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六百六十五生目 対立

[精神世界での対立を行います。 はい/いいえ]


 この表記である。

 他のスキルと同じように10になったら新スキル獲得……とはならないらしい。

 むしろこの対立というのが新スキルなのか。


 さっぱりわからない……

 なので迂闊に触れずに今日まで持ち越していた。

 だが今日は休みである。


 朝食も終えてフリータイムとなったところで我が家に入り……腰をすえて再び考える。

 そもそも無敵の効果は相手の戦意をなくすことである。


 好意を抱かせたり精神感応系異常の解除をできたりもするがそれらはすべて戦意喪失の副次的効果だ。

 戦う気がなければ傷つかない。

 それが無敵……というのはなんとなくわかる。


 だけれどもこの選択肢は……逆じゃないか。

 "無敵"なのに戦いにいざなっている。

 スキル詐欺である。


 そもそも"無敵"は取った当初はスキル詐欺! って思っていた。

 身体がきらめいて攻撃をはじき相手を跳ね飛ばすイメージがあったから……

 けれど。


 結果的にはこのスキルで普通は仲間になれないようなみんなと仲間になれた。

 "ヒーリング"と組み合わすことでより仲間の選択肢を増やせた。

 群れない魔物たちが仲間になってくれる可能性をつくってくれた。


 だから……私は“無敵”を信じよう。

 身体は今『ネオハリー』に"進化"した影響でダルいけれど心はなんとか大丈夫。


[精神世界での対立を行います。 はい/いいえ]


 はい。と念じて少しすると意識が暗転した。





 うん……ここは?

 眠っていたかのような身体を起こして伸びをする。

 そして身体を振った。


 周囲を見渡してみよう。


「……暗闇?」


 どこという指定ができるようなものではなかった。

 どこまでも薄暗い空間が広がってゆきその先は見通せない。

 地面は今私が踏み込んでいるところは存在し歩くたびに床が発生する。


 これは……覚えがある。

 そう。ドライと共に戦ったあの精神世界だ。

 ということはちゃんとここにこれたわけで……


「何かと対立と言っていたけれど……うん!?」


 目の前に突如悪寒の走る何かが集まっていく。

 その冷たい炎のような矛盾した存在はどこからともなく現れては目の前に集っていき。

 そして……影が現れた。


 その影は徐々に見慣れたシルエットを形取り、そして……彼女はゆっくりと目を見開く。

 変わらぬ黄色い瞳には冷たい憎悪が宿っているように見えた。


「……キミは?」

「……見れば分かるでしょう?」


 冷たい声が肌を刺す。

 わからない。とは言えなかった。


 犬のようなかたさと猫のようなしなやかさを持つ体躯。

 指先はしっかり分かれて器用さもそなえている。

 背に並ぶのはずっと共にある身を守る針。

 今朝整えたアホ毛の向きすらも同じだ。


 ただその色は光すら反射しない黒だ。

 そのなかで唯一色を持つ黄色い瞳が私への敵意をもって爛々と輝いている。


 (ケンハリマ)だ。

 少なくとも姿かたちは――


 うむむ……精神世界での対立は私との戦いということ? 戦って勝つとか?


「行くよ……」


 そうこう考えている間に相手が身構える。

 こっちも身構え……

 双方後ろへ跳んだ!


 ……?

 なんだ今の違和感は。

 考える間もなく相手が火魔法"フレイムボール"を放ってきた! 


 青白くエネルギーがこめられたものが計10発飛来してくる。

 回避……しきるのは難しい。

 なにせ私が放っているのと同じなのだから。


 的確に誘導弾と本命弾が入り混じり間違いなくどれかは当たってしまう。

 "すり抜け回避"では時間差で来たものに当たってしまう。

 じゃあ"空蝉の術"で!


「そうれ――え!?」


 当たる直前に地面を叩……こうとしてその違和感の正体を掴んだ。

 スキルが使えない!?

 "回避運動"や"近接攻撃"も!?



「うわあああっ!?」


 ちょ……直撃した!

 せめての被弾を減らすため焼け焦げたにおいを感じながらも床を蹴る。二発目が足先にかすり肉球をあぶる。三発目が鼻先をかする。

 だけど私は知っている。

 簡単に避けられるものは威力の低い誘導弾だ。


「に」


 四発目が腹を焼いた。

 悲鳴を押し殺す。反射的に使おうとしてしまった“ヒーリング”が無駄に終わる。これもダメかとパニックになりながら冷静に思う。


 五発目は頭と背を撫でて通り過ぎた。

 六発目は、気づいたら目の前にあった。


「ご」


 最後にどれだけ避けられたのか、私には分からない。痛い。苦しい。息ができない。胸が詰まる。まるで身体の中から身を引き裂かれるようだ。網膜が火に炙られたせいか、周りがぼやけてよく見えない。


「半分しか当たらなかったね」


 笑うでもなく怒るでもなくただ淡々と事実が述べられる。

 そこに感情は感じられなかった。

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