てて、そうやってなかよしごっこしていたくせに、今更そんな口を!」
「だからこれから私は私をちゃんと共に連れて行くッ!!」
魔法と魔法が互いに炸裂して――