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六百七十一生目 二段

 "影"を倒したと思ったら復活しやがった。


「"ヒーリング"と"無敵"の組み合わせは強力だね。群れない魔物たちすらも、きっかけさえあれば仲間になった。そうして出来た夢の群れアノニマルース。食事の肉は動物中心にしたり虫を取り入れたりしつつ、互いに草食魔物たちやニンゲンすらも最近は受け入れて、そして受け入れられている。だからこそ……私がいなくなっただけで、この群れはどうなるの?」


 肉球を叩く音がどこまでも広がったかと思うと徐々に光景が映し出されていく。

 ……悪趣味な。

 アノニマルース内の魔物やニンゲンたちが武器をとり殺し合っている。


 内乱だ。

 ……そしてこの景色に"私"はいない。

 それにこの想像は……"私"自体もどこか頭の片隅にあったはずだ。


 ただ今だけは見ないことにして。


「……で、この悪辣な映像まで用意して、何が言いたい?」

「そうだね、ふだんはハブにされがちなドライ。今私が言いたいのは……」


 影エアハリーからトゲが生える。

 そして発射され飛来する!


「なかよしごっこはたのしいかい?」


 ……っち! 新しい問に対する答えは考えてないな。

 身体で受ける!


「ぐっ!」


 するどい痛みが走り身体のあちこちに棘が刺さった。

 ……黄色い血は出ている。

 つまりはもうさっきの影は乗り越えたという証左でもあるか。


 力を込めてトゲたちを身体から吹き飛ばす。

 血が一瞬吹き出るがすぐに止まる。

 この程度なら……


「果たして"(ドライ)"に人権はあると思う?」

「ああ? どういうことだ! ……っ!」


 "フレイムボール"が!

 空のあちこちから連続で放ってきている。

 避けきれず身を焦がしていく。


 何よりも……見えない。

 "影"の動きが素早すぎる。


「結局(ツバイ)の周囲はすべておもちゃ。私が私のために集めたおにんぎょう。(ツバイ)と愉快な仲間たちだよね」

「グッ!? どういう……クソッ!」


 ダメだ。言葉が要領を得ない。

 これは……お持ち帰りか?


「なかよしごっこ、一生楽しくできると、良いねえ?」


 目の前に巨大な火の玉!

 アレを食らったら……

 ちっ。とりあえず反論しなければ。


「真面目にやっているのにごっことはなんだ、ごっことは! "私"はみんなと……うわっ!!」


 ……火の玉が加速して"私"に当たる。

 目の前を焦がして息を焦がし肉がウェルダンと化して。

 骨まで白い炭へと成った。





(……って感じだったな)


 ぐふうっ……

 私は頭を地面の下に埋める勢いで突っ伏した。


(あーあ、予想はしてたが……まあ第一段階は乗り越えられたんだしさ)


 なんとなくとか薄々とかの部分を改めて言葉にして突きつけられた。

 あの影は確かに私の影だ。

 ……ドライが私の一面なのだと再認識すると同時にそう思う。


 あとさっきまで打ちのめされるような全身のあちこちに痛みや熱さを感じていた。

 なのに今やなにごともなかったかのようにそれらのダメージはない。

 これは私が精神世界で受けたダメージが反映されるのか。


 しかも影と挑戦者の双方分。

 幸いにして実害がないのとそこまで強く痛みは反映されていないらしい。

 さすがに灰になるほどの熱を感じていたらいちいち気絶してしまう……


 赤い血を求める理由……

 それは私がニンゲンの赤い血潮というそれやだいたいの魔物が持つ赤い血に深く自身を見失わされていたからだった。

 それをドライに赤い血スキとどこか押し付けていたようで……


 それが今自分の中でひどく傷ついている。

 ドライは誰でもない。

 間違いなく私なのだから私がちゃんと見ていなきゃ誰が見るのか。


 思ったよりも私自身と向き合っていないなあ。

 理性面と感情面は別離しておらず混じり合いくっついている。


 そんな事はとっくにわかっていたはずなのに。

 私が赤い血を求めているってどこかで否定しつづけていた。

 それが魔物なのかどうかニンゲンなのかどうか。


 私とは。自分自身とはなんなのかと言う引きずりだとも気づかずに。

 ショックだ……! うわーっ!


("私"は直接影と対峙したから、整理しながらここまでこれたが……"私"だってしっかりショック受けているからな。同じ自分だから)

(そーそ、むずかしくかんがえすぎない! けっきょくはじぶんだもんね! どこまでいっても……ね!)


 アインスすらショックが隠しきれていない。

 まあポジティブシンキングにも限度はあるからね。


(そもそもわかってたことを再確認しただけだしー! こんどはわたしがいくよ!)


 えっ!? アインスが!?

 ええと。まず1段階目はなんとか飲み込めだしたけれどドライがやられた2段階目があったんだっけか。

 確か中身は……


(なかよしごっこ、だ。自分が"私"やアインスをないがしろにしてツバイばかりに優遇してるんじゃないかとか、そのせいで本当に良いと思っているのかとかな)


 それと私がいなくなるだけで崩壊するアノニマルースの光景を見せた指摘かあ。

 すでに痛いところ突かれ過ぎてノックアウトしそう。


(アインスにも具体的な何かがあるわけじゃないだろ? このままだと無策で倒れるだけだぞ)

(うーん、そっかぁ)


 誰かに相談するとなると……

 そうだ。彼かな。

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